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6話-扉-

非常に狭い空気孔の中を一列に這って進む。

暗くて視界も悪い。唯一、別の部屋へ繋がる柵から射す光だけが頼りだ。

「傑作やわぁ~。演技せんでも良かったのにぃ。」

「仕方ないだろ。念のために、だ。」

ラースの後ろでほふく前進するルゥーが、ケタケタと笑っている。

先ほどの甲高い声がフラッシュバックされる度に吹き出す。

音が響かないよう、声を抑えながら。

ラースも不機嫌そうに反論。


ふと、目の前の柵から青白い光が広がる。ラースは動きを止めた。

「お?何してんねん。」

ルゥーからは状況が把握出来ない。

慎重に柵を覗き込む。一階の研究室だ。

ちょうど部屋の下部、床の壁際に設置された空気孔の柵が二人の現在地だ。

部屋の電気は消されているが、機械や装置の明かりが微かに部屋を照らす。

床には太いコードが何本も連なっていて、3D画面で映し出されるモニターには実験の模様が映し出されている。

様々な実験用の機械が置かれている中、ひと際目を引く大きな装置が無数に並ぶ。

部屋の大部分を占める大きな装置はガラス張りになっていて、青白い液体が満帆に入れられている。

中には人型の生物の姿。獣耳と尻尾。HA生命体だ。

身体にコードが繋がれていて、部屋の中に心臓の鼓動が響く。

隣の小さな装置には、元の生物の残骸が入った透明なカプセルケース。


ラースの表情が一気に険しくなった。

「すまんルゥー。先に外へ行ってくれ。用事思い出した。」

「はぁ!?危険やぞ、やめとけ!」

ラースは中に人間の気配がない事を確認して柵を外す。

部屋の中へ侵入ようとするラースの足首を、慌てて掴むルゥー。

「助けたい子がいるんだ。」

そう言ってルゥーの手を振り払い、部屋へ侵入して素早く柵を付けなおす。

「俺は先に行っとるからなっ!…必ず戻ってこい!」

二人は別行動を始めた。


ラースは急いで大きな装置に駆け寄った。

水中で目を瞑ってうずくまる、小さな身体。そして白い髪と同色の獣耳と細長い尻尾。

隣の装置には、子猫であった生物の残骸。非常にいたたまれない姿をしている。

改めて、人間に対する憎悪感が沸き上がった。

とにかく、中から救出する方法は無いのか。テーブルの上に置かれたファイルを手に取った。

文字は一部しか読めない。しかし、添付された複数の写真を見て確信を得た。


ランだ。


ランは捕獲された日、実験対象の承認検査を通過。

身体は実験用に解体され、媒介となる遺伝子細胞へ移植、急速成長剤の中で培養が開始された。

生命体の完成まで約5日間。

さぞかし辛い思いをしただろう。

今すぐ助け出したいが、未完成の身体を装置から出してしまうと、命が危ないかもしれない。

ラースは装置の前でうなだれた。


と、その時。

<<ウィーッ…>>

不運にも、部屋の入り口の扉が開かれた。

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