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強化魔物の大爆発?

【サリセルーガの大穴】の10階層で爆走していると、最後の冒険者パーティに出くわした。


「殺されるぅう!!助けてください!!」


僕はなるべく必死な感じを出しながら本気走りを見せつけた。


目の前に現れたのは冒険者は1人の斧使いと弓使い1人と盾が2人の4人パーティ・・・『大蛇殺し』のパーティか。


斧使いというから男なのかと思ったら、まさかの女性だったようだ。


「あなた!この階層に来るなんて自殺行為よ!!」


そう、気の強そうな怒声が洞窟に木霊する。その声と共に盾職の2人の大男が盾を構えた。


おそらく彼女らにとってはこの最新階層まで来られるのはごく一部の高ランクで構成されたパーティくらいで、見慣れないおっさんが1人で助けを求めてこんなところで爆走することがあったとすれば、それは分不相応に潜り過ぎたというのが当然思い至ることなのだろう。


まあ実際、僕はそう思わせようとしているのだけどね・・・。


僕は彼女らの横をするりと走り抜ける。

逃げ足だけは早いんだわぁ。


「ちょ!なんだお前!」

「押し付ける気か!」

「ろくでもねえ・・・!」

「そんなことを言っている場合ではない!陣形を乱すな!」


弓使いと盾使いの男たちが僕の蛮行に対してブチギレたが、その3人に斧使いの女性が喝を入れる。

最初にアケミちゃんが強化した魔物に襲われた『百の傷』のパーティは全く印象に残らなかったが・・・その様子が何となく印象的だった。


斧使いの彼女は身長は男たちとほぼ変わりなく、僕と同じくらいだろう。身体は比較的がっちりしているが、斧を振り回せるほどの筋力があるようにはぱっと見には見えなかった。


少し可哀そうなことをしたな。


そう思った時には僕は数十メートル離れていたが、『大蛇殺し』が例の強化魔物と相対し、攻撃をもろに受けたらしい。


男たちの野太い悲鳴が上がる。

『大蛇殺し』の時と同じく、それで彼らも終わりかと思ったら、今度は女性の割れんばかりの怒声とも悲鳴ともつかない声がどんどん近づいてくる。


どういうことだ?と振り向くと、先ほどの女性が斧を例の強化魔物に打ち付けたはいいが、それが魔物に突き刺さって抜けない状態になり、それにもかかわらず柄から彼女は手を離さないたために魔物に爆走キャリーされているのだ。


「運のない人だ・・・いや、違うな」


よく見ると、彼女の斧の柄の部分には鎖が付いていて、それが彼女の手首にしっかりと巻き付いている。

悲鳴のような声も聞こえなくなり、彼女自体はすでに意識がないのか空中に浮かんでされるがままになっているようだ。


「抜けないのか!」


このままではそのうち洞窟の壁面に猛スピードで擦りつけられるか、どこかの出っ張った岩に叩きつけられるかで大惨事になりかねない。


「さすがに誰かを犠牲にする気はないんだよ・・・!」


ここでどうにかしてあげないと・・・僕の都合で人が死んでしまうのは寝覚めが悪い!


立ち止まって、近くに転がる拳よりの小さい石を拾い上げる。


集中だ。

アケミちゃんは僕なら倒せると言っていた。

現在進行形で高ランクで構成されているようなパーティが太刀打ちできてないような相手だけど、僕なら倒せるとアケミちゃんが言ってたんだ。


「嘘だったら死ぬようなことを、アケミちゃんは言わない!」


いつのまにか生まれているアケミちゃんへの信頼感を根拠に僕は決心した。


僕は、目をつぶって急速にその石に僕の身体にある魔力を捻じ込むイメージをする。

次いで、右手を強化魔物に向けて、直線的に斧が食い込んだ強化魔物の身体に当たるルートをイメージして、眼を開けて、すぐさま狙いを定めてぶん投げた・・・!!


僕の手から放たれた石は黄緑色に発光していたが、イメージした通りに直線で斧と魔物に向って奇妙な音を立ててぶっ飛んでいく。


普通に石を投げてもこんなに早く飛ばせた事はなかったと思う。


そして、石が魔物にぶち当たった瞬間、一瞬空間が歪んだような錯覚がした。

いや、実際歪んでいるのかもしれない。


空間の歪みと共に強化魔物の身体が捻じれ切れるように回転しながらえぐれていき、拳大以上に大きな穴を強化魔物の身体穿って行った。


斧使いの斧もそれによって強化魔物の身体から離脱し、斧使いは壁に激突して動かなくなった。

たぶん、死んではいないだろう・・・。勢いはすごかったけど・・・


石はそのまま貫通して洞窟の天井にめり込んで止まったようだが・・・強化魔物は突然の出来事に驚いたのか僕をただ追っていただけの視線というより凶悪なものに変貌した気がする。


