56話 デケンベルからの先触れ
「スージィ…少し変わったかね?」
朝食の片付けが済み、一通り朝の掃除も終わった後、庭で『型』の稽古をしていたらハワードパパに声を掛けられた。
『試練』を前日に終えたわたしは疲れを取る為、今日一日ユックリとお休みにして良い事になっている。
本当は一週間くらい休んでてても良いらしいんだけど、その辺は自由らしいのでわたしは今日だけお休みにさせて貰っていた。
そんな休みの筈なのに何時もの様に鍛練をしていたわたしの所へ、ハワードパパが来られたのだ。
「…変わった…です、か?」
ちょうど『型』も一通り終わったトコロだったので、そのまま一息つき返事をした。
どうやらハワードパパは、わたしの型の稽古を見ていて、何か思う所があった様だ。
ハワードパパから剣の事でお言葉を頂けるとは思っても居なかった!
これはレアですよ!ちゃんとお聞きしないと!!
「ウム、済まないね、邪魔をしてしまったかな?」
「いえ、丁度良い区切りでした。……でも、わたし何か変わりました、か?」
「いや、何と言うのか…薄くなった、と言うのかな?」
「薄く…です、か?」
「ウム…少し前まで、スージィはもっと濃く、存在感が強かったと言うべきか?」
「濃かった…です、か?」
「…やはり、何か修行で見出したかね?」
「えっと…そう、でしょう、か?!」
まあ、型稽古で随分『スキル』の調整はできる様になったと思うけど…、そんなに外見で違いとか出てるのかなぁ?
「よく、夜に出かけて修行をしていただろう?家の中で動き回っては、エルローズに叱られてしまうからね」
そう言うとハワードパパは、目元を細めて可笑しそうにした後、片目を瞑って見せた。
「ぅえ?!あぅえ?…えぇ?!!」
ぅええぇぇっっ?!なんで分るの知ってるの?わたし『インヴィジブル』使ってたよ?気配が判るはずないよ?
なんで?なんでっ?!ハワードパパは、何かわたしの知らない探知スキルでも持ってるのぉ??!!
「年頃の娘を持つ身としては、娘が夜な夜な出歩くなど見過ごす訳には行かんのだが…キミをどうにかできる相手が居るとも思えぬしな…。仮に居たとして、それは最早村の危機だ」
「あぅ…ぁあ」
…わたしは頭も目玉もグルグルになって行く!それでもハワードパパのお話は続いていた。
なんかね…、見つかってないと思ってたら、バッチリとパパに気付かれていたと言うコノ気まずさ恥ずかしさ?!
顔がスッゴイ熱くなって行く!も、パパのお顔が真っ直ぐ見れない!居たたまれないぃぃぃ!!
「それに時々、見回りもしてくれていたのだろう?」
「ぅえ?」
「時々居たのだよ、森の警戒網を抜け入り込む脅威値の高い魔獣が…。夜勤の者では対処が厳しい、もしくは発見が遅れて居た…。等がな」
「あ…、あぅあぅ」
視線が更に泳ぎまくる。
「だが直ぐに、何事も無かったように警戒が解かれる。翌日現場となった場所を探索すると、僅かな戦闘の痕跡が、それも一方的に終わった様な…力在るもののやり口だ。そんな現場が良く見つかってね」
「ぁ・・・それは、大変な、ことも、あるもの・・・です、ね?」
もぅーわたしには逃げ場が見えましぇんんーーっ!
「だがソレも何故か、何時もスージィが出かけた夜に討伐が済んでいるんだよ。不思議だろ?」
更にまたニコォォとパパが、爽やか素敵な笑顔を投げかけて来りゅっ!
許してぇ!もぅ許してくださいぃぃぃ!もう逃亡脱獄犯は逃げも隠れも致しませんからぁぁぁ!あゥん!
「ありがとう。君はずっとアムカムを守っていてくれたのだね」
ぅうえっ?!なにこれー!!ハワードパパがいきなり頭を下げてきた?!
不良娘の断罪をされるのでは無かったのぉぉーーー?!!
も、わたしホント訳わかんないんですけどぉーーーっ?!
「どうしてワシがキミの動きに気付いていたのか…。釈然としない顔をしているね?」
そりゃそーですわよ?普通に考えてあり得ないのですわよ?スキルを見破るスキル持って無きゃ絶対見えないんだもん!!!
