プロローグ1
王道の物語でも書いてみようかなと思った。今日この頃。今までが王道じゃないかは、わかりません。
11月24日編集完了。
突然の自己紹介でごめん、俺の名前はシエル。
エルメシア王国国立魔導学院に入学予定の15歳だ。エルメシア王国内には魔導学院が8校あるが、その魔導学院の中でトップ誇る学校だ。
この学院に入学できた時点で勝ち組と言っていいほどの学校だ。相応に試験も厳しく、学力、魔力、魔力操作、身体能力と大きくわけて4種類の試験がある。そのどれもを持つ者だけが入学を許されるエリートのための学院と言える。
まぁ、こんな学院に入学すると言っているんだから気付いている人が多いと思うが、俺も結構なエリートということだ。しかも、15歳からの学院なので現役で合格するというのは中々すごいことだ。
そんな俺は、入学前にも関わらず、ダンジョンに来ていた。
ダンジョンに来たのは、冒険者としての依頼を受けたからだ。依頼内容は、とある貴族様のレベル上げのためだ。レベル上げと言っても、相手を倒したら経験値が…なんてことではない。そもそもそんなのは書物の中での話だけだ。
戦闘能力の上昇。そのためには実際に戦闘を行い、戦うことに慣れるしかない。実際の戦闘で発揮できる力なんて半分もない。
まぁ、そんな訳で俺はダンジョン内にいる。
一応、仲間の紹介をしておこう。今回の依頼にとある出会いが原因で誘ってきた氷火の二人。名前は、「フィエル・カーリエ」と「セリカ・トーラス」。
フィエルは魔導士の資格を持っているのに冒険者をしている酔狂な人間だ。しかも、これから俺が入学する魔導学院の出身者だ。まぁ、出身だけあって、魔法においてとても頼りになる。戦闘能力も高く、何においても文句がつけずらいくらいには優秀だ。
セリカは、王立騎士学校の出身者だ。騎士にも誘われたそうだが、幼馴染のフィエルと冒険者をするために騎士の話を蹴ったらしい。剣に魔法を纏わせるのが得意らしい。剣技は圧巻の一言だ。
氷火の名前の由来は、氷魔法の得意なフィエルと火魔法の剣を使うセリカの二人の魔法からつけたものらしい。
そして、最後に依頼主のリンディ。この方が貴族のご令嬢らしく、名字を教えてはくれなかったが、相当な貴族だとフィエルが話していた。
このリンディという少女は中々好奇心が旺盛だ。要らんとこで中級魔法をぶっ放してみたり、何でもかんでも触ってみたりしやがる。
何よりも、意味ありげな魔法陣を楽しそうに踏みやがったのがさっきのこと。
お陰様で転移魔法陣の影響で、どこの階層かもわからない場所に転移させられてしまった。百歩譲っても最悪の状況だ。はっきり言って、生きて地上に戻れる気がしない。
「ねぇ、私たちは入学式までに王都に戻れるのよね?貴方達には、期間も告げてあったし、何とかしなさいよ。」
こんな高慢ちきな女など、このダンジョンに捨てて行ってもいいんじゃないだろうか。
力もなく、戦闘になってもキャーキャー言いながら魔法を放つか、逃げ回っているかのどっちかだ。正直、一か所にじっとしていてくれたら、守れるのだが…。この女はじっとしていられないらしい。
「リンディちゃん。それはわからないわ。はっきり言って私たちの目標は、何とか生きて地上に帰ることに変わったわ。これは、パーティーリーダーとしての判断よ。
それに、そもそも今、私たちがどこにいるのかもわからないのに、いつ地上に戻れるかなんてわからないわ。」
「それじゃ困るわよ!何のためにあんた達に依頼したと思っているのよ!何とかしなさいよ!」
フィエルが、とても怒っているのがわかる。先ほどからこの調子なのだ。状況を説明しても、貴方達が私を止めないから悪いのよと開き直る始末だ。
「あんたのせいだろうが。
最初から言ってただろ。勝手なことをするなって。俺らの戦闘中に勝手に動いた挙句、こんな罠にはまりやがって。あんたのせいで、俺ら全員死ぬかも知んねぇんだぞ!
ふざけんな!」
俺は思わず、怒鳴りつけた。力がないのも、戦闘できないのも、慣れていないんだから仕方がない。しかし、謝罪も出来ないのは許せない。
「な、何よ!私を誰だと思っているのよ!私は、エルメス家の長女なのよ!」
まさかの公爵家の令嬢だったらしい。確かに、偉いのは偉いのだろう。
「その権力がお前を守ってくれんなら、今すぐ守ってもらえよ。
その代わり、俺らに守ってもらえると思うなよ。お前が足手まといだから、困ってんじゃねぇか。」
こんな風に言われたことがなかったのだろう。
リンディは大きな声で泣き始めてしまった。俺がやったこととは言え、魔獣を呼んでしまう行為にうんざりした。
これは多分、俺は死ぬだろうな。