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162話 バウンサー

 そこら中から、ジロジロと不躾な視線が投げ掛けられる。

 ここは、如何にもと言いたげな見るからに場末の酒場の中だ。

 そんな場所に似つかわしく無いのはわかっている。

 なんと言っても、こんな可憐な乙女が連れ立って来る場所では無いワケで。


 もっとも今は、ミリアの制服やドレスとかの女の子らしい装いでいるわけでは無い。

 森へ探索に入る時の革の軽装備を身に纏っているのだ。

 言わばわたし達の戦闘服な訳だから、こんな場所でも浮いてはいない筈!

 それでも!こんな美少女達が揃って歩けば、目立ってしまうのは必然かもしれない。


 なにしろ、辺りにいるのは右を向いても左を見ても、どいつもこいつもむくつけき野郎共ばかり!

 ン?女性も居ることはいるのか?……何人か女の人いるよね?


 女性がこんな粗野な所に居て平気なのか?

 実際ココ臭いし!

 ホントにお酒の匂いと野郎の匂いで、むさっ苦しい事この上ないのだ。


 そんな中を良い匂いを振りまく美少女達が歩いていたら、そりゃ人目も引いちゃうってものよね!


「よう、来るとこ間違っちゃいねぇか?此処はお嬢ちゃん達が来る様な場所じゃねぇぜ?」


 通り過ぎた丸いスタンディングテーブルに肘を付いた男が、ニヤニヤとしながら言葉をかけて来た。


「悪い事ぁ言わねぇ。コッチ来て俺の相手すりゃ、イイ目見させてやるぜ」


 おぉっと!来ちゃいましたかテンプレ台詞!

 冒険者組合は想像したのと違ってたから、ついぞ出会えなかったけど!こんな所で来ちゃいましたかー!

 いやいやぁーー、参っちゃったなぁ!


「何でアンタ嬉しそうな顔してんのよ?!」

「え?してない、しぃ?」

「ホント、凄いワクワク顔だよ?」

「そ、そんな事は、無いと思う、けどぉ?」


 うにゅう!顔が勝手にニヤケている?!

 イカンいかん!クールに行こうぜクールに!

 わたしはイケてるクールビューティー!!





 でだ、何でわたし達がこんな場末の酒場へ来ているかといえば……。

 話は一日前、昨日の週末の午後に戻る。

 あれよあれよという間にドレスの採寸を済ませた後に行ったのは、クゥ・エメルさんが待つ冒険者組合。

 そこでは専門部署(スペシャリスト)、『用心棒(バウンサー)』について簡単な説明をしてくれた。


「『用心棒(バウンサー)協会』は、対象の警護や危険生物の排除などを請け負っている組織で御座います」


 それはひょっとして、アムカムのチームがアムカムの外で請け負っている仕事の事ではないでしょうか?

 なるほど?


「アムカムのチームはアムカム外で活動する場合、この冒険者組合を通じてバウンサー協会から仕事を請け負う必要があるのよ!」


 と、ビビが補足で説明を入れてくれる。

 なんでもその昔、アムカムと国とが取り決めた約定なのだとか。


 そういえば「国との約定」という言葉、時々ハワードパパは口にされていたな。

 込み入った話はお聞きした事はなかったけど、国とアムカムは相互互助の関係にあるとは聞いていた。

 アムカムの特殊性故の決め事なのだとも。

 ハワードパパは「全てはイロシオと共に生きるアムカムの為」と仰っていた。


 でも、バウンサーの事は知らなかったな。もっと早く教えてくれてもいいのに!


「だってアンタ、最初から『冒険者組合』の事分かってるような顔してたじゃない!」

「ぅ……そ、そりは」

「途中で首をかしげてる風だったけど、何も聞いてこなかったから良いのかなぁ?ってビビちゃんと話してたんだよ?」

「とりあえずは、何か聞いてくるまでは泳がせる事にしたのよ!」

「くぅ!!」


 も、弄ばれていた?!

 ビビもミアも、口元がニヨニヨしてるよ!チクソーー!

 そもそもが冒険者組合という単語でのぼせてしまった自分のせいかと思うと、悔しいやら恥ずかしいやらで……。コンチクソーー!

 冒険者組合の罠が、こんなところにまで地味に効いているという事か?!くぅぅぅ!!


 そんなわたしの内面での悶えなど知りようも無いクゥ・エメルさんが、バウンサー協会に登録するにはまず冒険者組合で、専門部署の仕事を受けられるDランクの一般会員になる必要があったのだと更に説明を続けられた。

 だからビビは、早くランクアップしなくてはと急かしていたそうな。


 更にクゥ・エメルさんは、登録に必要な書類まで用意してくれていた。


 まずは、Dランクである事を示す証明書類。

 身元が確かな物だと言う組合からの紹介状。

 そしてその身分を証明する物が必要なのだとか。

 本来は市民表などを提出するらしいのだけど、わたし達はミリアの生徒手帳を提示すれば済むらしい。

 この、ミリアキャステルアイ寄宿学校の生徒手帳には、それだけの社会的な信用があるのだそうな。

 そう言えばこの冒険者組合の登録も、生徒手帳の提示だけで済んでたんだっけね。


「では此方の書類を先方の事務所にお持ちください。入り口は通りに面した此方と、それと…………」


 クゥ・エメルさんは纏めてくれた書類を手渡してくれると、カウンターに出した地図を差しながら、バウンサー協会の場所を教えてくれた。

 協会はどうやら市民街の方にあるらしい。


「受け付け時には、簡単な身体能力検査があると思います。当日は身軽な服装でおいで下さい」


 そんなこんなで日付が変わった今日、3人でバウンサー協会へと繰り出して来たわけなのだ。

お読み頂き、ありがとうございます。


ブクマ、ご評価もありがとうございます!いつも励みになっております!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 雑魚をワンパンで沈めれば身体能力検査パスできる説
[良い点] すごく盛り上がりそうなところで終わっちゃった! 続きがすごく気になる。。。好き! [一言] いつも楽しく読ませていただいてます。
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