「先程も言ったと思うが、普段のキミは存在が強いのだよ」
…存在が…強い?
「それがさっきまで在った筈の強いキミの気配がね、夜、唐突に消えるのだ」
「あ!」
バッチリ思い当たってしまった!
そだよね!『インヴィジブル』存在を丸っと隠しちゃうもんね!
それまで感じていた気配が、突然無くなったら居なくなったと思うよね!!
うあぁ~~~~~~っっ!気配さえ消せれば安心安心♪とか言ってた過去の自分を殴りてぇぇぇぇっっ!!!
「スージィの気配が消えた晩の翌日は、大抵君は新しい型の鍛練をしているしね。これは夜の内に何か掴んでいるのでは無いかと思っていたんだが…違ったかね?」
「あ…ぅ、い…いえ…、ぁう」
何でしょうかコノ、おっきな掌の上で得意になってるお猿さんになった様な気分はっ?!居たたまれないわぁぁ~~っっ!
「アンナメリーには、キミが時々夜に家を出る事もあると言い含めてある。彼女の事は気にしなくても良い」
「あ…、はい、ありがとう・・・ござい、ます」
「キミが、我々の眼の届かない所を見回ってくれている事は、護民団を纏めている者としては本当に有難いと思っている…。改めて礼を言わせておくれ、ありがとうスージィ」
「そ、そんな!あ、頭を上げて下さいハワードパパ!わたしは…そんな!!」
「しかしね…、娘を持つ親の身としては…、夜の外出は極力控えてくれると有難い」
「…あ、ハイ…。善処…いえ、控えさせて頂き、ます」
ですよねー!普通はこんな年頃の娘が夜出歩いてるとか判ってたら、父親なら止めますわよねー?
「ありがとう、スージィ」
そう言ってハワードパパは、わたしの頭をその大きな手で撫でてくれた。
大きなパパの手で撫でられると気持ち良くて フニュフニュ っとしてしまう。
ウン…ごめんにゃしゃい。これから成るべく控えまつぅー。
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「この度はおめでとうございます。スージィさん」
「ありがとう御座います、ヘンリー先生」
お昼を頂いた後、わたしは神殿のヘンリー先生の元を訪れた。
お借りしていた本をお返しするのと、幾つかの質問をしようと思ってお訪ねしたのだ。
「それで、本日は儀式成功の祈りを?」
「あ、はい、お祈りもそうですが。此方をお返しに寄らせて頂きました」
そう言って先生にお借りしていた本を差し出した。
「これはお役に立ちましたか?」
「はい、色々勉強位なりました。でも先生、勇者のお名前は、これには出ていないのですね?」
「ふむ、そうですね、これには名前は記されていませんからね…」
「名前が載っていないのは、何か理由があるのです、か?」
「…そうですね、此方の書は勇者伝説をまとめた、謂わば解説書と思って頂いて良いと思います。残念ですが、今私が所有している勇者関連の書籍で、スージィさんが読む事の出来るものはこれくらいしか無いのです」
つまり、この本は勇者伝のダイジェスト版って事かな?でも入門書としては良いチョイスなのではないかしら?
「かつては、分り易い勇者関連書籍も置いていたのですが…何分、アムカムの方々は『勇者』と云う言い回しは好まれませんので…」
と、先生は寂しそうな顔をされた。
へー、そうなんだ、『勇者』って単語、みんな好きじゃないんだ?知らなかったわ。
「今では手元にあるのは研究用の書籍ばかりで、少し難易度が高めなのです。元になった『勇者伝え』も全五巻からなるもので、原書は現代語では無いのです」
先生はそう言いながら本棚から一冊、分厚く古い本を取り出しパラパラとページをめくられた。 こういった文字は進学してから習う事になると思いますが… と、ヘンリー先生は続けて仰った。
なるほど、勇者が現れたのは今から200年も前だ。
封建制度が健在だった当時と今では文化形態も変わっている。
使用されていた文語体も違っていたんだろうな…。
当時の記録は古い文面で、きっと日本の…江戸時代の候文みたいな感じで書かれてるんだ。これは原文を読める様になるのは、まだ先になりそうだ。
あ、でも原書には名前は出てくるのかな?
「名前はこの本にも載っては居りません。なにぶん、勇者の情報は、その出自、名前も含め当時の王宮によって隠蔽されておりましたので、記録には残っていないのです」
あれ?それじゃ何で『勇者伝』とか残ってるんだろ?あー!あれか?政治的に都合の良い事だけ残すと言う、歴史にありがちなプロパガンダ的なヤツ?
