ただ神としての威厳を守りたくて……
サタケさんは普通に驚いていた。
しかし、私もそこまでバカではない。サタケさんの心がそんなにきれいであるわけがない。
「じゃあそのレストランの名前は? お三方の名前は?」
「いや、それは……忘れてしまったが……」
「サタケさん、ミカド様になんて呼ばれてるか知ってます? 変態ですよ」
「変態⁉」
「さっきのような美談をもつサタケさんが、なんでそんな呼ばれ方をしてるんです?」
「う……それは……」
狼狽するサタケさんに、私は詰め寄る。目の前の佐々野沙良の額には汗が滲んでいた。
「さっきの話、本当ですか?」
サタケさんは目をそらしつつ答える。
「も、もちろんそうだとも!」
「ミカド様にも誓えますか?」
「あ、ああ、もちろん……だとも」
「なんで目を逸らすんです?」
「それは……」
サタケさんはおそるおそるこちらに視線を戻す。
見慣れた私の顔は、熱い言葉に満ちた自作のポエム集を友人に見られた時の顔を彷彿とさせた。
いや、そのときの自分の顔なんて見れてないけど。
ていうか、余計なこと思い出させないでよ。泣きたくなるでしょ。
「すいません。ほんとのこと言います」
「よろしい」
サタケさんは観念した。
「本当は天上界の女湯のぞいてたのが、バレて怒られたのだ」
私は前足に力を込めた。めらめらと怒りが再燃急沸騰した。
「ふざけんにゃぁ――――っ!」
「ぶはぁ!」
自分の顔にも関わらず、私は渾身のネコパンチをかましていた。さすがに爪を立てることはしなかったが、それなりに痛みはあるはずだ。しかしこんなものではおさまらない。
「よくもまあべらべらとあんな美談語れましたね⁉ 神経疑うんですけど!」
「わ、悪気はなかったのだ……ただ神としての威厳を守りたくて……」
「そんなもん最初からありませんから!」
私は一刀両断した。