事実、先ほどよりも速く僕を追って爆走している。


「やべ、たぶんもう魔力ないよな・・・!」


そもそも先ほども石を投げた時も魔素はすでに切れている可能性もあったからちょっと冷や冷やしていたのだが、まだあったようでよかった。


だが、さすがにもう無理だろう、近くの石を拾い上げてもう一度石に魔力を捻じ込もうとした時だった、先ほど魔物を穿ったあたりが再び歪み始めたような気がしたが、それも一瞬の出来事で、すぐに「役割は終わりやで?」という幼い声と共に強化魔物が木端微塵に吹き飛び、洞窟の地面や壁、天井はもちろん、数メートルに及ぶほどに血液やら臓物やらどの部位なのかわからない肉塊やらで染め上げられた。


「お、おおぉ・・・」


大惨事じゃん。


という言葉を飲み込み、そのスプラッタな光景を引き起こした少女を見つめた。


「アケミちゃん、やりすぎじゃない?」


笑顔で血にまみれることなく、魔物が先ほどまでいた場所に、立っている症状が悪びれる様子もなく微笑む。彼女がこの惨事を引き起こした人物のはずなのだが、返り血を浴びて血まみれという訳もなく分かれる前と同じ状態そのもので綺麗なものだった。


「結構しっかり倒さないとこいつ死なんからなぁ、仕方ないんやで」


「そんな魔物を僕にけしかけないでよ」


「え?なんやって?」


「いや何でもないよ」


何言っても笑ってごまかされる気しかしないのでここでとどめておくことにした。


そんなやり取りをしているうちにアケミちゃんの背後からクラリスとジュライア、クラナゼットが駆け寄ってきた。


「うわ・・・これはグロイな・・・」


「アラハさん!?やっぱり威力が凄すぎます!!」


ジュライアが引いてるのと対照的にクラリスが目を輝かせていた。


「・・・クラリス?僕だってそんな見境なくこんな惨事は起こさないよ」


案に僕じゃなくてアケミちゃんがやったという意味を含めて言ったつもりだけど、ごまかしすぎると僕の威信にかかわるので濁すにとどめることにした。


「このくらいしないとこの魔物は倒せなかったんですよね!私でもここまで木端微塵にはできないです!凄いです!」


いやぁ!!そんなにキラキラした目で見ないで!!?


そうは思っても、そこまで言われちゃうともはや僕じゃないとも言い出せないのが僕の性分というか。


「まあ、クラリスだってちょっと研鑽を積めばこのくらいは簡単だよ」


などと、めちゃ適当なことを言って、「さーて先を急ごう!」とその場から逃げることにした。

そう、僕らの目的は強化魔物を倒すことではなく、この先にあるのだからね。


「せやで!誰でもこのくらいは頑張ればやれちゃうで!」


「私でもできますか!?」


アケミちゃんが悪乗りしていると、クラリスが食いついていた。


「せやな!もうちょっと大きくなったらクラリスも簡単にできると思うで!アラハちゃんから習うとええ!」


やめて、僕にそんな悍ましい力ないよ!


そんな気持ちを込めて苦笑いしながら早歩きで先へ進む。


「いやいくら何でもこれはやりすぎだろ、後で冒険者来た時に騒ぎになるだろ」


ジュライアがあまりの惨事を目撃して後ろ髪をひかれるようだったが、それに関しては僕でも説明できるので教えてあげることにした。


「それは大丈夫だと思うよ。肉塊とか防具は一定時間が経過すると迷宮に吸い込まれるからね」


「便利じゃねえか・・・というか、迷宮てそんなお掃除機能があるのか、知らなかったぞ」


「まあ基本的にはね。一部の高ステータス武器とか戦具とか、生き物とかは吸収されないらしいよ」


「そうなのか、ふーん、だったら、さっきの『百の傷』と『大蛇殺し』のパーティは気絶してても大丈夫なわけだな」


ジュライアが納得したように唸った。


「まあ、大丈夫かもしれないけど、寝てる間に魔物に襲われる可能性はあるよね」


「なるほど・・・ん?あいつら大丈夫なのか?」


たしかに・・・なんも考えてなかったけど、大丈夫なのか?


一瞬不安になったが、アケミちゃんが「大丈夫やで、来るまでに根こそぎ魔物はぶっ倒してるしなぁ」とのことだった。

その後小声で、「魔物避けの魔法も掛けていたしなぁ」と教えてくれた。


なるほど、じゃあ安心だ。

僕も納得できたよ。


そんな心配をしたり説明を聞いていたからか・・・僕はこの時気が付かなかった。

すでに僕のステータスからは魔素が抜けきっていたのに魔法を使えたことを、そして、スキルでも何でもない技を使った事を・・・

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