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迎え

 何の仕事か、時間は?給料は?全て聞き忘れたが、次の日の朝六時、約束通りおっさんと出会った町外れの道路沿いに僕は立った。周囲は早朝ということもあり、昼間人気のない通りが、更に閑散としている。

「本当に迎えが来るのだろうか」

 道路の向こうを見ても、車通りさえない。

 ―――約束の時間が過ぎた。やはり騙されたのか・・、と、思いかけたその時、僕の目の前に一台の車が止まった。

「お前か、土方したいっちゅうのは」

 いきなり運転席から、真っ黒に日焼けしたおっさんが、なぜか語気も荒く怒鳴るように言った。

「え?土方?」

 僕は訳が分からず、そのおっさんを見つめた。

「いや、あの僕はなんか変なおじさんにここで待てと・・」

「乗れ」

 おっさんは鋭い眼光で僕を上から下まで嘗め回すように見ると、やはりなぜか怒り口調で言った。

「えっ」

「さっさと乗れ」

 二回目ははっきりと選択肢のない「乗れ」だった。僕は、慌てて車に乗ろうと車の後部を見た。

 しかし、車は土砂などを運ぶ四トントラックだった。当然後ろに席はない。運転席と助手席にはもう人が座っている。

「・・・」

 僕はもう一度運転席のおっさんを見た。おっさんは早くしろよと言わんばかりに僕をものすごい形相で睨んでいる。僕は考える余裕もなく慌てて、荷台に飛び乗った。

「わあ」

 僕が乗り込むか否か、すぐにトラックは乱暴に発信し、僕はその勢いでバランスを崩し荷台で転んだ。

「わあ、わあ」

 おっさんの運転は凄まじく荒く、体制を立て直す余裕もなく僕は荷台を転がった。

「ふぅ~」

 トラックが信号で止まるとそこでやっと、態勢を整え僕は顔を上げた。

「わっ」

 荷台には僕の他に、何人かのおっさんがすでに乗っていた。しかも、そのおっさんたちはまるで全員死んだように一様に無言で荷台の片隅に座っている。

「・・・」

 そこには生きている気配さえもがなかった。おじさんたちは人生の終わりを見てしまった、そんな目で虚しく荷台の底を見つめている。

「・・・」

 大丈夫なのか俺?大丈夫だよな俺。と自分に問いかけながら、僕は再び走り出したトラックの荷台に揺られながらそんなおっさんたちを見つめた。


 トラックは、しばらく走ると古びた建物の前の開けた場所で再び止まった。そこには労働焼けして白目だけがぎろぎろと浮き出た真っ黒なおっさんたちが蠢くように群がっていた。

「・・・」

 な、何が始まるんだ。僕はそんなおっさんたちを注視した。

 するとその場にいたおっさんたちはぞろぞろと、幼稚園バスに乗り込む子供のように何の躊躇も無く、僕の乗るトラックの荷台に乗り込んで来た。トラックの荷台は一瞬で超過密カオス状態になった。だがそんなことは全くお構いなしに、すぐにまたトラックは乱暴に走りだした。

 

 荷台に詰め込まれ運ばれて行く僕たちはまるで家畜のようだった。

「・・・」

 一体、僕はこんなところで何をやっているのだろうか。どこで人生の方向が間違ったのか。僕はすし詰めの荷台で他のおっさんたちと一緒に揺れながら一人思った。なんでこんなことになっているのか、自分でも訳が分からなかった。

 しかし、トラックはそんな僕の思いなど全く関係なく、そのまま猛烈な勢いでどんどん、どこへ行くのか走っていく。

「落ちるとこまで落ちた」

 なんだかよく分からない敗北感が僕の全身を覆っていた。

「・・・」

 僕は、昨日仕事を受けてしまったことを激しく後悔していた。


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