プロローグ5
セリカと共に部屋に入った瞬間に人の気配を複数感じた。目の前に立っているシエル、シエルの後ろで椅子にふんぞり返っている貴族っぽい女、屋根裏に二人、気配を消しているが室内の隅の木の裏に一人、合計5人の気配を感じた。シエルを除いた三人は、貴族っぽい女の護衛だろう。
これだけ腕のいい護衛が三人もついているということは相当な貴族だと思う。
「なんの用ですかね、シエルさん。」
一瞬の殺気、俺ぐらい殺気に敏感でなければ気づかないくらいの一瞬。
「貴方に依頼があったのでこちらに来ていただきました。セリカ、ドアを閉めて下さい。」
セリカが静かにドアを閉める。後ろにはセリカ。前にはシエル。さらに奥には護衛がいる。逃げることは不可能に近い。
「さて、あなたに依頼があります。後ろの女性は実は、とある貴族の方から預かっているのですが、この方のレベル上げを行います。それにともないまして、この方の護衛を探していました。」
「なんで俺なんですか。俺は、今年学園に入学する新入生で、Fランクの新米冒険者ですよ。」
魔力を展開するのは危険すぎる。保険を掛けるにしても、それが原因で命を狙われるならかけない方がいい。それよりも、目の前の人物がどれくらいの爵位を持っているのか。
情報が少なすぎる。来たのは昨日で、学園まで連行されたために情報収集はできなかった。情報がない事がこんなに不安だったのかと体が焦っているのを感じる。
「いくつか理由があるけど、一番は信用。信用できる人物で、護衛ができる実力があって、私たちが任せられる人となると全然いないのよ。これでも、高ランカーだからね。しかも女だけの二人パーティーでしょ?敵が多いのよ。
後は、貴方には借りがある。この借りを返すには丁度いい案件だと思ったのよ。
旅の間は私たちが貴方に魔法を教えてあげるわ。それにこんな美人と旅ができるのよ。いいと思わない?」
確かに、敵が多いというのも納得できる。しかし、信用してもいいのだろうか。そもそも、この二人は何者なんだ。なんで、情報収集してこなかったのか、それが悔やまれる。
「それだけでは、僕のメリットであるとは感じません。それに、1週間後には入学式があります。それまでに帰ってこられなければ困ります。」
「それは、大丈夫です。こちらの方も学園の入学式がありますので、それまでには帰ってきます。それに、貴族とのつながりは、貴方の財産になると思いますよ。」
俺とシエルとで、話していたところに後ろの女性が立ち上がった。
「この男を私の護衛にするの?そもそも、同じ学園に入学する人間なら、私と大して能力が変わらないと思うわ。実際、私だって魔法を使えるのだし、足手まといなんかにはならないわ。」
「しかし、リンディ様、手違いがいつ起こるかわかりません。私たちが行くのは何が起きてもおかしくない場所です。戦力は多い方がいいと考えます。
それに、実力だけなら、この人物はCランカーには届いていると思います。それに、索敵能力も高いと考えられます。私たちですら気づけない、リンディ様の護衛の方々を部屋に入ってきた瞬間見つけていました。これだけで、この人物を連れていく価値はあります。」
随分と高く評価してくれてんだな。シエルは。