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04話 スージィ今後の方針を考える

     -**--*--**--*--**--*--**--*-


「ですからね、現代人は皆ガチガチに身体固まってるんですけど、先輩はより一層固まってますから」

「むぅ、そうなのか?」

「見てくださいよ、この足! こんな揺すってるのに足首全く揺れないでしょ? 固まったままです」

「皆、こんなもんじゃないの?」

「普通は多少なりとも動きますから」

「むむぅ」

「凝り固まってるって言うのは無意識に力を入れ続けてるって事ですから。どれだけ普段から無駄にエネルギーを消費しているか自覚するところから始めて下さい」

「そんな自覚は全く無い!」

「まあ不自然な姿勢で無理な動きを続けて来た結果ですから。悪い癖は自覚しないと直しようがありませんからね」

「不自然な姿勢とかそんなにしてたかなぁ? 普通に暮らしてきたつもりだけど…」

「あれです、現代人はもう子供の頃に固まり始めてますから。小学校に入るとやる『気を付け』『前へならえ』あれ最悪ですね。あれで力入れて立つ癖が付いてしまう」

「うえ! そうなの? 誰でもやってたじゃん!」

「だから現代人皆ガチガチなんですよ。師匠も言ってました。『現代人でロクに立ってるヤツ、歩けてるヤツは殆ど居ない』って」

「うはぁ・・・達人目線で世間ってどう見えてんだよ?」

「だから先輩もまずはこの足ほぐすトコから始めましょう」

「くうぅ…先が長そうだぁ……」


     -**--*--**--*--**--*--**--*-



…何だか懐かしい夢を…見たな…。


 7年ほど前、職場で同じチームで一緒になった1年後輩。

 何かと馬が合ってプロジェクトが終わった後もよくつるんでいた。


 何でも古武術の凄い先生の弟子をしているらしく、よく武術関連の話を教えて貰っていた。

 色んな武術の先生の公演とかも連れられたりして、仕事以外の時間も一緒に過ごす事が多かった。


 明け方のまどろみの中、そんな事を思い出していた………。




 結局その日はその滝壺の河原で一晩過ごした。


 昼過ぎからの時間は一体何に使っていたのか?は言わずもがな。


 人知を超えた体力と回復力は、新たなる扉を開く鍵となったのかもしれない。


 それでも見知らぬ場所で、初めての野宿を服も着ないで過すなど勧められる行為ではない。

  明け方に恥じ入ったように起きだしては水浴びをしていたが、テントに戻るとモゾモゾと蠢き、何度も水浴びをし直しているのだから、余り反省は無いのだろう。


 野営には持って居たアイテムが役に立った。

 インベントリ内のクエストアイテムだ。

 ゲーム時には取り出すことが出来なかった物だが、今は取り出して使う事も出来る様だ。


 昨晩はそのクエアイテムにあった『一人用簡易テント』と『村人の毛布』、それに動物の毛皮を取出して利用した。

 食事は持っていた回復アイテム(少量のHPを回復するなど)の『マムのサーモンシチュー』があったのでそれを食べてみた……が。


 『とても不味い』らしい。

 とにかく味が薄くて殆ど無いのだ。


 他にも色々と食糧になりそうな回復アイテムはあるのだが、どれもこれも味がほとんど無い。


 食べられない訳ではないのだが、自分から手を伸ばして食べたいと思うものではない。


 食事は空腹感が限界になるまで我慢しよう……と思うスージィだった。



 装備品も、ギルド倉庫から低いレベルの物を取り出した。


 ゲームに於いて、装備品は基本11段階のランク分けがされていた。


 ゲームを始めたばかりで、職に就く前の初心者レベルが使う『ゼロランク』

 最初の職に就く事で使えるようになる『D・Cランク』

 その後、専門職へと進んでから装備できる『B・Aランク』

 更にその先、専門特化型へと進化後に使える『S・SSランク』

 そして、人を越え神域へと神化した者が使える『Gゼロ・G1・G2・G3ランク』


 スージィが装備していたのはGゼロの上位、ネメシスデュアルソードとオラクル重鎧だ。


 だがそれも、ゲーム内ではハッキリ言って雑魚装備である。


 それでもこの地では、かなりのオーバースペックの様だ。


 今スージィはAランクの装備を身に着けていた。

 漆黒のプレートアーマーに白銀に輝く2刀、マントは無い。

 剣は幅広で、刃の腹に細かい装飾がされているが武骨な物だ。


「これで取敢えず様子見かな? エンチャは無しでいってみよ。危なそうだったら装備戻せば良いしね!」


 元々ギルド倉庫には各ランク、各職用の装備を、サブキャラ育成用にとセットごとに保管していた。

 今回は、高すぎず低すぎずの装備を見繕い、取り出したのだ。



「昨日散らばってたMobも、今日になって随分戻って来たな」


 探索を使い、今の周りの状況を確認してみる。

 すると、直ぐにスッと右上方に向け顔を上げた。

 飛行しているMobが、右方向から左方向へ移動しているのが視認出来た。


「昨日は見なかった飛行型のMobか……『グレイ・ワイバーン』ね。距離、推定90メートルってとこかな?」


 ハァァァァッッ!!と気合と共に『気』を武器に籠める。


「やっぱり遠距離への初撃はコレだよね! ゲームでは射程は精々15メートルってとこだったけど、ココでは何か届きそうな気がすんだよな!」


 そう言うと左腕を突出し、右手を顔の高さに合わせ腰を落とした。

 二刀の剣先を標的に向け叫ぶ。


「狙い撃つぜっっ!!!」


≪インパクト・ブラスター≫

 溜めた剣気を飛ばし、遠距離の敵を攻撃する。

