プロローグ6
確かに、俺の索敵能力はちょっとしたものだと村の師匠も言っていた。気配を消すのはまだまだ師匠に勝てないが、索敵だけはいまだに誰にも負けたことがない。
というよりも、Cランクっていうのは誇張しすぎじゃないかと思うんだが。
「わかったわ。お父様が貴方たちに任せたんだもの、貴方たちの判断を信頼することにするわ。」
リンディさんは素直なんだなと頭の片隅で考えていた。魔力量は俺の半分程度しかない。魔力がどのくらいで一般的な量なのかは知らないので、何とも言えないが…。
「決まりですね。出発は明日の朝になります。道具などは私たちで用意するのでリンディ様は今日は、明日に備えてゆっくり体を休めておいてください。
フィエル君は私たちに着いてきてもらっていいですか?臨時パーティーの申請をギルドにしなればいけないので。」
臨時パーティーを組むのは決定かと思い、俺は真っ先に部屋を出ようとした。
「フィエルだったかしら。貴方はいなくても十分だけど、この方たちが不安だから念のためっていうから着いてきていいって言ってるのよ、勘違いしないで頂戴ね。」
「そうですね。まぁ、やるっていう以上は本気でやりますよ。こういう依頼でも、気を抜いてて死んだってやつの話を冒険者の人に教えてもらいましたからね。」
俺は、それだけ言うとさっさと部屋を出た。やると決まった以上は、嫌々決まろうが何だろうがやる、そういうスタンスで俺は生きてきたのだし、これからもそうやって生きるつもりだ。
「先に出るのはいいが、せめて私たちが出てくるのを待っていてくれたっていいんじゃないか?」
多分、貴族様に挨拶していたのだろう、俺よりも一歩遅く出てきたセリカが先にギルドに向かって歩いている俺に追いかけて声をかけて来た。
「ところで、なんでまるで決まっちゃった感じだったんです?まぁ、暇ですし、貴族様なら、そこそこの依頼料が入ると思うんでいいんですけど。」
つっけんどんな感じになってしまったのは許してほしい。そもそも、先に貴族様に話を通してから、俺とシエルさん、セリカで話をして、決まったら顔合わせでいいじゃないか。
それを何故、俺を連れていく交渉と俺に一緒に来てという交渉を同時にしようと思ったのか。理解に苦しむ。
「あの場で話をすればなぁなぁに決まって、義理堅い貴方なら参加してくれると思ったのよね。何故かっていうと、今回の依頼は、私たちが思っていた以上に厄介な感じなのよね。」
シエルさんも俺に追いついてきていた。
「まぁ、向こうが認めてしまった以上、俺は行くしかありませんからね。あそこで俺が騒いでも向こうの印象が悪くなるだけで、何のメリットもありませんし。」
ニヤッと笑ったシエルさんにイラっとしたが、もう決まったことだと諦めて、俺は頭を切り替える。
「それで、この辺の地理はわかりませんが、どこにレベル上げに行くんですか?」
「ダンジョンだよ。」