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冬将軍誕生まで

冬童話参加作品です。和風グリム童話みたいなものを目指して書いております。どうぞよしなに。

これはまだ国が一つでなかった頃のおはなしです。

北の方に、クリス様を信仰する女領主がいました。彼女は毎日毎日、祈りを捧げていました。

フランシーヌ・ケイン・トップシーダと呼ばれたその女領主は、自ら馬に乗って、戦に出る強い女性でした。彼女はハンズピック川での戦いで、後に副王を退位させることになるレオナルド・ウィーブパディの軍を打ち破りました。


その後、暫くしてフランシーヌは生涯を閉じることになりますが、この戦いで変わってしまった領主がいました。パウロ・パインウェイブと呼ばれる男でした。彼はカガに領地を持っていましたが、戦乱に巻き込まれて危うく命を落とすところまで追い詰められたのです。

「聖母マリアの名の元に!雪よ積もり給え。そして松に明かりを灯し、赤き騎士よ敵を斬り倒し給え。」フランシーヌがそう言うと雪は激しく降り、赤き馬上の騎士がウィーブパディの軍隊を激しく襲いました。

「殿下。この戦、両軍ともこちらを襲ってきます。勝ち目は御座いませぬ。早く城を離れて下さい。」家来の一人、トーマスがそう言いました。目には涙を浮かべていました。彼は死ぬ気でした。

「そうしよう。これからは城など持たず、館に住むとしよう。村の村長クラスで良い。」パウロはそう思いました。戦は好きではありませんでした。元々、当主にならない三男だったのが戦で上二人が亡くなって当主になったのでした。

パウロ率いるパインウェイブ隊は、危険な雪道を南下することにしました。途中で2割の家臣を失ってパウロの心は傷つきました。

パウロ自身も低体温になっていました。そして、目的地に近い山道で倒れてしまいました。

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