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【コミックス発売中!】女キャラで異世界転移してチートっぽいけど雑魚キャラなので目立たず平和な庶民を目指します!  作者: TA☆KA
幕間

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幕間9 雨の日の夢見はヤバイぜ

本日、コミックス第2巻発売です!

皆様何卒よしなに!!

「アンタまた盗んできたの?!」


 シトシトと降り続く雨を避け、薄暗い路地裏の隙間だらけの軒下でパンを齧っていると、うるせぇ声が辺りにひびき渡った。

 まためんどくさい奴に見つかっちまった。


「なんだよ、みんな腹減らしてんだ。もんくねぇだろ」


 オレの周りでは、腹を減らしたチビどもがやはり軒下でパンの欠片にかじりついている。

 3日ぶりの食い物だ。邪魔されたくねぇ。


「あるわよ! アンタそんな事ばっかりしてたら、いつかひどい目にあっちゃうんだからね!」

「別に捕まるようなヘマしねぇし」


 かっぱらったのは、焼き立てでもなけりゃ売れ筋のパンでもない。

 売れ残りの硬くなってカビが生えそうになってるヤツばっかりだ。

 少しくらいカビが生えてても、オレ達なら問題ない。

 パン屋だっていちいち目くじら立てて、追い掛け回したりしねぇ。

 マジで追い掛け回されるような品なんざ、わざわざ盗んでられねぇっての。


「いま平気だって、いつどうなるかなんて分かんないんだから!」

「平気だって、うるっせぇなぁ」


「あ! バカ逃げるな!」


 手に持っていたパンのカケラを急いで口に放り込み、雨の中軒下から出て、走ってその場から離れた。


 この辺りでは1番歳上のこの女は、チビ共の面倒見がいいので慕われちゃいるが、口煩いのがたまらない。

 特にオレに対する小言がとにかく多い。

 一番年上だって言っても、まだ10かそこらだ。

 オレとそんなに変わらないって言ってやっても、自分の方がひとつ上だとムキになって声を上げる。

 歳なんて、そんなムキになるとこかよ?


 そんなんで、顔を合わせりゃ必ず何か言って来る。

 人の物を、盗むな騙すな殴るな。そんなんじゃ長生き出来ない。真っ当な生き方を見つけろ……とかなんとか。

 こんなスラムのガキに何言ってんだろうな。大体にして金持ってる奴からしか、盗らねぇし殴らねえし騙さねぇ。

 それに真っ当な生き方出来るのは、真っ当に生まれ育った奴らだけだ。

 真っ当じゃない俺達が、真っ当に生きられるワケがない。

 そんな事を言うコイツの頭の方が心配だ。

 このスラムでそんな事言ってたら、あっと言う間に大人の餌食になっちまうって分かんねぇのかな?




 そんなある日、オレはしこたま大人たちに殴られる事になった。

 オレには分かってた。

 ココでコイツらの気の済むまで殴られていた方が良い。

 下手に逆らったり逃げたりすれば、オレを殺すまで追い詰めて来る。


 腹を蹴られ、何にも入っていないハズの胃から苦い液が何度も出た。

 歯が何本か折れて、口の中は血だらけだ。

 目が腫れあがって右側が良く見えねぇ。

 コリャしばらくは足腰立たねぇな。だけど死ぬ事まではない筈だ。


「や、やめて――――ッッ!!」


 突然、オレと男たちの間に小さな影が割って入って来た。

 このクソバカ!


「やめて! やめてよ死んじゃう! 死んじゃうからッ!」


 小さい身体で甲高い声を上げ、オレを蹴ろうとした男の脚にしがみ付いている。

 何バカな事やってんだ! とっとと逃げろ!


「なんだこのガキャ?!」

「ひギッッ!!」


 案の定蹴り飛ばされて壁に叩き付けられた。

 だから余計な事してくんなって言ったじゃねぇか!


