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道中はやっぱり盗賊が出ちゃうのはお約束?

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

冒険者ギルドカード


冒険者名 : アラハ

冒険者級 : 3級

次級条件 :

3級討伐依頼を200回達成 未達成

4級討伐対象の討伐 未達成


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++





・・・っ?


「あ!目が覚めましたか!?」


何やらものすごい近い位置からクラリスの声が聞こえてきて、視界には過ぎ去る草花と土が入ってくる。


「ん・・・え?僕、何してたっけ・・・?」


気が付いたら僕はクラリスにおぶさって移動中であることが判明した。


「おー。起きたんか?ずいぶん長く寝てたで!」


可愛い。元気な声でアケミちゃんがにっこり笑い気けてくる。可愛い。


「日も傾き始めてるぞ。俺らは簡易的に歩きながら乾燥パン食ったから、お前も食っとけ」


ぶっきらぼうに僕の口元に硬いパンが付きつけられる。


「ぐ!ジュライアさん!大きくて硬い!」


「ったく。懲りねえやつだなおめぇはよ」


ジュライアはハハハッ!と豪快に笑いながら無理矢理僕の口にその大きくて硬いパンをねじ込んで!

いや、マジででかい!痛い!


何とか両手を使って口から取り出し、ゆっくり食べることにした。クラリスにおぶさって。


「アラハさん・・・私から降りません?」


「ん?」


「ん?じゃないですよ!いい加減一人で歩きません?!大の大人を背負って歩いてると道行く人にじろじろ見られるんですよ!」


クラリスが嘆きだした。

ほう・・・なるほど。


しめしめ。


「これに懲りたら僕を殴るのはやめるんだぞ?いいな?」


「はい・・・って、え?ちょっと待ってください!恥ずかしくないんですか!?」


「僕は気にしない!」


「あはは!さすがアラハちゃんやで!そこに痺れる憧れる、やで!」


「だろー?アケミちゃんわかってるぅ!」


「デレデレしないでください!!」


クラリスが吠える。


「ったく、アラハらしいぜ」


それをみてジュライアがやれやれとジェスチャーする。


にぎやかに歩く僕ら4人とそれに反応するように前を歩いていた突然グラナゼットが「ぐあぁ!」と吠える。


僕らの賑わいに反応したのかと思ったけど、どうやら違うらしい。


唐突に物陰から「キィィィィッ!!!」と飛び出してきたゴブリンの集団に取り囲まれて・・・となる前に、瞬時に目にもとまらぬ速度でグラナゼットが飛び出してきたゴブリンを前足で薙ぎ払い引きちぎっていた。

飛び散る血飛沫。逆に驚いたゴブリンの1匹から事件性のある「キャァァァァァアッ?!」という悲鳴がゴブリンから発生したのも今は昔というか・・・もう肉塊へと変貌を遂げている。


「・・・ぃい?」


僕はその様子を変な声を出して眺めるだけだった。


「え、えっと、早いですね!私も対応できるかわからないです!」



クラリスがちょっと困惑するが、アケミちゃんが「爪とぎ探してたんやろな!ちょうどよかったで!爪とぎの役割果たせたかわからんけどな!」と嗤う。


眼光には心から笑っているのだろうか不明だが、ゴブリンなんて虫けら程度にしか思っていないのだろうな。

いや、こういうとこ怖いなぁ・・・ほんと、魔人って感じだよね。


とりあえず、クラリスはゴブリンは別に対処を間違えなければ勝てるという認識なのか、速さにしか驚いていないが、そもそも、こんな動きができる生き物をそうほぼいないだろうね・・・


グラナゼットのしっぽとか踏んだ日には即死させられかねないな。足元気をつけないとね。むしろ、クラリスにおんぶにだっこでいけば踏む心配はないか?


謎な構想を思い描いていたが、さすがに僕の良心も痛み始めたので、自分の足で歩くことにした。



まあさすがに移動するだけで襲われること自体、1日に1回程度だろうからもうさすがにないだろう・・・なんてのんきに考えていた時期が僕にもありました。


「「「キャァァァァァアッ?!」」」


「イャァァァァァアッ?!」


「ヒーーーハーーーー!?」


と、まあ次々とゴブリンが出るわ出るわ。


「・・・ぃいや・・・出すぎじゃね?」


さすがに引いた。ゴブリン出すぎ。これだけ出てきたら魔物の暴走でも起きているのかと思っちゃうレベルよ?