先生も、そう云う事だと頷かれた。
それでも、どんなに隠蔽していたとしても、丁寧に一つずつ潰す様に探って行けば、自ずとその出自などは判る物だ…と。それが研究者なのだ。と先生はそれはそれは爽やかな笑顔で仰った。
「それに…スージィさんはもう『カノエ男爵』の事は習われたのでしょう?」
「あ、ハイ。2255年に、この国が民主化された時の、その時の活動の中心的な人物。そして、この人が勇者だと教わりました」
「そうです、『スズカ・クーストス・カノエ男爵』。この国の行く末を決めた女傑です。そして彼女こそが『暁の勇者』その人なのだと、たとえ嘗ての国家が隠していたとしても、この国の者ならば誰もが知る事実なのです」
をぉ!『勇者』のフルネームが判ってしまいましたよ?!しかも『女傑』!女性と云う事まで明らかに!!
ンでも、誰もが知る勇者なのに、教科書には僅かしか載っていないのは何でなんだろ?何か『曰くあり』なのかな?
まあ、名前しか載っていない時点で、そう云う事なんだろうけどね。
「そう言えば、勇者の墓所が王都にあるのはご存じですか?」
「え?墓所があるのですか?」
国家に秘匿されているのに王都に墓所?なんとも複雑な事情とかありそうでつね…。
「ありますよ、王都の国立墓地の一角に、その随行者の碑と共に並んでいますよ。王都でも人気のある観光スポットの一つですね」
あ、観光名所的な物なのね…はは。あれかな?元の世界の勝ウミフネさんとか坂本リュウウマさんとか、そな感じなのかな?
「尤も王都にある墓所は物は大きいのですが、元が記念碑の様な物なので、形だけの物ではありますね」
と、先生は少し困った様に仰った。あぁ、やっぱり歴史的偉人な扱い?逆賊だけど隠したいけど、民に人気があるから恩師公園に銅像立てちゃう…的な?
「本物のお墓は、更に南のマイウスに置かれています。ちょっと見てくる、という距離ではありませんが…」
「で、ですね…、あ、はは」
『マイウス』と云うのはデケンベルと同じ12都市の一つだ。
デケンベルとは王都を挟んでいて、やはり王都から1,500キロ以上離れた南方に在る。
片道3,000キロ超えとか…ね、もう、アウローラ共和王国縦断の旅ですわ!わたしが全力で走っても、簡単に行って帰って来れるとは思えないわよ!!
…ん?でも…あれ?
「?あ、あの『随行者』というのは?」
「『随行者』ですか?そうですね…、その存在は教科書には一切出て来ませんし、此方の研究書にも殆ど登場しません。精々協力者の一人。といった扱いですからね。…しかし、『随行者』についてはご存じありませんでしたか?」
あ…うーん…、聞いた事あったかなぁ?あった様な、無い様な?…うーむ、ワカラン!
「すいません、ちょっと分りません」
「そうですか…、アムカムには、少なからず随行者に関しての資料は在るので、多少なりともお聞きになった事があったかと思っていました」
「申し訳ありませんヘンリー先生、全く存じ上げませんでした」
「いえいえ、謝るのは私の方です。コチラの勝手な憶測ですので、スージィさんが謝られる事ではありませんよ」
そう言ってヘンリー先生は笑顔のまま、手に取っていた本を閉じて本棚に戻され、新しい本を探し始めた。
「『随行者』と云うのは、勇者と共にこの地へ訪れ、行動を共にし、支えとなり、共に戦ったと言われた者の事です」
そ!それは初めて知った!も、もう一人居たプレイヤー候補?!二人目の高レベル保持者?!!
「そ、その…方は、どうなった・・・のです、か?」
「『随行者』の記録は『勇者』以上に少ないのですよ。各地に僅かにその足跡を見つけられるのみなのです。恐らくこのアムカムに残っている物が、『随行者』の記録としては尤も数が多いのではないでしょうか…」
謎の随行者?!でも、国に隠匿されている勇者の記録を王都まで行って探るより、アムカムで『随行者』について調べる方が取敢えずの『勇者伝説調査』の成果は上がる…のかな?
「…スージィさんは、アムカムの森の中に在る『丘』の事はご存知ですか?」
「は?『丘』…です、か?どこの丘の事でしょうか?」
随行者の話からいきなり飛んだ?先生はどの丘の事を仰っているのだろう?
