黒い何か
「こ、これは……」
変わり果てた自分の姿にただ茫然とした。
下界に落される際には『黒い何か』に姿を変えられてしまうことは先刻承知のことではあったが、よりによって『こいつ』とは。
「ふん、貴様はそれだけのことをしでかしたというわけだ。甘んじて受け入れろ」
目の前で自分を見下ろすその女の目は、有無を言わさぬ目をしていた。その女こそ、自分の姿を「よりによってのこいつ」に変えてしまった当人である。
「しかし、この体では――頼りの『アレ』が使えません」
恐る恐るそう申し立てるが、まったくの無駄であった。
「心配するな。どのみち貴様に『アレ』を使う機会はない。なぜなら貴様より一足先に、『アレ』は下界へと捨ててしまったからな」
「なんですと⁉ そんなっ、いったいどこへ?」
「それを自分で探すのだろう? それこそが貴様への最初の罰だ」
女は自分の首の辺りを引っ掴んで持ち上げ、自らの顔へぐいと近づけた。
そしてまるで睦言でも語るかのように、甘い声でこう囁く。
「ただし、のんびりしている暇はないぞ。期限は三日だ。それまでに『オトシモノ』を見つけなければ、貴様は一生――」