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賢英帝 劉禅  作者: 三国 志浪
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李厳と李星彩

それから2日後、宮殿に李厳とその娘が尋ねてきた。趙広からそのことを聞いた劉禅は、また婚姻の話だなと思いげんなりした。李厳は、軍事、民事に対して非常に高い能力を発揮する有能な将軍であるが、権謀を弄するのを好む。また、己の才に過剰な自信を持つため、孔明をライバル視する所があり、(身の程をわきまえろ)という気持ちが出てしまい、劉禅はこの男をあまり好きではない。しかし、孔明を除くと、彼ほどバランスの取れた有能な男は見当たらないため、無下にはけっしてできない、扱いが難しい男であった。

「すぐに行く。少し待つように伝えよ」

(さて、どうしようかな?)李厳の用は概ね分かっている。李厳には、星彩という娘がいる。彼女は、張飛の娘である。張飛が亡くなった時に、どの家で引き取るかと言う問題が起こった。趙雲と李厳が候補に挙がったが、当時、子のなかった李厳が、是非にと養女として迎えたのである。歳は16歳、劉禅とは1つ違いである。その星彩を后妃にすると李厳は画策しているのである。(あまり待たせても、機嫌を損ねるといかん)劉禅は、10分程で李厳の所に出ていった。

「李将軍、本日はどのような用向きだ?」

「陛下、ご機嫌麗しゅうございます。お忙しいところ申し訳ありません。先日、珍しい武器を手に入れましたので、献上するために持って参りました」

それを趙統が受け取り、恭しく劉禅に渡す。

「ほう、これは珍しい」

李厳が持ってきたのは、刀身が細い剣であった。当時の一般的な剣は、非常に大きく、切ると言うよりは、叩き潰す、貫くという使い方をする。この細い剣は、そのようなことはできそうに見えない。じつはこの剣は、星彩が考えて特別に作らせたものである。力の関係で彼女には、従来の剣は扱えなかった。しかし、父の影響で武術を学びたい彼女は、女でも扱える武器を考え、ついに完成させたのである。それに目をつけた李厳が、劉禅への献上を考え付いた。劉禅も体が小さく、力が強くはないが武を好む。この剣は星彩のものよりは太く大きく作ってあり、劉禅に扱いやすいように作らせてある。

「これで倒せるのか?どのように使う?」

李厳が、待ってましたというように会心の笑顔で応じる。

「はい、それは私よりもこの星彩が詳しく知っています。説明させてもよろしいでしょうか」

劉禅が頷くと、平伏していた星彩がゆっくりと立ち上がり劉禅に近づく。星彩は、美形である。張飛の面影はどこにもない。母親に似たのであろう。また、書画をたしなみ、人並み以上の腕前を持っている。

「陛下、剣を拝領致します」

頷いて、劉禅は細身の剣を渡した。すーっと離れて、星彩は剣を構える。よく見ると星彩の着ている服は、普段と違い簡素な動きやすい格好になっていた。じっと構えていた星彩が優雅に舞うように動き出した。時折鋭く動き細身の剣が「ヒュッ」と鳴る。

「うつくしい・・・」

思わず、劉禅は呟いた。美しいだけではなく、その演舞から星彩が相当の武術の腕であることも見て取れた。しばらく舞うと、星彩は、平伏し頭を下げた。

「見事であった。面をあげよ」

劉禅が声をかけると、星彩は顔を上げた。その顔は、上気し少し赤くなっていた。少し息も上がっているため、胸も大きく上下している。しかし、それを悟られまいと必死で抑えようとしている様子が伺えた。

(かわいい・・・)劉禅は、しばらく見惚れていた。

しばらく見詰め合っている二人に趙統が、「陛下、丞相が参りました」と伝えた。

「おう、そうか。通せ」

劉禅は言うと、

「李将軍、この剣の使い方をもっとよく知りたい。明日も同じ時間に星彩と共に訪ねてまいれ」

「参りたいのですが、どうしても外せない公務がございまして・・・」

「そうか、ならば星彩だけでもよこせ」

「はっ、かしこまりました」

計略成功、李厳は平伏しながら、にやりと笑った。

李厳と入れ替わりに孔明が現れた。

「陛下、ご機嫌麗しゅうございます」と平伏した。

「相父、無理を言ってすまぬがよろしく頼む」

「恐れ多い。臣の言葉などは龍耳を汚すことになりはしないかとそれを恐れています」

「相父は、謙遜が過ぎる。こんな問答は、時間がもったいない。早速講義を始めてもらおう」

今日は、孔明の公務の合間を見て、講義をしてもらうことになっている。孔明は非常に忙しく。天子といえども孔明の講義を聞けるのは、年に数えるほどしかなかった。

「では、早速はじめます」

趙兄弟も同席する。当然、ボディーガード兼雑用係なので立ったままだが、孔明の講義を聴くことができた。孔明の講義は、非常に聞きやすく、要点を明確にし、また、古来の例なども交え、今まで聞いたどの講義よりも素晴らしいものだった。予定していた2時間はあっという間に過ぎた。講義を終えた孔明を劉禅は食事に誘ったが、昼食の時間は、将校との打ち合わせがあるといい、申し訳なさそうに断った。

孔明が去った後、劉禅は趙兄弟に「よどみない弁舌のことを水が流れるがごとくというが、相父の講義はまさにそれであったな」と感心することしきりであった。まさにその通りだと趙兄弟も胸の中で何度も頷いた。

次回は「御前試合」です。ついに趙雲対魏延の日がやってきた。さて、どちらが勝つのでしょうか?普通に考えれば趙雲ですが、かなりの年ですし・・・。楽しみしていてくれたら嬉しいです。よろしくお願いいたします。

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