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賢英帝 劉禅  作者: 三国 志浪
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孔明出陣

翌日、孔明が宮殿に来た。

「相父、急に訪ねてくるとはどうされた?」

「ご機嫌麗しゅう」と孔明は拝礼をする。

「臣が聞くところによりますと、趙雲将軍が退役されたと聞きました。それが本当かどうか確かめに参りました」

これは形式的な問いである。あらゆる情報機関を駆使し孔明はかなり正確な情報をつかむことができる。

「うむ、大将軍のたっての願い。許した」

孔明は、ひとつ頷いた。その顔は仕方がないという表情をしている。

「して、大将軍の官職はどなたを任命されるおつもりでしょうか?」

「うむ、魏延将軍にと考えているが、いかがかな?」

孔明は考えるまでもなく

「いけません」と答えた。

「何故じゃ、大将軍も魏延であればと申しておったが・・・」

「大将軍の官職は、趙雲様のような輝かしい武功の者が就く官職であります。確かに魏延将軍は、他の者よりも頭一つ抜きんでているとは思いますが、まだまだ趙雲様と比肩することはできません。今の蜀に趙雲様と比肩する者がいるでしょうか。ここは無理に官職を授けず、次の戦いで抜群の武功を上げたものに大将軍の官職を授ければ、武官の者達の士気を一層高めるのではないかと考えます」

「相父の申すことはもっともであるが、あまり長い間、官職を空けておくのもどうかと思う」

「陛下、そう長いことはありません。臣は、国力の回復を待って、魏への侵攻を予定しております。今日はそのお許しを願いに参りました。」

「ほう、ならば大将軍の職は空けておこう。侵攻は、いつごろか?」

「食料が整えば、進軍しようと考えております。たぶん来年か再来年の春頃と思われます」

「朕もいく」

「いけません。御親征は恐れ多い」

「ならば許さん」

「陛下・・・」孔明は困った声をあげた。

「朕も相父の戦を身近に見て学びたいのじゃ。父上は朕の年の頃、戦の毎日で各地を転々としていたと聞く。恥ずかしながら朕は戦に出たことがない。そろそろ戦を経験しても良い頃ではなかろうか?」

「危のうございます。玉体に何かありましたら、蜀の滅亡に繋がります」

「だから、神算と言われる相父の戦立てのところに行くのである。安全なところで見ておるから」拝むように孔明を見つめる。

「時代が違います。陛下の戦いはこの国を安んじること、敵を倒し、領地を切り取ることは臣にお任せ願いたく」

「だから、安全なところに・・・」言いかける劉禅に孔明がたたみかける。

「戦場に安全なところはございませぬ」

目と目が合った。しばらく孔明を睨みつける。

「どうしてもか」

「御賢察を」

「進軍は許さぬ。下がれ」劉禅が怒鳴った。彼が孔明を怒鳴りつけるのは珍しい。孔明は「失礼つかまつりました」と拝礼をし、退出した。孔明が退出しても彼の怒りは収まらなかった。

 その後も、孔明は度々宮殿を訪れ遠征に行くことを申し入れた。そして、3か月後、とうとう劉禅の承諾を得た。

「良くわかった。相父がこれだけの気概を持っての遠征、絶対に成功するであろう。国のことは朕に任せい。憂いの無いようにしっかり務めるであろう」

孔明は、勇躍遠征の準備に取り掛かった。孔明は編隊を整え、出発の準備が整った。将軍は、魏延を筆頭に、馬岱、張翼、王平、馬謖など、蜀の主だった武官すべてが従軍する。国をあげての総力戦、その中に趙兄弟も参加していた。彼らは、劉禅からの口添えがあり、従軍することになった。彼らは、すべての会議に参加し、必要があればそれを劉禅に伝える事ができる。また、臨めば戦場にも参加できる。どの部隊にも属さないという権利が与えられた。

「行って参ります」

孔明が出発の挨拶に来たが、劉禅は袂を隠してただただ泣いていた。余程別れが辛いのであろう。孔明もほろりと来たが、ぐっと堪えて、「後は頼む」と補佐の者に言い伝えると、踵を返して出陣した。

「出発」

孔明の掛け声で、全軍が動き出す。趙兄弟は、4騎の騎馬隊で移動した。大軍の中の4騎である。普段はどこにいるのかわからない。蜀の大軍は漢中の西にある沔陽まで進んだ。対する魏は、長安に大本営をおいた。蜀の大軍は、ここまで来るのにもずいぶんな時間がかかる。孔明は、将兵の疲れをとる為に、「ここには亡き馬超の墓がある。霊を慰めるため祭りをひらこう」と言って、馬岱に祭司を務めさせ、休息を命じた。その日の夕方、早速の軍議が行われた。当然、趙兄弟も参加する。軍議は1時間程で終わった。会議が終わると趙兄弟は幕舎へと戻っていった。

「おう、どうであった」そこには蜀帝劉禅が横になっていた。隣には滄海が控えている。なぜ、滄海が居るのかというと、彼ら兄弟は劉禅にこのことを伝えられた。すなわち、劉禅の替え玉を用意して、首都を守らせ、劉禅は戦場に出るということである。君命は絶対だ。替え玉は2か月位で見つかった。それを劉禅が隠れて教育し天子らしく振舞えるようにした。ほくそ笑む劉禅とは対照的に趙兄弟は、だんだん不安が大きくなっていった。どうしようもなくなって二人は、父趙雲子龍に相談したのである。趙雲は最初大いに笑い劉禅の行いを絶賛した。そして二人では心配であろうと、滄海を遣わしてくれたのである。

 二人は、まず拝礼をしようと跪いたが、「それはやめよ。誰かに見つかってしまうではないか。戦地にいる間は、それは禁止とする」

「はっ」といって趙兄弟は片膝立ちで話始めようとするが「それもやめよ。そちたちは士官、朕は兵卒だぞ。外から見たらおかしいではないか。胡坐をかいて話始めよ」

二人は急いで胡坐をかくと、話始めた。軍議の内容は、魏延が詭道を通り、長安攻めを主張したが孔明がそれを却下し正攻法で攻めることになった。明日は、まずは様子見の戦が行われる予定である。と報告した。

「丁度良いではないか。朕の初陣に相応しい。明日、我々はその先鋒に従軍すると相父に伝えてこい」

「はっ」趙広は早速孔明にこのことを伝えに行った。すぐに戻ってきて、承諾を受けてきた。

「よし、明日は初陣ぞ。精がつくものを食べて、早く眠るとしよう。準備をせよ」劉禅は朗らかに命じた。

お読みいただきありがとうございました。次回は「初陣」です。楽しみにしていてくれたら嬉しいです。

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