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リディラ~3ターンキルするエネミーになりました~  作者: 鈴乃
第一章 ストーリー開始前に暴れる模様
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第一話 街に降りて遊ぶ1


 気が付いたら私はここにいた。


 辺りを見渡せば、まるで焼け落ちてそのまま放置されている村、そのものだった。

 木造の建物は焼け落ち、柵は見るも無残に朽ち果てている。

 家畜の骨は既に土に還り、たまに村人の身に着けていたであろうぼろきれが、奇跡的に家から覗いている。


 その奥に、まるで誘うかのようにぽっかりと地下への階段が続いている。


 私は真ん中に立っていた。




 どうもこんばんは、悲劇の少女です。

 あ、今私の事イタイ奴だと思いましたか?

 うわ、自分で悲劇の少女とかこいつマジかよって思いました?

 違うんです、私は悲劇の少女、そういう名前なんです。


 え? 親が子供にそんな可笑しな名前をつけるわけがないって?

 それはまぁもっともでしょう、しかし、私の親……というか、私をプログラムで作ったであろう人物は、そのようにこのエネミーの名前を設定したのです。


 ここにきて、そして知った。


 改めましてこんばんは、私の名前はアイリス……ちょっとだけやりこんだ私でも知らない新事実。


 お空を見ればお日様は出ていない、魔力によって光る壁があるだけ。


 ようこそ『追想の墓地』へ。


 此処はこのゲーム『リディラ』の裏ダンジョン。

 一週目のボスを倒した後に解放される本当のラストダンジョン。

 私はその裏ボスへと繋がる中ボスに当たるのかな?


 ……なぜ悩んでいるか、それは私を倒してすぐに裏ボスが現れるからだ。

 現れるというか、一つ下の階層に裏ボスがいる。

 

 悲劇の少女のプレイヤーから見たヘイトは高い。

 このキャラの獲物は銃。


 基本剣と魔法のゲーム的中世ヨーロッパというありがちな世界だけれども、魔力を弾として放つ銃が存在する。

 しかし、燃費が悪い、魔力バカ食い……その分クリティカルの出も威力も高いわけだけど、正直運用は怠い。


 その武器を持った私のヘイトがなぜ高いのか?

 それは、私がほとんどイベント用に設置させられたキャラだからだ。


 そもそもの話、この世界でのゲームの物語とはどんなものだったのか。


 簡単に言ってしまえば、魔王が復活したので倒しましょうというものである。

 魔王というのは、魔神の使途であり人々を破滅に追い込む存在という設定だ。

 いろいろあって封印されていた魔王が復活して、主人公がそれを倒す。

 しかし、一週目では再度封印することしかできないという面倒くさいものである。

 では、魔王を滅するためにはどうすればいいのか。

 それがこの『追想の墓場』の存在意義である。


 此処の裏ボス……『魔王の残滓』。

 封印される前に残された魔王の力を倒すことによって、キーアイテムが手に入る。

 アイテムを所持して戦闘をすると、一度魔王を倒してから更に戦闘を行うことになる。

 それを倒すことによって、完璧に魔王を倒すことに成功する。

 そして、そこから魔神を倒す事になるが、それはイベント戦闘として、他の神と力を合わせてという運びになる。


 つまり、完全攻略は二周目にならないとできないという仕様になっている。

 エンディングはどちらもハッピーエンドではある、ノーマルエンドとトゥルーエンドと言ったところだろうか。

 

