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食、住の次・・

 快適だった。みんなに建ててもらった新しい家は予想を越えてものすごく快適だった。中は三畳と狭かったが、木で出来た作りは、やはり段ボールにはない確たる安定感と安心感があった。しかし・・、

「どうしたんだ?」

 僕はインテリさんの下にいた。

「いやなんか家ができるとなんか・・」

「うん」

「あの・・」

「うん」

「空間的余剰にですね」

「うん」

「そこはかとなく、こう寂しさが込み上げて来てですね・・」

「うん」

「そこにに、家具とかなんとかあると・・」

「ああなるほどね」

 インテリさんはすぐに了解すると、以前炊き出しを教えてくれた時のように、一人スタスタと歩き出した。僕はその後について行った。

「ここからいくらでも選びな」

「おおっ」

 辿り着いたのは町の外れにある粗大ごみ置き場だった。

「大抵の物はここで手に入るぞ」

「す、すごい」

 確かになんでもあった。タンス、棚、ソファ、ベッド、生活に必要な物は大概のものがあった。しかも、どれもびっくりするぐらいきれいだった。

「こんなにきれいなのに捨てるんですか」

「ああ、世の中には景気のいい奴がいるんだよ」

「はあ・・」

 その現実に少しへこみながら、僕はとりあえず、小さな折り畳みのテーブルと、別に何の持ち物の無かったのだが、小さなカラーボックスを拾った。それを家に持ち帰り設置すると、まるで見違えるように、立派な部屋らしくなった。

「あの・・」

「どうした。まだなんか不満か」

「食、住はなんとかなりました・・」

「うん」

「やっぱり、一番頭の衣が重要ではないかと・・、思い始めたわけで・・」

「要するに、服がほしいんだな・・」

「はい・・」

「分かった。ついてきな」

「はい」

 インテリさんは、再び歩き出した。僕は再びその後をついて行く。

 インテリさんについていくと、今度は小さな倉庫のようなところに辿り着いた。インテリさんは扉を開け、その中に勝手に入って行く。

「やあっ」

「あらっ」

 中に入ると女性がいた。その人にインテリさんは親し気に声をかける。その女性は驚くほど目鼻立ちのはっきりとしたものすごい美人だった。しかし、頭の毛は真っ白だった。そのギャップに驚く。顔だけ見ると、そんな年にも見えない。

「この子が服が欲しいって」

 インテリさんが、僕の方を手で示すと、その女性のまつ毛の長い大きな目が僕を見る。

「どうぞ。好きなの選んで」

 女性は笑顔で倉庫に積んである荷物を見回して言った。

「えっ」

 僕も倉庫を見回す。そこには段ボールの箱が山のように積み上がっている。

「これ・・」

 よく見ると、開いている段ボールもあり、そこから服がはみ出ている。

「これ全部、服・・?」

「ふふふっ、冗談。ここはまだ整理できてないから、奥に行きましょ」

 戸惑う僕をからかうように女性は笑うと、僕を導くように奥の部屋に向かって歩き出した。女性の後について、その奥にある部屋に入ると、そこには所狭しと服やらタオルやら布団やらが並んでいた。

「これ・・」

 僕はその光景に驚きそこを見回す。

「好きなの選んで」

 女性は、気軽に笑顔で言う。

「・・・」

 そこにはあまりにもたくさんの衣類があった。

「男物はこっちかな」

 女性は奥の方を手で差し示した。

「これはいったい・・」

「全国から送られてくる支援物資だよ」

 インテリさんが僕の後ろから言った。

「支援物資?えっ、全国から・・?」

「そう、この人はそういう活動をしている人なんだ」

 インテリさんは女性を見て言った。女性は微笑む。

「支援活動?」

「NGOだよ。ボランティア団体さ」

「なるほど、そういうこともやっている人がいるのか・・、食べ物とかだけじゃないんですね」

「そう、色んな支援活動があるんだ。衣類なんかも生活には大事だからね」

「なるほど」

「この支援団体の代表やってる奥田さんだ」

 インテリさんがあらためてその女性を僕に紹介する。

「よろしく」

 奥田さんが右手を上げて指をヒラヒラさせて微笑む。

「あ、はい」

 僕も頭を下げる。

「さあ、好きなの選べよ」

 インテリさんが言った。

「はい」

 僕はさっそく服を見ていった。

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