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とある神様のおもてなし狂想曲  作者: 楽土 毅
よろず部部長の苦悩
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本について語るって、そっちかよ!

 その後も私は色んな部に顔を出した。


『メリケンサックサク部』では「果たしてたこ焼きにタコは必要か」ということに関して熱い議論を交わしていた。そしてその最中(さなか)、じゃあ実際に作ってみようということになる。そして「たこ焼きの中身はタコに限る派」代表の南さんがそのたこ焼きを食べて、「う~ん、おいしい! やっぱりタコは必要だわ!」と言ったのが第二戦の始まりの合図だった。「バカめ! かかったな! そのたこ焼きの中身はタコではなくエリンギだ!」「う、うそよ! だってこんなおいし……。な、なぁんちゃってね! わかってるわよそれくらい! さっきのおいしいはあくまでも、ま、おいしいかな、って程度であって、タコのそれと比べれば風味も食感も数段劣るわ!」「ようし言ったな! じゃあ食べ比べしようぜ食べ比べ! アイマスクつけて両方を食べてみて、どれがタコ入りのたこ焼きか当ててみせろよ!」「そんなの簡単よ! ていうかそれアンタらもやりなさいよね! なんで私ばっか責められなきゃなんないわけ⁉」「いいぜいいぜ俺もやってやるよ! おーい佐々野! 公平を期すためにお前がタコ焼いてくれ!」そんな具合で巻き込まれた。もちろんその後は私自身もバラエティ豊富な百味近いたこ焼きを食べさせられる羽目になる。


 『本について語る会』では、「電子書籍が一般化するのは果たして良いのだろうか」という何気にそれらしい、しかし、本について語るって、そっちかよ! というツッコミを入れたくなるような議論をしていた。「私は反対ね。やっぱり紙の本の方が中身も頭に入ってくるし。特に教科書を電子化って、ありえなくない?」「いや、なんでも電子化した教科書の方が勉強効率はあがるらしいぞ。テレビで言ってた」「テレビって、カッコ笑。正式なソースもない論拠になんの意味が?」「でも電子書籍って自分の本棚持ち歩くようなもんなんでしょ? 私は便利でいいかなって思う」「あんたねぇ! 紙の本が日本から消えたら、いったいどれだけの人々が職を失うと思ってるの⁉」「あ……奈々ちゃんのお父さんって、たしか印刷所で働いてるんだっけ?」「…………」「…………」「…………」「……電子化、反対」「電子化、反対!」「「電子化―っ! 反対―っ!」」

なんかよくわからないが議論がまとまって何よりだ。私は苦笑いでその場を後にする。


『美丘部(※女子禁制)』では「これからは間違いなく〝ちっぱい〟の時代がくる」という熱い議論が交わされていたが毛ほども興味ないのですぐにその場を後にした。


 二階講堂では『激坂のぼり隊』と『急流すべり隊』が何やら真剣な話し合いをしていた。両者とも『よろず部』と同じく『審問会』への招集がかかった部だ。「我らが生き残るには、力をあわせるしかあるまい」「しかし我々は似て非なる全く違う部活動だ。ロマンのベクトルが真逆なんだぞ?」「確かにな。我々にとって山登りは生きがいとも言えるものだが、君たちにとっては滑るための通過儀礼に過ぎないのだろう?」「当然だ。すべり落ちることにこそ意味がある。〝すべり台〟って知ってるか? あれこそすべり隊の考える簡潔にして究極の遊具だ。誰もが昇る側でなく、滑る側に魅せられる」「ああっ⁉ てめもう一度言ってみろや! 登る側も超楽しいっつの!」「じゃあ今から公園行って遊んでる幼児たちに片っ端からアンケートとってみっか⁉ 結果なんざ火をみるより明らかだろうがな!」「勝手に行ってこい! そしておまわりさんに捕まれ!」「つーかすべり台なんかどうだっていいんだよ! 山行こうぜ山! てめぇらに山登りの楽しさを教えてやらぁ!」「いや待て、そうなると公平な立場で良し悪しを判断できる人材が必要になるな。誰か第三者的な審査員も連れて行って――」その辺りで嫌な予感をした私はすぐさまその場から逃げ出した。さもなくば、山登り&急流すべりの過酷ツアーに連行されていたことだろう。


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