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堕落・・、その先に

「・・・」

 気付けば手持ちの金もあっという間になくなっていた・・。

 大切にしろと言われたお金だったが、なんだかんだと使ってしまった。しかも何に使ったのかも覚えていなかった。本当にくだらない、ちょっとコーヒーを買うとか、そんなことだった。ダメだダメだと思いつつも一度使いだすと止まらなかった。

「・・・」

 自己嫌悪に押しつぶされそうだった。何もする気が起こらず、当初燃えていたバイト探しや、この街からの脱出計画も考える気さえ起らなかった。

 無気力な日々だけが流れていた。だんだんこの町に染まろうとしている自分がいた。そして、それをどうとも思わなくなってきている自分がいた。

「この町からは出られんさ」

 あの白濁した目のじいさんが、頭の中で僕を不敵に見つめていた。

「・・・」

 毎日好きな時間に起きて好きな時間に寝る。そして昼間は何をするでもなくぶらぶらと町をぶらつく。お腹が空けば炊き出しに並び、スーパーやコンビニの廃棄物をもらった。この町の生活というかリズムに確実に慣れて来ていた。

「おうっ」

「あっ、インテリさん」

 炊き出しのうどんをすすり、腹を満たした僕がふらふらと、炊き出しの行われている公園から出た時だった。

「どうした浮かない顔して」

「いや・・」

「どうした。また、悩みごとか」

「はあ・・・」

「どうしたんだよ」

「なんか、このままでいいのかなって・・」

「いいんじゃないの」

 インテリさんはあっさりと即答した。

「そんなかんたんに・・」

「君は物事を難しく考え過ぎるんだ」

「そうでしょうか」

 この会話は前にもしたことがある。

「もっと楽に生きたらいいじゃない」

「はあ・・」

 この甘い言葉に、流され堕落していくのだ。そして、いつしかこの町の一部になっていく。僕はその蟻地獄にしっかりとはまってしまっている・・。

「君は少しノイローゼ気味だな。もっと、こう・・」

 インテリさんの言葉がだんだん小さく遠のいていった。僕は、僕は・・、堪らない焦燥と不安が僕の心の奥底から、噴火直前の噴煙のように湧き上がった。

「うをぉ~」

 僕は叫んだ。インテリさんが驚いて僕を見る。僕はなんだかたまらず、そのまま一人走り出した。インテリさんは、そんな僕を茫然と見送った。

「やっぱり、やっぱり、やばいぞ。この町を出なきゃ、この町から脱出しなきゃ」

 僕は、走って走って走りまくった。めくらめっぽう町を走りまくった。自分がどこへ行くのか、どこを走っているのかもよく分からなかった。何をしたいのか。何をしているのかも分からなかった。

「やばい、やばい」

「あっ、誠さん」

 ももちゃんだった。通りを僕の方に向かってももちゃんが歩いていた。だが、僕はその横を、ももちゃんを無視して走り抜けた。

「・・・」

 そんな僕をやはりインテリさん同様、ももちゃんも茫然と見送った。

「やばい、やばい」

 僕は走り続けた。走りながら、ものすごい危機感と焦りを感じていた。

「やばいぞぉ~」

 僕は祝い町を走りまくった。

「兄ちゃんがんばれや~」

 そんな僕を、ホームレスのおっちゃんが、のほほんと応援する。

「うをぉ~」

 僕は更に走った。


 しかし・・、

 次の日、また同じ自分がいた。昨日と同じく、無気力にだらだらと時間を過ごしている自分がそこに横たわっていた。このままじゃダメだダメだと思っていても、具体的に自分が何をすればいいのか、どうすればいいのかが、全く見えなかった。考えても考えても、悪いこと、マイナスな考えしか頭に浮かばなかった。全く未来に光というか希望が見えなかった。そして、焦れば焦るほど、心は疲弊し、やる気が吸い取られるみたいに、無気力になっていった。

 気分を変えようと外に出て、テント村の端にある芝生広場で横になる。

「・・・」

 遠くの方で、ホームレスのおっちゃんたちが蠢いている。

「・・・」

 僕もああなるのだろうか。僕の不安は増々高まって行った。

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