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賢英帝 劉禅  作者: 三国 志浪
9/21

暴走

多数のコメントありがとうございます。皆さんの三国志への思いや解釈が聞けて参考や勉強になると共に楽しく拝見させて頂いております。劉禅は暗愚じゃないという方が多いですね。また、ブックマークも100超えました。もっと増えると嬉しいなぁ~。これからもよろしくお願いいたします。

 魏軍は士気が低下してしまい戦いどころではない。意気消沈引き返していった。

 孔明は、陣営に戻ると早速軍議を開いた。軍議では、孔明から流れるような作戦が提示され、20分ほどで散会した。幕営に戻ると劉禅は興奮した様子で滄海を相手に孔明を褒めちぎっていた。

 趙兄弟は、挨拶をして軍議の内容を話し始めた。今夜、王平、張翼が夜襲を掛けることに決まった。しかし、これは見破られるだろう。これを見破った敵は、手薄になった本陣を攻めてくるだろうから、本陣は予め空けておいて、入ってきた敵を包囲殲滅するという作戦である。劉禅は考えた。わざとやられる軍と包囲殲滅する軍どちらがいいかな?わざと負けるほうは逃げるだけだろう。ここは、殲滅する方に従軍しよう。劉禅は決めた。急いで趙統が孔明にその旨を伝える。すぐに許可がおりた。その夜、この計略は当たり、魏軍は散々に打ち破られ長安への撤退を余儀なくされた。蜀の丞相諸葛亮孔明まさに無敵の勢いである。

 翌朝、蜀軍は長安に向かい進軍した。とりあえず目指すは長安である。最終的には、魏の首都洛陽を攻め取る。そのためにも長安を攻め取り、しっかりした足場を固めなければならない。進軍中、劉禅は違和感を覚えた、進軍の速度が遅いのである。

「こういう時は何かあるぞ」劉禅は、趙統達にそう呟いた。果たして5日後、蜀に寝返る画策をしていた元蜀臣の孟達が敵の司馬懿に討ち取られたという情報が入った。孔明は、「孟達を失ったことは構わないが、司馬懿が敵の大将に任命されたのは味方にとって憂うべきである」と話したという。この司馬懿という人物は、孔明が策略を立て敵軍の中枢から外した者である。敵で唯一孔明が恐れる智謀の持ち主であった。孔明はそこから行軍のスピードを上げた。まずは地の利を得なくてはならない。相手が司馬懿では、さすがの孔明も気は抜けないのである。蜀軍は地の利を得るところまで行くとそこで陣営を築いた。早速の軍議である。趙兄弟は、帰ってくるとその内容を話し始めた。

我が軍は、地の利を得たのでここで魏軍を待ち受けて決戦をする。ただし、街亭の地が我が軍の生命線であり、あの地を取られると、補給線が止まり我が軍は撤退を余儀なくされる。当然、敵軍も狙ってくるであろうから、誰か然るべき将軍を差し向けたいがというと、馬謖が行くと言い出した。孔明は、しばし迷っていたが、馬謖の意志が硬いのを確認すると必ず街亭の細い入り口に陣取って、決してここを攻め取られるなと強く言い渡した。そのような話をしていると、伝令が趙兄弟を呼びに来た。

「失礼します。丞相がお呼びです」

趙兄弟は、劉禅を見た。

「いってまいれ。たぶん従軍の話だろう。相父のいう通りにせよ」

「はっ」

趙兄弟は孔明の下に向かった。果たして孔明の話しは、馬謖軍に従軍してもらいたいという内容であった。趙兄弟は、劉禅の指示があったので、すぐに承諾できた。もしも、劉禅の言葉が無かったら、どうしたらいいか言葉に困っただろう。二人は劉禅の慧眼に驚いた。戻ると二人は劉禅に、馬謖軍に従軍することを申し込まれ承諾したことを伝えた。時は一刻を争う、早速の出発となった。

 街亭に着くと、まだそこには魏軍は居なかった。まずは一安心である。すると突然全軍山に上れという命令が届いた。おかしい、趙兄弟は顔を見合わせた。劉禅もすぐに、

「趙統、趙広、馬謖と話してまいれ」と語気を強めた。二人は早速、馬謖の元に向かう。すると、馬謖と副将の王平が言い争っていた。馬謖は山上に陣を構えたほうが良いという意見、王平は丞相の言われた通り細道に陣取りそこを死守する、という意見であった。趙兄弟も王平の意見が正しいと馬謖を必死に止めたが聞き入れない。挙句の果てに、副将は主将の意見に従うものだ、軍律に照らして罰するぞ!と王平を脅し、趙兄弟には、身分の低いものが意見をするとは図々しい下がれと一喝してきた。これを聞き、さすがの王平もあきれた。我が軍5千は、丞相の意見に従うといって、軍を分け始めてしまった。これはまずい、趙統は、すぐに趙広を劉禅の元に走らせた。趙統は、必死で諌め続ける。しかし、馬謖は聞く耳を持たない。だんだん趙統も興奮してしまい、強い口調になってしまった。そしてとうとう、「うるさい」と馬謖が怒気を発すと剣を抜く、

