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とある神様のおもてなし狂想曲  作者: 楽土 毅
戻る日常、残る違和感
33/70

まあ要するに、結木はツンデレちゃんってことだ

 一同に見つめられ、私は戸惑った。


「や、そんなこと急に言われても……」

「なんでもいいって言ってるんだから、なんでもいいんだよ。とりあえず、佐々野の今の一番の願いを言ってみろよ」

「一番の……願い……」


 ――……あ。


 私はそこで一つのことを思いつき、それを告げた。


「お安い御用だ!」


 樫井部長は、任せろ、と自分の胸をどんと叩いた。

その隣で佳香が一同を鋭く見回す。


「聞いたな。我らが部長の悲願はさっき言った通りだ。何としても応えて見せろよ!」

「「イエス・マムっ!」」


 一同は佳香に向かって敬礼をした。だからなんなんだよこれは。


 そして彼らは勢いよく部室を飛び出して行った。さっそく動いてくれるらしい。いや、よく見ると数人がまだ残っていた。吹奏楽部の何人かだ。私に宿題をお願いしてきた子たちである。彼女らは机に置いてあった自分の宿題をそれぞれ手に取り、


「ごめん! これはちゃんと自分でやるね」「沙良ちゃんも三春ちゃんもごめん! ほんと私たち調子に乗り過ぎた」


 そしてぺこぺこ頭を下げる。私はひらひらと手を振った。


「だから気にしなくていいって、コンクール頑張ってね」

「……沙良ちゃん」

「楽器運びとか、チケット販売とか、人手が必要なときはいつでも言って。そういう依頼は歓迎するから」


 すると内一人が私に抱き着いてきた。「天使だ……」「大天使サラエルだ!」「ありがとー、ありがとーっ!」「私たちも手伝うからね! 『よろず部』の他の依頼で大人数が必要なときとか、すぐ駆けつけるから!」


 そして一人がぽしょりと言った。「や~、これは樫井部長が惚れるのもわかるね~」


 するとみんな一斉にニヤニヤし始める。「だね~」「沙良ほんとかわいいしね」「ちょっと抜けてるとこもポイント高い」「むしろあの人にはもったいないくらい」


 私は慌てた。


「え? え? どういうこと? 樫井部長が……はい⁉」

「じゃあ私たちも行ってくるから! あとは任せて!」

「ちょ、ちょっとぉ⁉」


 混乱する私をほっぽいて、彼女らは部室を出て行った。

 残ったのは、佳香と三春。『よろず部』の面々だけだ。不意に部室が静かになった。


「じゃあ帰ろうか。残る理由もないし」


 三春が椅子から立ち上がりつつ言った。佳香も鞄を背負い直しながら、「ん」と答えた。

 私はまた一人あたふたとしていた。何からお礼を言えばいいのか、謝ればいいのかわからない。


「あ、あのさ、みはるん」

「言っとくけど」


 恐る恐るかけた私の声を、三春は冷たく断ち切った。


「私はまだ怒ってるから」


 そのまま私の横を通り過ぎ、部室の扉へと向かってしまう。私は慌てて振り返り、その背中に尋ねた。


「じゃ、じゃあ、なんで宿題やってくれてたの? みはるんあんなに反対してたのに……」


 三春は立ち止まった。

 しばしの沈黙。その後彼女は、はぁ、と深くため息をつき、「鈍いなぁ……」と呟いた。

 そして振り返る。


「その感じだと、私がなんで沙良に怒ってるのかわかってないみたいね」

「え?」


 私はきょとんとした。

 わかるもなにも、三春は私にちゃんと言ったではないか。


「なんでもかんでも依頼を安請け合いしたからでしょ?」

「……はぁ」

「あれ⁉ 違うの⁉」


 わざとらしく息を吐く三春に、私は戸惑った。

 すると三春の隣で立っていた佳香が、私の方を見てにやっと笑った。


「まあ要するに、結木はツンデレちゃんってことだ」

「はぁ? なに言ってんのよ……」


 三春は佳香を睨む。しかしその頬が少しだけ赤い。もしかして図星なのか? いやでもどういうこと?


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