あの人が人を助けるのは、本当に自分の力が必要とされてるときだけだった
応答は早かった。
その週の水曜日。『よろず部』にある通達がなされた。
「4月22日(金)の放課後、以下の部の代表は生徒会室に来ること。
・激坂のぼり隊
・急流すべり隊
・よろず部
・たんこ部
・空耳合唱部
なお来なかった場合、部継続の意思なしとみなし、これを廃部とする。 」
「終わった……『審問会』への招集が、ついに我が部に……」
私は頭を抱えて机に覆いかぶさる。
この呼び出しは要するに、「この五つの部は要らなそうだな。この中から適当に二、三個廃部にして予算確保すっか」ということである。
大体この『審問会』に呼ばれた部のうちの、半分以上が廃部にされ、残りの半分はその次に開かれる『審問会』で廃部にされる。どちらにせよ、このままの平和的部継続は望み薄だ。
「うー、このままじゃやばいよ。どうしようみはるーん!」
私は両手で頭を抱えたままの状態で、隣の席に座る三春の方を見た。
今わたしたちがいるのは、私と三春のホームルームである二年七組の教室だ。
三春は何やら勉強をしているのか、単語帳と英語のノートを交互に見ながら、ペンを動かしていた。
「もうなるようにしかならんでしょ。実際入ってくる依頼はろくに解決できてないわけだし、よろず部の存在意義とか、もはや皆無だし」
「そんなことないもん! ときどきは解決してるもん!」
「へー、例えば?」
三春は何故かにやにやしながら、私を問い詰めてくる。必死に嘘を貫き通そうとしている子供をからかっているかのようだ。
「た、例えば、お腹空いてる子に焼きそばパン買ってきてあげたりとか!」
「それただのパシリじゃん」
うっ、と内心怯みつつも、私はくじけずに続ける。
「そ、その他にだって、忙しい人の代わりに宿題やってあげたり! 掃除当番代わってあげたり!」
「…………え」
「あとは、犬の散歩代わってあげたり、新作ゲームの行列に並んであげたり、他の部の雑用だって大体は一通り――」
「ちょ、ちょっと、待った待った」
三春は頭痛でもしているかのように、こめかみに手を当てつつ、私の言葉を遮った。
「沙良アンタそんなことまでしてるの? よろず部だからって、何でもかんでも引き受けりゃいいってもんじゃないんだよ?」
三春は咎めるような目で私を見つめた。
「で、でも、困ってるって言われて。それを助けるのが私たちの役目で……」
「だからそれは、自分じゃどうしようもないときだけでしょ。牧野先輩だって、あの人が人を助けるのは、本当に自分の力が必要とされてるときだけだった。今の沙良みたいにしょうもない雑用まで安請け合いしなかったよ」
私は口をつぐんだ。