「軍律に従わない者には罰を与えなければならない。最後に聞く。我の命に従い、山上に陣せよ」

「お断りする」趙統が即答する。

「よし、軍令違反だ。この者を斬れ」馬謖が凄い形相で命じる。周りの者が「お待ちください。この者は、大将軍趙雲様のご子息でございます。どうかご容赦ください」と押しとどめる。

「ならん。軍中にそのようなことは関係ない。よし、お前らがやらないならわしがやろう」

そういって馬謖は剣を抜き趙統に向かい合った。

(こんな理不尽なことで死んでたまるか)

趙統も一歩下がって、剣を抜く。その時、遠くから声が聞こえた。馬でこちらに走ってくる者が大声を張り上げている。

「馬謖、待て、待たぬか~」

馬謖は耳を疑った。この軍の主将である彼を呼び捨てにできる者はこの軍には居ないはずである。しかもその者は兵卒の格好をしている。彼は烈火のごとく怒った。

「あの痴れ者を引っ立ててここに連れて来い」

しかし、彼の命を待つことも無く、その者は馬謖の前にやってきた。当然、趙広の急報を聞き駆けつけた劉禅である。左右には、滄海と趙広がいる。

馬謖は怒り過ぎて、すでに顔が笑っていた。

「貴様、なぜわしを呼び捨てにした。丞相にでもなったつもりか?」

劉禅は、ひらりと愛馬「清流」から飛び降りると、兜を脱ぎながら答えた。

「丞相ではない。皇帝だ」

馬謖の目の前に、陛下とそっくりな顔が現れた。馬謖は唖然としている。

「へ、、、陛下?なぜここに?」

ぼーっと立っている馬謖を趙統が叱り付ける。

「陛下の御前であるぞ。早く平伏しないか」

馬謖は、雷に打たれたようにその場に平伏した。

「陛下、ご機嫌麗しゅう」

「麗しゅうないわ。誰のせいで、麗しゅうないのじゃ?馬謖言うてみい」

他の者も、急いで平伏する。劉禅の怒りは凄まじい。

「馬謖、言うてみい。誰のせいじゃ」

「恐れながら、私のせいかと、しかし・・・」

と言いかけながら面を上げる馬謖の顔を劉禅が蹴り飛ばす。

「朕が面を上げよと申したか。地に顔を擦り付けておれ」

「はっ」必死に額を地面に擦り付ける。

「汝に下された命令は何であったか。申してみよ」

「はい、ここ街亭の細道に陣立てをし、死守せよと命じられました」

「して、汝は何をしようとしたのじゃ」

「はっ、山上に陣を構え敵を迎え撃とうと、古来より山上から・・・」

馬謖は必死に抗弁をしようとする。彼の顔は真っ青である。その頭を劉禅が踏みつける。

「余計なことは話さんでよい。趙統、こういう場合はどういたすのじゃ」

趙統が「軍令違反になります」というとやっと頭の足を外し、

「ならば、朕が刑を言い渡そう。死刑じゃ。即刻首を刎ねい」

劉禅の顔からは普段の人懐っこさは消え、厳しい眼光から青い炎が飛び出てきそうな剣幕である。ここにいる誰もが気を飲まれた。馬謖の副官も一歩も動けない。皇帝の命令は絶対である。その命に異を唱えることは、一族を含めての死罪にもなりえる。

「恐れながら、陛下、馬謖は丞相が将来を見込んでいる者、また彼の兄、馬良は先帝からの蜀の重臣、さらに丞相と刎頚の友であった者にございますれば、丞相に免じてお命だけはお助けくださいますようお願い申し上げます」

平伏して、趙広が懇願する。劉禅は、平伏している趙広の胸倉を掴むと、その顔を平手打ちに打ち据えた。趙広が後ろに吹っ飛ぶ。

「誰に向かって口を聞いておる」劉禅の怒鳴り声が響き渡る。

その趙広の前に趙統が平伏し、

「恐れながら、馬謖は丞相が見込むくらいの大才の人物、この者を・・・」

言い終わる前に、肩を蹴り飛ばされ、胸倉を掴まれ2発3発と殴られる。そしてそのまま突き飛ばされ、趙統は仰向けに倒れる。

「よしわかった。そち達がそれほどいうのならば、命だけは助けてやろう」

しかし、その言葉とは裏腹に劉禅の顔は冷たく笑っていた。

「馬謖、汝の考え通り山上に陣を構えよ。趙統、趙広は馬謖の補佐をせよ。兵100名を与える。すぐに出発せよ」

馬謖は耳を疑った。兵100名で何ができるであろう。しかし、否といえば打ち首である。

「はっ、かしこまりました」と3人は答え、100名の兵に大量の荷物を持たせ山上への行軍を命じた。

劉禅は王平を呼び、しばらく話をしていたが、山上を一瞥し軍を引き返させた。

今回の話は超有名なところですよね。「泣いて」ですね。果たしてこの後の展開はどうなるのでしょうか。次回は「決断」です。楽しみにしていてくれたら嬉しいです。では!

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