 だがまぁそれくらい、夏休みを持て余した女子大生には問題なくできる周回ではある。


 さて、本題に戻るが、私こと『悲劇の少女』がなぜプレイヤーのヘイトを稼いでいたのか。


 このイベント戦闘は、三ターンキルされる、プレイヤーが。

 因みにこのゲームは、ターン制の四人パーティーゲームである。



 一ターン目、少女は二丁拳銃で確定クリティカルを味方二人に攻撃してくる。

 クリティカルを受けると、受ける攻撃の威力が増すのに加えて、次のターンプレイヤーの攻撃力が約三分の一落ちる。

 つまり通常の攻撃の三分の二の威力しか出ないにもかかわらず、三ターン目にイベントで確定キルである。


 二ターン目、少女が二丁拳銃を放るとそれは空に浮遊し、次に少女の手に黒い光が集まると、そこにサブマシンガンらしき物が二丁現れて攻撃してくる。

 サブマシンガンは片方六発ランダムヒット、両方のマシンガンの攻撃が終わると、空中に浮いているハンドガンからパンパンと二人に攻撃。

 ハンドガンの狙いは、一番体力のあるキャラクター。

 因みにすべてクリティカルというクソ仕様。

 ただ、重複効果が発生しても、攻撃力が三分の一未満に減ることが無いのが、救いと言えば救いだった。


 三ターン目、場面が切り替わりイベント。

 少女が右目から一筋の涙を流すと、サブマシンガンを手放し、四丁の銃がパーティーメンバーに向く。

 少女が指パッチンすると、黒い光がそれぞれの銃を包み込み、現れるのは対戦車ライフル的な何か。

 少女は指で銃の形を作りそれを撃つ真似をすると、すべての銃口からプレイヤーを絶対殺す弾丸が放たれて、自軍のうわーだのきゃーだのの死亡ボイスが届き戦闘終了。


 ……まぁしっかりと対策をとれば、二ターン目で倒せるようにはなっている。

 少女は魔神の加護というものを持っているため、魔神の加護持ちに絶大な攻撃力を誇る攻撃をその攻撃をしない他の三人で能力上昇等をかけまくる。

 味方の全ての値上昇、クリティカル確率上昇、相手の全ての値下降。

 それで二ターンで吹き飛ばすことが出来るので、攻略情報も何も見ないで戦うのはかなり厳しい戦闘である。


 ……まぁ私が今いる九十八階層の一個前にセーブポイントがあるので、しっかりとセーブしていれば、おもむろにネットを開いて攻略情報を探ったりするだろう、以前の私のように。

 勿論、攻略を探る人もいるとは思うけど、そこは個人の趣味だと思う。


 とまぁ、そんな少女にのほほん日本からやってまいりました女子大生が入り込んでしまったわけですが。

 これは現実なのか夢なのか、正直ちょっと判断ができていない状態。

 一応、様式美として頬を抓ってみたけれど起き上がる様子はない、ただただ私のほっぺが実害を受けただけだ。


 因みに、私がなぜ裏ボスの前に戦うのかというと、私が以前の魔王の依り代という位置づけだからだ。


 主人公のゲーム開始から見て約五百年前、魔王が現れて人々を恐怖に陥れた。

 そして、その魔王の依り代となったのがこの少女。


 依り代となる人物の条件としては、魔神の加護を持っている事。

 私に目を付けた魔神は、私に魔神の加護を与えてこの村に魔王を誕生させた。

 そして村を壊滅させて私を依り代として取り込んだ。


 という流れである。


 まぁね、こんな殺意高いキャラ魔神から見たら格好の餌だよね、うん。


 何故ここがゲームの世界ではないかと気が付いたか、それは私がちょうど寝る前にやっていたからという理由と、銃を出せたり、その種別を変えたりすることが出来るからだ。


 そして最もな理由として、私がそう願っているからだ!

 異世界転生! しかもゲームの中! 最高じゃないか!

 しかも、レベリングしなくてもこのキャラのレベルはMAX、そうマックス!

 お、これは異世界転生チートであたいてっばさいきょーねきたこれ?

 と思っているわけである。

 

 なんといってもこのキャラ、後の完全攻略で運営から出された攻略本の数値でおかしいと話題になったほどだ。

 取り合えずクリティカルに関係のある運の数値はマックス、命中に関係のある数値もマックス、魔力値もマックス……ちなみに魔力値は銃での攻撃力と連射力にかなり影響する。


 まぁ魔力値がマックスでないと、相手の攻撃が止むことになってしまう。

 最初のダンジョンなどであれば、魔力値が足りなくなって呆然とする雑魚が出てきてもいいだろうが、さすがに裏ダンキーキャラでそれはやらないだろう。

 耐久値に難があるが、まぁこれは三ターンキルのせいであるのともう一つ、この少女村人が着ているような簡素な服がボロボロになっている物を纏っているので、耐久値が低いのもうなずける。

 

 勿論レベルもマックスだが、此処には疑問が生じる。

 たまにネット小説などでも見かける、リアルになったからマックス上限が存在しなくなったのではないかという事である。

 実際ステータスなどを見ようと色々と試してみたが、残念ながらステータスの閲覧はできないようであるから、それを立証することはできない。


 そこで、私は今後の方針を色々と考えてみることにした。


 え、両親? 友達? あっちの事は気にならないかって?

 気にしてどうなるの?

 とりあえず、状態が分からないからどう気にしていいかわからない。

 私は死んだのか、行方不明になったのか、魂が分離して今もあっちには私がいるのか、魂だけこちらに来て彼方は廃人のようになったのか。

 心残りとしては、親孝行全然できなかったのはあるけれど、リアルの友人なんて正直うわべというか、皆そのうわべを求めていた人同士がくっついたというか。

 

 だから、気にしてもしょうがない。

 であるならば、此処を現実として行動した方が楽しいではないか。

 もし、相当手の込んだドッキリだとしても構わない、なぜなら私が楽しいからだ!


 という事で第一目標は、裏ボスの撃破。

 は? 主人公に取って置けって?

 いやいや奥さん、そもそも現実に二周目とかないと思うんですが……。

 という事と、今私がここでこの子に乗り移ったこと、それを鑑みるときっと何かしらの力が働いて、キーアイテムを持っていくことが私の意義だと考えるわけですよ。

 いや、そうに違いない! その方が楽しい。


 それに、裏ボスの倒し方は分かってはいる、攻撃の仕方の種類もわかってはいる。

 けれども、私には魔王が闇属性だとするのであれば、光属性、つまり弱点攻撃を持っていないことになる。

 そうなると、力と力のぶつかり合いになることは必然。


 であるならば、先ずはレベルが上がるのかという検証と、上がるであればそれが感じ取れるのかを上の階層で効率よくやらなければならない。


 てなわけで、上の階層へれっつらごーっと。









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