森の中って起伏に富んでるから、結構アッチコッチに丘とか谷とかあるんだよね…。
「森の入口より5キロを超えた先にある…、草木生い茂る森の中、そこだけ切り取られた様に開けた場所にある丘です。私も幾度か調査の為に連れて行って頂いているのですが…、発見されてから既に200年以上経っているそうですが、その在り様に変わりは無いそうです。そこは…我々研究者の間では『勇者の丘』と呼ばれています」
「い、いえ、存じません。『勇者の丘』ですか?初めて聞きます!」
「そこは僅か30メートル四方の在り来たりの丘です。しかし、不思議な事にその場所には結界でも張られているかの様に、魔獣が侵入して来ません」
「…そんな場所が?」
「我々はその場所を『勇者の丘』と呼んでいます、ですがそれは研究者が過去の記録を読み取り名付けているだけです」
ヘンリー先生は立ったまま、手に持っていた表紙の色褪せた本を閉じ、机の上へと労わる様に静かに置いた。
そしてそのままアウローラの山々を望める北の窓へ視線を向けられ、静かな面持ちで言葉を続けられた。
「ですが、アムカムの人々はその丘を、今も昔もこう呼ぶのです…、『嘆きの丘』、と」
まるでお祈りを捧げる時の様に、厳かな口調でそう仰った。
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お茶を頂いた後、また少し勇者伝説についてご講義を頂いてから、ヘンリー先生の神殿を後にした。
思った以上に収穫が多かった…て言うかぁ!情報量多すぎて整理が追い付いて無いわよ!
ウン、これはチョット情報整理して纏め上げておかないとね…。
ま、慌てる事でもないので、時間を見てユックリやって行こう。判らない事出て来たら、またヘンリー先生にお伺いすれば良いんだしね!
…それにしても『勇者の丘』…、いや『嘆きの丘』か…。
知らなかったなぁそんな所があるなんて。
30メートル位の広さで、開けて樹木が無い場所って言ってたっけ…?
そう言えば壱の詰所の北にそんな場所あったかも。
確か詰所から真っ直ぐに道が続いてた気がする…。
そうか、子供達だけだとセーフゾーンから先には行けなかったし、夜の見回りの時でも魔獣も出ないし、バトルポイントの一つだと思ってたから全く気にも留めて無かった…。
…でもそこが『勇者』と『随行者』の二人が出現した場所だった。
先生が行った探査魔法の調査では、地中に立体的な円形に組まれた石舞台のような何かがある事は解っているらしい。
地中に埋まったストーンヘンジって感じ?
如何にも何かを召喚しますよ!って、言ってるみたいだよね!
それにしても…。
森の木々も魔獣も近づかない開けた召喚場所…ね。
ガッツリと思い当たりまくりなんですけどぉ?!
その日わたしは、勇者たちとの間に思わぬ共通点があった事を初めて知ってしまった。
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そんな事を考えながら歩いていたら、もうお家の目の前だ。
思ってたよりもヘンリー先生の所に長居をしてしまった…、もう4時を回ってるかな?
アンナメリーが玄関前に立ってる。私を待っていたみたいだ。
心配されてたかな?ホントはもっと早く帰る予定だった物ね。
わたしを確認したアンナメリーがホッとした様に微笑んだ。
わたしもそれに笑顔で返す。
アンナメリーはわたしが玄関に付くより早くドアノブに手を伸ばし、玄関を開けてくれた。
ドアを開けてくれたアンナメリーにお礼を言って家の中に入ると、台所から食器の立てる音や水の音などがしていて、調理が始まろうとしている様子が窺えた。
危なかった間に合った!まだ夕食の支度は始まったばかりだ。
台所に入れば、エルローズさんが調理道具を並べ、ソニアママがわたしが持って来た角兎(寝かせ済み)のお肉を、捌く為に取り出した所だった。
ホントに危なかったわ!今まさにソニアママの手で食材が捌かれる寸前だったワケよ!
