3話-研究室-
夕日が照らす中、ラースは走り続けていた。
どのくらい逃げ続けたのだろうか。
視界の悪い森の中、ついにその足が止まった。
疲労と空腹により、崩れるように座り込む。
腰にぶら下げていた水筒を開け、優先的にランに水分を与える。
「怖いよ…。」
「大丈夫さラン。もう、追って来ないよ。」
怯えるランを優しく抱き上げ、岩陰の小さな洞穴の中へ移動した。
日が沈み、森の中は暗闇に包まれた。
ラースたちは瞳を閉じ、静かに夜明けを待つ。
しかし、束の間の安心はすぐに破られた。
「フリーズ!」
<<カチャッ!>>
人間軍の叫び声と共に、銃口から光る赤いセンサーが二人を捉えた。
防弾チョッキを羽織った真っ黒の軍服。顔全体を覆うヘルメットが月明りに反射している。
ランが逃げようととっさに立ち上がると、
<<タンッ!>>
「動くなと言っている!」
洞窟の中に威嚇射撃の銃声が響く。ランは音に驚き、気絶してしまった。
ラースは身動きが取れず、抵抗する術もなく二人は捕らえられた。
軍用の中型トラックの荷台。数人の人間軍と共に、縄に縛られたラースは座っていた。
社内には多くの武装兵器が積まれている。
ランの姿は確認できない。
舗装のされていない凸凹道を、エンジンを吹かしながら進む。
車が揺れるたびに、何度も身体が揺れる。
目的地に到着すると、荷台の扉が開き、ラースは強引に降ろされた。
車のライトに照らされた鉄製の頑丈な門には、人間の公用文字で"研究所"と記されていた。
門の前には数台のトラックが停まっていて、別の車からは白衣の男が降りてきた。
その手には半透明のゲージ。中にはランの姿が。
「離せ!!」
ラースが身を乗り出すように叫ぶ。しかし縄を引っ張られ、その場に倒れ混む。
門が開かれ、白衣の男たちが中へと消えた。
「こいつは地下に入れておけ。」
門はすぐに閉じられ、ラースは建物の端の小さな扉に連れていかれた。
扉を開けてすぐの階段を下りた先。
中は長い通路が続き、両端には錆びた鉄の檻が連なっていた。
薄暗く、天上からぶら下がる豆電気が足場を照らすだけで、檻の中に灯りは無い。
こもった生暖かい空気と共に充満する不潔な臭いに耐えられず、ラースは気を失った。
【「素晴らしい。」
「制御不能!逃げろ!」
『ヴヴヴヴヴッ!!!』
「ぐ、ぁあっ…!」
「こ、こいつ…R-001は危険です!」】
ラースは静かに目を覚ました。