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お題小説

リセット

作者: 水泡歌

 僕には不思議な力がある。

 それは「リセット」と言うだけで全てのそれまであったことがリセットされてしまう力。

 だから僕には人生に苦痛なんてない。

 だって「リセット」と言うだけで全てがリセットされてしまうんだから。


 ほら、今日もやってきた、僕が力を使う場面。

 父が僕に怒ってる。

 僕が父の時計を盗んだから。

 僕は父に怒られるのが嫌だったから言った。

「リセット」

 そしたら、ほら。

 父はたちまち怒るのをやめた。

 だって、僕が盗んだ事実はリセットされたから。

 これで一安心。僕の苦痛もなくなった。


 安心していたら、次にまたまたやってきた。

 僕が力を使う場面。

 母が僕に学校に行けと言ってきた。

 僕は学校なんて苦痛でしょうがないから行きたくない。

 けれど母は行けとうるさい。

 だから僕は言った。

「リセット」

 母はたちまち何も言わなくなった。

 だって、僕が学校に行かないという事実はリセットされたから。

 これで一安心。僕の苦痛もなくなった。


 僕は暇だから外に出てみた。

 本屋に入って欲しい本を見つけたけれど、ダメだ、お金がない。

 けれど我慢をするなんて僕には苦痛で仕方がない。

 だから僕はその本を盗んだ。

 店の親父がすぐに気付いて僕を捕まえた。

 僕は言った。

「リセット」

 店の親父はたちまち僕の体を離した。

 だって、僕が本を盗んだと言う事実はなくなったから。

 これで一安心。僕の苦痛もなくなった。



 こうやってやり過ごすものだから、僕には人生に苦痛なんて一つもない。

 けど、一つだけ困ったことがある。

 それは、僕の周りだけ時が進まないこと。

 僕はずっと同じ日をグルグルまわっている。

 本当はわかっている。その理由も。

 ぼくがリセットと言うたびに、全てのあるはずだった事はリセットされる。

 その日あるはずだった事はすべてなしになる。

 だから、先に進めないんだ。

 どうやら僕の人生は今まで僕がリセットしてきたものなしには進めないらしい。

 けれど、僕は我慢なんて出来ない。耐えたりなんて出来ない。

 だからきっと、これからもずっと同じ日をグルグルまわり続けるのだろう。

 あ、そんなことを考えていたら、また苦痛がやってきた。

 だから僕は言おう。


「リセット」

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