前科持ちですよ!
そして、私にはもう一つだけ語っておかなければならないことがある。
放課後、私は『よろず部』の部室にいた。三春は図書委員の仕事で図書室にいて、佳香は『柔道部』の助っ人として、しばらくの間練習に参加するらしい。もちろんこちらにも活動があればそちらを優先してくれるらしいが、今は他に依頼が来ていない。
というわけで、私は留守番だった。しかし一人ではない。
私の目の前のテーブルには一匹の黒猫がいた。
「しかしここはいつも静かでいいな。のんびりくつろぐには最高だ」
「『よろず部』の部長としては、素直に喜べることじゃないですけどね」
ごろにゃーんと無防備にお腹を見せて転がっているのは、もちろんサタケさんである。彼は訳あって再びこの世界に降り立ってきていた。
「それで、サタケさんとはいつになったらお別れできるんですかねー」
「む。なんだその言い方は。そんなに僕と一緒にいるのは嫌か?」
「嫌ではないですけど、落ち着かないんですよ。また変なこと起こるんじゃないかって」
「安心しろ。『遊楽』を通じて君に流れてしまった僕の魔力が元に戻ったら、すぐにでも帰ってやる」
そういうことである。
最初のきっかけは、サタケさんが私の体で『遊楽』を使ってしまったことだ。それに続き、私も自分の体で『遊楽』を何度も使用してしまったため、本来サタケさんに宿っていた魔力が私自身に流れてしまっているらしい。
ミカド様曰く、それは看過できるものではないということで、それをサタケさんの身に戻すことになったのだが、これには膨大な時間がかかってしまうらしい。水は高い所から低い方にしか流れないように、元々高濃度の魔力を持つサタケさんにさらに魔力を移すのは中々厳しいのだそうだ。
とはいえ、生活には大して支障もない。自分と坂下くんにしか見えない黒猫が周りをうろうろしているというだけの話である。暇な時にはこうして会話をすることもできるのだ。
ちなみに坂下くんの方は、あの黒蛇が消えてしまったため、『諸行無常』から流入してきた魔力に関しては完全に消滅してしまったらしい。それでも私同様、元々宿っていた雀の涙ほどの魔力自体は残っているので、サタケさんを視認することは今でも可能だ。
「ところで、なんでサタケさんは学校までついて来てるんですか。みはるんの家にいればいいじゃないですか」
「そうつれないことを言うな。家にいても退屈で仕方ないのだ」
「そんなこと言って、私の知らないとこで、女子の着替えのぞいたりとか、ハレンチな真似してるんじゃないでしょうね?」
「そ、そそそそそそんなことするわけがなかろう! 僕を誰だと思っている⁉」
「前科持ちですよ!」
そのときである。ポケットに入れてあった私の携帯がぶううんと震えた。学校だからマナーモードにしてあったのだ。