 近接アタッカー『デュエルバーバリアン』のスキルだ。


 剣先から放たれ可視となった衝撃が、音速を超え白い光を放ちながら標的に向かう。


 標的と白い光が交差する。

 一瞬後、それは爆ぜて散った。


 一拍遅れて何か重い物が弾ける様な鈍い破裂音が響いて来る。





「……………汚ねぇ花火だ」


 言っちゃったよ。







「結論! この辺のMobは雑魚い!!」


 結論づけた。


 一筋二筋、頬に汗を垂らせながら。


「やはり、もうちょい強い相手探さないとダメだよなっ!」


 と目の上に手を置いて、キョロキョロと遠方を見る様なポーズを取って見た。


「こんなん見ても樹木しか見えないしなぁ……。どっかにもっと高台でもなかろかね? いっそあそこまで行けば、ココよりずっと強いのは居そうなんだけどねー」


 北側に聳える、白い壁の様な雪の山脈を眺めて独りごちた。


「標高どんくらいあんだろ? エベレストぐらいあんのかな? 行った事無いからワカンナイけどね! 8000メートルとかだっけ? あの上から世界を見下ろすってのもいいかもねー」


 左手を腰に当て、右手でポリポリとこめかみを掻きながら……。


「……いっそ跳んでみるか?」


 と、何か思いついた様に呟いた。


「ジャンプポイントは無いけど、普通に跳び上がるくらいは出来ちゃう気がすんだよなー」


 ゲーム内に於いて『神化』が済んだキャラクターは、決められたジャンプポイントから跳び上がれば、任意の場所へ飛んで渡れると云う移動手段を持っていた……のだが、ここにはジャンプポイントは無い。


「でも跳び上がるだけならできるよね? 全力で跳ぶ、とかまだやってないし……。やれそうな事は取敢えず試してみる! ってのがゲームを楽しむコツだもんなっ!」


 そう言うとグッと力を貯める様に屈み込んだ。


「どぉっっっせぃっっっっ!!!」


 大地を蹴ったその瞬間、その地が大きく陥没した。


 抉れる地面に根を引かれ、周りの樹木が倒れ込もうとするが、次に起きた衝撃波の広がりにより、勢いよく外側へ薙ぎ倒されて行った。

 轟音を辺りへ響かせ大地を蹴ったその者は、既に遥か上空に居た。


「うおほっとっと……コレ、た高くね?4~50メートルは昇ってるよね?」


 風が吹き結ぶ空の中、周りを見渡し自らの跳躍力に驚いている。


「2~3メートルも飛べればと思ってたけど……これは?! 60位行ったか?! タワーマンションとかからの眺めだよなコレ! 登った事無いけどさっ!!!」


 やがて跳躍の到達点に達し、地平の彼方をその目で確認出来た。


「うあああ! 北の山脈以外地平線まで森が続いてるじゃん! この森、関東平野くらいあんじゃね? 樹海っちうか、もうコレ樹()()だろ!! で、でも南はちょっとだけ森が薄い……のかな?」


 やがてその身がユックリと下降をし始めた。


「お? をお? お! お落ちる! けど! けど! 平気……だよね!? ゆ夢だもんダイジブだよねっ! うおっほぉぉぉぉぉ!!!」


 そのままズシリと大地に重い振動を響かせて、土煙を上げながら着地した。


「ビ、ビックリしたぁぁ! へ平気だったぁぁ! さすが夢! あぁぁビビッたぁぁ! 夢でよかったぁぁぁぁ!!」


 クレーターを作りながらも綺麗に両脚で着地した。

 その後ペタリと両手を突いて四つん這いになり、悲痛な叫びを上げた。



「さて、思った以上に周りの状況が把握出来た訳だが……どしましょうかね?」


 だが直ぐにスクッと気を取り直した様に立ち上がり、腰に手を当てながら周りを見渡してみた。


「南の先に人が居そうなのは、何となく感じた……。ゲームを進めるなら人里に降りて、情報収集ってのがセオリーだけど、でも南には明らかにココより強いのは居ないんだよなぁ……。だけどあの山の方には、何となく何か居る気がすんだよねぇ……、何となくだけど。いずれ人里を拠点にするのは必須として、どうルート取りをするか……だね」



 指を折りながら考えてみた。


「一旦人里に降り準備を整えてから山に向かい、探索の後人里へ戻る」


「このまま山へ向かい探索の後、人里を目指す」


「森を切り開きここに生活の場を作る……無いワぁ」


 腕を組んで山を見ながら思考する。


「山へ行くとして準備ってなんだ? 森を抜け山に入る為の装備品や食料か? 装備は持ち前の物で何とかなりそうだよな。食料も……贅沢さえ言わなければ……ね。一旦森を出て、それから改めてこの樹深海を往復ってのも、考えると結構ウンザリかなぁ……?」


 山脈に向けて顔を上げた。


「よし! 決めた!」


 北方向へその身を進める。


「まずは山を探索! それから南へ向かう」


 人差し指を立て口元に当て、なにやら考えているようだ。


「取敢えず水くらいは持って行かないとな。水場に行って水汲んで……準備して。……色々……して、……それから……かな? ……ねぇ?」


 トトトっと、何故だか薄らと頬に赤味を帯びながら、小走りに水場へ向かって行った。


「ウン、まずはして……から……だね」


 ナニかしてから出発するらしい。

7/4 修正しました。

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第1巻発売予告
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― 新着の感想 ―
[一言] 「やはり、もうちょい強い相手探さないとダメだよなっ!」 何のために強い敵を探すのかな?目的がよく分からない。
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