表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある神様のおもてなし狂想曲  作者: 楽土 毅
最高のおもてなし
61/70

佳香ちゃんならもうすでにぶん殴っているだろう

 その横で坂下くんは、「あとは自分で食べます」と女の人に告げていた。彼女は丁寧に頭を下げると、その場を去って行く。坂下くんは今度は左手でケーキを手掴みし、それを頬張っていた。


「体は大丈夫なのか?」

「へ?」


 突然尋ねられ、私は慌てて顔をあげる。坂下くんはこちらを見もせずに一心不乱にケーキをくっちゃくっちゃと(むさぼ)り食っている。食べるのか喋るのか、どっちかにして欲しい。


「あ、うん。おかげさまで」

「そうか。それはよかった。お前、なんかすごい無茶をしてる感じだったからな。突然気を失ったときは、ちょっとひやっとした」

「え、心配してくれてたの?」

「当たり前だろ」


 ぶっきらぼうなその言葉が私の胸をかきむしる。なにこれ。さっきから胸が苦しいんですけど。


「ねぇ、坂下くんは、なんで急に私の味方になってくれたの? 最初はあの黒蛇の味方みたいな感じだったじゃない」

「ああ、元はあの黒蛇に騙されてたんだ。俺はアイツから、『佐々野沙良が神の楽器を得て、それを悪用しようとしている』と聞かされていてな。それを阻止するため、佐々野からあの――『遊楽』って言ったっけ? それを奪い返す手伝いをして欲しいと頼まれた」


 坂下くんは、口元についたクリームを気にする様子もなく、真剣な表情で私の方を見て話してくれた。ここは笑ってはいけない。


「だが、奴が佐々野に向かってガレキを飛ばしたとき、これは違うんじゃないかと思った。お前のお父さんを怪我させたときはもうほとんど決定的で、最後はお前の言葉が引き金になった」

「私の言葉?」

「お前が言っていた、『よろず部』で頑張っている理由みたいなやつだ。急に何を言いだすんだコイツは、と最初は思ったけど、でも誠実でバカ正直で、実にいいヒーロー論だった」

「そう言えばあのときも言ってたけど、ヒーロー論って何?」

「自分の心に聞いてみろ。お前はもうそれを知っているはずだ」

「いや、そういうのいいから」


 やはり会話の中でいちいちイラッとくる人だ。佳香ちゃんならもうすでにぶん殴っているだろう。


「まあ、とにかく、ヒーローを志すもの同士、通じるものがあったのだろう。あのときのお前が悪人だとは俺には思えなかった」

「それはどうもだけど、私別にヒーローになるつもりはないから」

「それでこそヒーローだ。ヒーローはなろうと思ってなるものではない。気がつけばなっているものだ」


 もうなんかどうでもよくなってきた私は、手近にあったチャーハンの皿を寄せ、それをスプーンで食べ始める。


「うわ、これおいしいね」

「勝利のスパイスの効果だろう。悪との戦いが過激であればあるほどそれを潜り抜け先には――」

「あ、これもおいしそう」


 私は坂下くんの言葉を無視して、手当たり次第に食べ続けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