「このガキ! ナニ邪魔してくれてんだ!」

「……ぁう」


「お? こいつ女か?」

「は、離してぇ……」


 クズの1人がアイツの髪を掴んで持ち上げ、顔を確かめている。


「薄汚れてっけど、見てくれはどうなんだ?」

「ぅん? 使えなくもねぇか?」

「よし! じゃ適当に遊んで売り飛ばすか!」


 クソが!!

 オレは靴の底に仕込んでいた金属製の板を、踵から引きずり出した。

 見た目は悪いが、これはオレが金属の板切れの切れ端を砥いで作ったナイフ擬きだ。


 アイツに夢中になってるから、クズ共はオレに気付いていない。

 身体を低くして連中の間を潜り抜け、アイツの髪を掴んでるヤツの手の甲に、このナイフ擬きを思い切りブっ刺した。


「ぎゃぁああぁぁ――――っっ!!」


 奴が情けない声を上げ、アイツの髪を離した。

 オレは直ぐにアイツの身体を抱えて、路地の更に奥へと走り抜ける。

 この路地を抜ける前に、積み上がっていた木箱を蹴り倒すのは忘れない!

 少しはガタイがでかいだけの奴らの足止めにはなる。


 路地の先はレンガ壁で行き止まりだが、角に置いてある大樽の陰に小さな裂け目が開いていて、オレ達くらいの子供の身体なら壁の向こうに通り抜けられる。

 連中が罵声を上げて、直ぐそこまで追いかけて来てるのが分かる。

 オレは急いでコイツを裂けめ中へ押し込んだ。


 そこで奴が路地の角から顔を出した。左右をキョロキョロと睨みつけ、こちらを見つけた。


「居やがったなクソガキがぁあぁぁーーーっっ!!」


 目を血走らせてオレに向かって走って来る。右手からは血をボタボタした垂らし、左手には鉈みたいな大型のナイフを持っていた。


「ソコは行き止まりだクソガキぃぃ! メッチャメチャにしてやる! クソみそにブっ殺してやっからなぁッッ!!」


 奴が来るのを大人しく待ってるつもりは無い。

 オレもそのまま樽の後ろの割れ目に急いで飛び込んだ。

 壁の先に居たアイツを引っぱり、急いでその場を離れていく。


 レンガ壁の向こうから、ガンガンと壁をぶっ叩く音と、口汚く罵る声が響いて来る。

 そんな物騒な場所から離れ、安全地帯に向かいオレ達二人はスラムの路地を奥へ奥へと走った。



「アンタ、ちー坊の代わりに殴られたんだって?」

「知らねぇよ」


「ちー坊、泣きながらあたしのトコに来たんだから! アンタが自分の代わりに蹴られてるって」


 ちびガキが目の前で蹴られた。

 オマケに、ワザとぶつかったと言いがかりを付けて、更に蹴り飛ばした。


「進む先にでくの棒が突っ立ってたから、いつの間にかソイツにぶつかってただけだ」


 あのクズ共は、ただ無抵抗のガキを(いたぶ)りたかっただけだ。

 理由なんかどうでも良い。ガキがそこに居るから、気が済むまで蹴り飛ばしたいだけのクズだ。


「危ない奴らに、自分から喧嘩売るような真似しないでって言ってるの!」

「その危ない奴らに飛びかかるヤツがいるかよ!」


「アンタが死んじゃうって思ったんだもん!」

「死なねぇよ!」


 信じられねぇこのバカ!

 普段は「物を考えろ」とか「もっと慎重に行動しろ」とか口うるさく言うくせに、何でいきなりこんなバカになるんだ?!