「アラハさんが起きる前にも数匹ゴブリン出てきましたので私が倒してたんですが、アケミさんがクラナゼットに任せようって言いだしたのがたしかアラハさんの起きる直前のことでした」


「なるほど・・・かなり前からこの状態だったのね」


さすがに引いた。

タージャボルグ効果発揮しすぎだろ・・・エピデュロン・バルツレックス公爵領に行くまでの道のりで、ゴブリンが凄惨な事件に巻き込まれたみたいな感じになって死んでるじゃん。魔物にも少し同情しちゃうじゃんね。


そんなことを思いながら歩いていると、またもや草むらがガサゴソと・・・


「またか・・・」


出てくる前にクラナゼットもこなれた仕草で殺しに行こうとしたが、茂みから出てきたのはオレンジ色のモヒカンの大男だった。


「あ、クラナゼットストップ!まさかの人間だ!」


とっさに言ってしまったものの、僕の声にちゃんと止まってくれるのかという不安もあったが、クラナゼットは小首をかしげながらちゃんと止まってくれた。

しつけがなっている動物って素晴らしいね!


そう感想を抱いているうちに次々と盗賊れっきとした風貌のモヒカン集団が草むらから生えてきた。


「野生のモヒカン男の群れに遭遇した・・・」


僕がつぶやくと、「逃げるを選択しても、しかし回り込まれてしまったていうパターンやで?」とアケミちゃんがにこにこしながら嗤う。しかし目は笑ってない・・・。


笑顔がちょっとこわいなぁ。まあそれでも可愛いけどね。


「おめぇらの中にジュリアってやつ、いるか?優しくなぁ嬲り殺してやるぜぇ」


ニタァっと笑いながら僕の目を見てくるモヒカン男たちのリーダーと思わしき顔の傷がある男・・・。


僕がよーく考える動作をした後に、顔面に中央に寄せてしわくちゃにしながらうーん?

「いや知りませんね」と告げると、「そうか」とだけ言ってまたモヒカン男たちが茂みに沈んでいった。


まさかこんなにすんなりいくとは・・・!

我ながら我が頭脳が恐ろしい・・・!


「・・・モグラみたいだな」


ジュライアがそう呟いて、苦笑いしながら歩き出す。

それに続いてみんなで歩き出した。モヒカン男たちのいた茂みを通過し、


事なきを得たと思った・・・が、ここでクラリス選手が痛恨のミス!


「でもなんでジュライアさんのこと殺そうしてるんでしょうね?この中だったらすぐにジュライアさんだと気づかれそうですけどね!」


あら、大きいお声!


クラリスがアケミちゃんの顔を見ながらそう笑っている。


てか、その言葉が聞こえてしまったのだろう・・・不味いと思ったらやっぱり不味かった!

振り向くとにょきにょきとニタァっとしたモヒカン男たちが茂みから生えてきていた。


「ふっ。お前がジュライアだったか」


腕を組みながら草塗れのモヒカンリーダーが決め顔をしてくる。

いや、お前、あまりに簡単なやり取りで当該人物を見逃しておきながらその顔!!と突っ込みたかったが、やめておいた。

たぶん、こいつ僕よりは腕っぷしが強い!挑発はやめておこう・・・


てかなんでアケミちゃんの顔を見ながらそのクラリスがセリフを吐いているのかは謎だが、ジュライアではなく、アケミちゃんにモヒカン軍団が目線を向けていた。


「クラナゼット、死なない程度に遊んだってや」


アケミちゃんがそう告げると、瞬きを数回する間にモヒカン男たちが地面に血だらけで転がっていた。


「さ、さすが・・・」


クラナゼットだけいるだけでもうパーティーメンバーいらないまであるねこれ。

クラナゼット貸し出してもらって迷宮はいれば数日でクリア出来ちゃいそうだよ。

おや、もうすぐそこに僕の安泰老後ライフが待っているのでは?おやおや?完璧か?


そう考えていると、アケミちゃんが「クラナゼットは今は言うこと聞いとるけど、そのうち理性が飛んで誰彼構わず殺しまわって暴れるようになるのが惜しいんよねぇ」と笑顔でつぶやく。


「え・・・それ、初耳ぃ。ものすごい危険なのでは?大丈夫なのそれ?」


一瞬にして一緒に冒険したくねぇー・・・と180度意見を変えた僕である。

さらっと恐ろしいことをいうアケミちゃんに恐る恐る聞いてみる。


「私がいれば返り討ちにできるから問題ないで?」


「そ、そう」


うわぁ、身も蓋もねぇー・・・僕の安泰老後ライフはまだ遠そうだ・・・

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