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沙良の危機回避能力は七歳児レベルか
「沙良ちゃんはほんとよく怪我する子だねぇ。うちの孫といい勝負だよ」
保健室の先生――吉永先生とはすでに仲良しである。優しい先生だからみんなから好かれているし、私だって大好きだ。
吉永先生に消毒して貰い、絆創膏も貼って貰って、一息ついたところでそんな話になった。
「先生のお孫さんはおいくつでしたっけ」
「七つだよ」
聞いた瞬間、後ろにいた佳香がぶっと噴き出した。そして三春がしみじみ呟く。
「沙良の危機回避能力は七歳児レベルか。これはもうなにかの病気なんじゃ……」
「私こう見えてもツテはあるからね。いい医者紹介してあげてもいいよ」
「ええ⁉ そんな真面目な話⁉」
「あはは! いやあ冗談さね。沙良ちゃんは大丈夫。何も心配してないよ」
吉永先生はけらけら笑って私の肩を叩くが、こちらとしては笑う気にはなれない。私はこの先本当にまともに生きていけるのか、本気で心配だ。
そんな心中を察してか、吉永先生は穏やかに笑いつつ、こう続けた。
「だって沙良ちゃんの周りには、沙良ちゃんを助けてくれる人がたくさんいるじゃない」




