能力のない人間は、それをもつ人間に助けてもらうしかないのだろうか
人によって生き方は全く違う。一人でなんでもやって、それで生きていけてしまう人、むしろその方が生きやすいという人もいるだろう。片や誰かと助け合って生きていくのが素晴らしいこと、人間らしい生き方だという人もいるだろう。そんなものは人それぞれだ。
では結木三春や瀬野佳香はどうだろうか。
どちらかと言えば、二人とも前者に近いタイプかもしれない。大概一人でどうとでもしてしまうし、可能な範囲でそうしてしまおうとする。そしてそれは強い人間である証左かもしれない。私にはできないことだ。
そんな私は、三春や佳香の力を借りて生きていくしかないのだろうか。能力のない人間は、それをもつ人間に助けてもらうしかないのだろうか。そしてそれは、果たして正しい生き方なのだろうか。
「あら、おはようございます。って、その怪我どうしたんですか?」
保健室を後にして教室へと向かっている最中のことである。生徒会副会長の三木杉夏奈と出くわした。
夏奈は私のおでこに張られた絆創膏を見て、気遣わしげに尋ねてきた。
「あ、夏奈ちゃんおはよう。これはさっきちょっとね」
「ちょっとなんですか」
「いやぁ、まあ気にしないでよ」
言えるわけがない。三春と佳香にボロクソ言われて発狂して坂道をダッシュしてて転んだなんて。頭の病気と思われてしまう。ていうかつくづく救いがないな私。
「まあ大丈夫ならいいですけど、トラブルはやめてくださいよ。何かあったらまた『審問会』にかけますからね」
「何かあったら……てことは」
「もしかして、今回は『よろず部』生き残った⁉」
三春と佳香が夏奈に詰め寄った。すると夏奈は呆れたような表情をして、
「まだ掲示板確認してないんですか? 『審問会』の結果はもう貼り出してますよ」
「ほんとに⁉ その掲示板ってどこ⁉」
「職員室の前に。あ、コピーなら今持ってますけど」
そう言いつつ、夏奈は鞄から一枚のプリントを取り出す。それを私たちは争うようにして引っ掴んだ。
そこにはこう書かれていた。
「
○○年度 四月 審問会結果発表
・よろず部
・空耳合唱部
以上二つの部の存続を認めることとする。
また、残念ながら、
・激坂のぼり隊
・急流すべり隊
・たんこ部
の三つの部に関しては、今月いっぱいで廃部とすることが決定した。
」
「おおマジだ……マジで残ってる」
「やったじゃん沙良。大手柄よこれ」
佳香と三春が両サイドからうりうりとすり寄ってくる。三春も珍しく満面の笑みだ。
「う、うん……ほんどによがった……」
「おいおいお前また泣くのかよ~」
佳香に呆れられてしまったが、これが泣かずにいられようか。私はどちらかと言えば悲しいときより、嬉しいときに号泣するタイプだ。
「みはるんも、よっしーも、ありがど……ぐず」
「ああこら、鼻水たらしてくっつくなよー。おい結木、ティッシュ」
「今日持ってないのよ。ハンカチはさっき傷口抑えるのに使っちゃったし」
するとその様子を見ていた夏奈が、取り出したティッシュで私の涙と鼻水を拭ってくれた。
「おめでとうございます。これからも私たちの学校のために、立派に活動続けてくださいね。期待してますから」
穏やかに笑って、夏奈はそんな言葉をかけてくれた。しかしそれを聞いた佳香と三春は戦々恐々だ。
「なに⁉ あの鬼副会長がこんなにも優しい言葉を⁉」
「これなら百戦錬磨の鈍感主人公もイチコロね。素晴らしいデレだわ」
「何言ってるですかあなたたち! バカにしてるんですか⁉」
「カナカナちゃんも、ありがとー……」
「カナカナちゃんて言わないで! ああ、私の積み上げてきたキャラが! ああ~!」
何はともあれ、こうしてひとまず『よろず部』は廃部を免れた。




