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農園の王~チキンな青年が農業で王と呼ばれるまでの物語~  作者: 東宮 春人
第6章 『新米農家 国を救う(後編)』
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6-0.もう一人の異端児


 第6章 新米農家 国を救う(後編)です。

 まずは0話から。次の話以降はサトル視点に戻ります



<要経過観察者の集結時の事例検証~サミュエル州カッパ農園の観察から~>


「異端児と呼ばれるシュンスケ様にこそ読んでいただきたく思っています」


 目の前に立つ人間は、第12地区対策室長のリンドバーグだ。この者もまた中央では異端児と呼ばれる人間だが、シュンスケの昇進と同時に第12地区対策室の室長に就任していた。


「読ませてもらった。君があの者に強い関心を寄せるのは分かったが、あの者は二界の食料問題を解決しうる男だ。くれぐれも、直接の接触はしないこと」

「もちろんです。あんなに面白い事象を台無しにするなんてありえませんよ」


 そういって、くっくっく、と風変わりな笑い方をする。論文を読んでみて、この男が第12地区室長に就任してよかったと思わずにはいられなかった。日和見主義の官僚たちだったら、農園を解散させるくらいのことはした可能性がある。この男は、俺が書いた過去のレポートをまとめて、今手元にある論文を作成してきたのだが、俺の目論見をよく理解しているように思える。


「君は第12地区担当に満足しているか?」

「ええ、もちろんです」

「そうか! それでは、そのまま精進するように。何か不満があれば来てくれ。部長権限で出来ることはしよう」 そういって、手元の紙の束を人差し指と中指でトントン叩く。 「これは、君の論文への評価だと思ってくれ」

「ありがたいお言葉です」


 そういって、リンドバーグは慇懃無礼な態度で腰を折る。


 当然、これは早めにリンドバーグを取り込むための戦略だ。俺の計画を完遂させるためにも、他のものが第12地区の担当にならないように慎重に進めねばならない。上席は俺のやり方を評価しているようだが、誰が不信感をもっているか、分かったものではないからな。


部屋を出ようとするリンドバーグを呼び止めて一声かける。


「そうだ! 君の論文は素晴らしい考察だが、この論文は直属の上司には上程しない方が良い。広域危機管理部長に新たに就任したアベル=シュナイダーは保守本流の急先鋒だ」

「もちろん心得ております。でなければ、ここにお持ちしません」

「期待しているぞ、異端児!」


 その一言にリンドバーグは不敵な笑みを浮かべると、失礼致しました、と頭を下げながら部屋を出ていった。この男は使えるぞ。そうして、頭の中の相関図にリンドバーグの名を加える。俺とサトルの両方に紐づけるように。



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