表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/98

生い立ち

「私・・」

 小百合ちゃんは、言い難そうに口を開いた。

「私は、里子なんです」

「えっ、里子?」

「はい・・」

 小百合ちゃんは、そこで伏し目がちに視線を落とした。

「そうだったのか・・」

 そんな複雑な事情があったのか。

「でも、里子ってことは・・」

 ということは、あの強烈なおばさんとは血は繋がっていないのか・・。良かった。

「良かった」

 僕は、ほっとした。

「えっ?」

 小百合ちゃんが顔を上げる。

「い、いや、な、なんでもない」

「私・・、孤児なんです」

「孤児・・」 

「私はこの教会の前に、捨てられていたんです。新聞紙にくるまれて・・」

「新聞紙・・」

「それを、牧師様がここまで育ててくれたんです」

「そうだったのか・・」

 そんな悲しい生い立ちがあったなんて・・。

「だから・・」

 そうか、それで全然似ていなかったのか・・。なんだか悪いことを言ってしまった気がして、僕は激しい自己嫌悪に陥った。

「私・・」

 小百合ちゃんは、悲しそうに俯いた。

「ごめん・・、なんか・・」 

「いいんです」

 そう言いながらも、小百合ちゃんは何とも言えない悲しそうな表情で僕を見る。

「・・・」

 軽薄な人生を歩んできた僕には、彼女のその苦しみを推し量ることすらが出来なかった。

「お父さんとかお母さんの手がかりとか何もないの」

「はい、手紙も何もなくて・・」

「そうなのか・・、全く分からないんだね」

「はい、どこの誰かも全く分からないんです」

「そうか・・」

 しかし、僕にはどうしてやることもできない。自分の無力さに情けなくなった。でも彼女の力になってあげたい。それは強く思った。

「僕に力になれることがあったら、なんでもするよ」

 僕は力強く言った。そんな僕を小百合ちゃんが見上げる。

「なんでも言ってよ。僕にできることならなんでもするから」

「はい」

 小百合ちゃんは、嬉しそうにそう言った。

「ほんと、なんでも言って、僕にできることならなんでもするよ」

 僕は、対して力もなく、自分が助けを必要とするホームレスであることも完全に忘れて言った。

「ありがとうございます。やさしいんですね」

 小百合ちゃんは、笑顔になった。それが僕は嬉しくて更に熱くなった。

「何かない?今困っていること。僕は君の力になりたいんだ」

「・・・」

 小百合ちゃんは、黙っていたが、何かあるような表情だった。

「なんでもいいんだ。僕は君の力になりたいんだよ」

「私・・」

「うん」

「私・・」

 小百合ちゃんは、恥ずかしそうにうつむく。

「なんでもいいんだよ。言って」

「笑わないでくださいね」

「うん」

「ほんとですよ」

「うん、絶対笑わないよ」

「・・・」

 それでも、小百合ちゃんはしばらく、言い淀んでいた。

「私・・」

「うん」

「私・・」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