 だけどもうどうでも良い。もうココには居られない。


「オレはこれからこの街を出る」

「……え?」


「アイツらは執念深い。きっとオレの事を殺さなきゃ気が済まない」

「そんな……そんな……い、一体、どこに行こうっていうのよ?!」


「南へ向かう。荷馬車に紛れ込めば何とかなる」

「でも、でも……そんな」


「お前もチビ共連れて神殿へ行け」

「え?」


「魔力が扱えるお前なら、神殿は面倒見てくれる。そうすりゃチビ共だって、神殿の施設に入れてもらえるはずだ」

「ま、魔力って……。何でアンタそんな事知ってるの?」


「お前よく手を光らせてるじゃないか。あれ魔力の光だろ?」

「アンタ……見えるんだ」


「? あんな光らせてたら、ふつう見えるだろ」

「……そう、なんだ」


「いいか、直ぐにチビ共集めて神殿に向かえよ」

「でも……でも」


「暗くなる前に、明るいうちに行け」

「でも……、でもアンタは?!」


「オレはもう行く。お前らは大通りを使え。人通りの少ない道は使うな」

「……も、もう会えないの?」


「死んだらもう会えねぇだろ? だから逃げる」

「……う、うん」


「生きてたら、どっかでまた会えるさ」

「うん、絶対……、絶対だからね!」


「ああ! じゃあな!」

「絶対だからね! ジュール・ナール!!」



 ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇



 意識が眠りの底から浮かんでくると、バタバタという細かな音がそれを迎えてくれる。

 軒先を叩く雨の音で、ようやく目が覚めて来た。

 昨夜窓を閉め忘れたからか、雨の雫が窓の淵に当たり、床まで少し濡らしている。

 部屋の中がちょっとばかり湿っぽい。


「ヘックシッ!!」


 畜生め、起き抜けのくしゃみで完全に目が覚めた。


「………………」


 それにしてもおかしな夢を見たもんだ。

 随分とガキの頃の事だと思うが、今じゃ殆ど覚えちゃいない。

 そんな事あったなぁ……と、鼻をすすりボンヤリと今見た夢を思い出す。


 何だってこんな夢を見たのやら。

 最近ちょくちょく、奥のスラムに足を運んでいたからか?

 あのスラムの臭いが、どうでも良い記憶を呼び起こしたのかもしれねぇ。


 そういや、その次に会ったのは……10年位してからだったか?

 まあ、もういない奴の事だしな。


「今更……どうだって良いさ」


 硬いベットから起き出し窓まで行き、全然健やかじゃない目覚めをくれた空を見上げてみる。

 雨はまだ降っちゃいるが、東の空からは陽の光が射している。これなら小一時間で雨も上がるな。

 宿の食堂で遅い朝飯を頼めば「とっくに昼の仕込みに入ってんだよ!」と親父にキレられるが、まあいつもの事だ。


 ゆっくり朝飯を済ませた頃、それに合わせたように雨も上がった。

 約束の時間にちょいと早いが、早めに出ておこう。

 今日はお嬢とアデルを引き合わせる手筈になってるからな。


 アデルには前もって、もてなす気構えでいるよう言ってあるが、一応念を入れる為だ。

 下手な扱いされたら、あのおっかねぇメイドに何されるか分かったもんじゃない。


 そういやお嬢には、下町でのデケンベルの名物料理を紹介するよう言われてたな。

 前に教えた麺の店は、いたくお気に召したようで他にも無いかとのご所望だ。


 ……そうだな、俺がよく行く店の煮物料理とか紹介してみるか?

 良く分からんが、確かアレも歴史がある風な事言ってた筈。

 ちょいとばかり刺激を感じる料理だが、女子供にも評判が良いらしいからな。


 さてさて、今日も何事もなく済んでくれるかね。

申し訳ございません。またも主人公不在回です。

多分4章はこいつがメインになりそうで、いっそのこと番外編にしてしまおうか未だに悩み中(;´Д`A ```


やっぱ気に入ってますわコイツの事(笑

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第1巻発売予告
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― 新着の感想 ―
ついに第4章が来ます。とても楽しみです。
サブキャラたちにも様々な過去が有り現在がある ジュール・ナールの過去は哀しいですね 本編が比較的スージィを中心としてハッピーエンドで終わることが多いだけに、サブキャラたちの不遇っぷりが余計に哀しくなり…
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