「あら、おかえりなさい、スージィ。そんなに急がなくて良かったのに。貴女はまだ休んでいて良いんですからね?」
「いえ!これはちゃんと調理してハワードパパに召し上がって頂きたいですから!わたしが、ちゃんと、やります!」
「…そう、そうね。スージィが作った方がハワードも喜ぶわね。いいわ、私は助手になってあげるからしっかりやりなさい。ね?」
「はい!ありがとうソニアママ!頑張ります!」
「それで、作るのは角兎のソテーで良いのかしら?」
「はい、ソテーはモモ肉を使います。それとアバラ周りの肉と根菜でスープを作ります。採って来たホド芋も使うので濃厚なスープになると思います」
「成る程。試練中に作ったお料理に手を入れるのね?」
「ハイ!ぜひ感想をお聞きしたいです!」
「ふふ、それは楽しそうだわ。ハワードもきっと喜ぶわ」
「頑張ります!」
調理は、ソニアママ、エルローズさんに手伝って頂いたので滞る事無く進められた。
途中、アンナメリーも手伝おうと何度も手を伸ばして来たけど、その度にエルローズさんに阻まれて、結局調理の片付け作業に終始してくれた。
なんだろ?彼女からは料理に関しては危険な香りがしてくるよ…。
まさか完璧超人だけど料理だけは壊滅的な…とか?そんなテンプレな?
…まさか、そんな、ねえ?
そんなこんなで出来上がったお料理は、概ね好評だった。
ハワードパパは旨い旨いと仰って、スープを何度もお代わりして下さった。
ソニアママからは ここでこの香辛料を使うのはおもしろいわね とか、お褒めの言葉も頂いた。
おかげ様で、程良い達成感に包まれ、食後のお茶を美味しく頂く事が出来たのだ。
その日の夜は、お風呂上りの寝る前に、お部屋でアンナメリーがマッサージをしてくれる事になった。
なんでも『魔力凝り』と云うのがあるそうで、魔力が多い人程凝り易く、定期的に解して上げないと、放って置くと自覚も無いので凝りが溜って大変な事になるらしい。
そんな話は初めて聞いたのだけれど…、マッサージは嫌いじゃないし、たまになら良いかな?と思ってやって貰う事にした。
で、やって貰ったワケなんですが…!コレがヤバい。メッチャ!ヤバいっ!!
気持ち良過ぎでしょコレ!
これダメよ…、ダメになるヤツだコレ!
ベッドにタオルを敷いて、その上でやって貰うオイルマッサージだったんだけど…、コレ気持ち良過ぎて癖になりますぅ!ヤバいっすぅぅっ!!
溶けました!溶けてタレスージィになりまつた!
一体何度昇天しかけ……ぃえ、何でもないでつぅ……。
勝手に声が出て恥ずかしかったから枕に顔埋めてたけど、絶対声漏れたよね…?
一部大変な事にもなってたし…ぁう。
さり気無く替えを置いて行ってくれてたから、やっぱ気付いてた…よね?
見ない振りが出来るって、やっぱりアンナメリーって大人だなぁ…。
定期的にやった方が良いと言う事なので、次は二週間後くらいだって。
それが楽しみの様な、コワイ様な…ぅぅ。
取敢えずその日は寝る前に、ベッドの中でいつも以上にモゾモゾしてしまったけれど…夢も見ないでグッスリと眠れて目覚めも良かったから、健康にはいいのか…な?
しかし、そんな安らかに快眠を貪っていたわたしの気付かぬ所で、事態は動きを見せていた。
その日の朝、まだ陽も昇らぬ時間。
騎士団の先駆けがアムカムハウスへ到着したとの知らせが、ハワードパパの元へ届いたのだ。
「スーちゃん、この人は?」
「侍女のアンナメリーです。お早う御座いますミア様」
「侍女…?ふーん…」
「ミ、ミア?なんでそんなにシッカリ抱える様に抱き付いてるの?」
「侍女さんなんだ…」
「それではミア様、お嬢様をよろしくお願い致しますね?」
「ミア?な、何か力が入って無い?」
「……スーちゃんは、わたしのなんですけど」
「え、えっと、ミア?力が…」
「少しの間、お嬢様をお願いしますね?」
「スーちゃんは、わたしのなんですけど?」
「あの…ミア?う、埋まる、埋まるよ?」
「少しの間だけ、お願いしますね?」
「わたしのなんですけど!」
「ミア……?」
「少しの間だけ、お預けしますから…ね?」
「わたしのですから!!」
「え、えと?ミア?」
次回「メリディエスの特使」
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申し訳ありません!持ち弾尽きました!!連投はココまでにございます;;
また5~6話貯まりましたら投稿始めますので、その時またよろしくお願い致します<m(__)m>





