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閑話:『黒の女王』、天国出張(前編)

 今回は、少し脱線して地獄組の閑話です。この話、当初はSSにあげるつもりだったのですが、本編に少しだけ関わるので閑話として投稿してみました。このタイミングでいれたのは、依頼を受けると物語が恐らく加速度的に進んでいくのが想像できたからです。

 地獄組は、既に死んでいる人ばかりでしかも舞台が地獄や天国なので、チーム百鬼夜行と比べてもだいぶはっちゃけてます。

 はっちゃけた結果、前後編になりました。

 できれば頭を空っぽにしてご覧ください。

 皆さんこんにちは。私の名前は小野篁。地獄で閻魔大王の補佐を務めている者です。同僚である鏡夜響が『黒の女王』と呼ばれるようになってからはや数ヶ月。彼女はさらなる進化を遂げていました。


「おはようございます響様。・・いやー、改めて見るともう完全に女性ですよね。流石『黒の女王』です。」


「・・折檻がお望みなら悦んでしてあげますよ?」


 響から漂うオーラが尋常じゃなく黒いモノだったので、私は慌てて首を横に振りました。

 響は、この数ヶ月間ことあるごとに獄卒や閻魔大王から『黒の女王』と呼ばれ続け(勿論私もその一人です)、その度に激しい羞恥とストレスに苛まれた結果、前は少量しか生えていなかった白髪が、とうとう彼女の黒髪を完全に侵食してしまい、見事な白髪となってしまいました。

 その上、仕事の忙しさ故に髪を切る暇もなく放置した結果、白髪ロングで全身黒コーデという何とも日本人離れした外見にチェンジしてしまいました。

 しかも、寝不足のせいで充血した目が赤眼を連想させ、その姿はまさしく『黒の女王』に相応しいものにww

 最近ではもう開き直って寧ろ自分から嬉々として『黒の女王』をやっているようにも見えます。まあ、閻魔大王をM属性に開花させるくらいですから元々そっちの才能はあったんでしょうね。

 あー愉しい。響は本当に見ていて飽きないです。

 ・・しかしですね、それはあくまでも見ているだけならばの話です。


「・・ですから、貴女の折檻に私も付き合わせるのだけは止めてくれませんかね?」


「何を言っているのですかたかむー。私と貴方は同じ閻魔の補佐。同じ仕事をしなくてはならないのは当然でしょう。」


 私にそうしれっと言い返している間も、響は鞭をふるって罪人達に折檻を行っています。その口元が三日月型に怪しく歪んでいるのは見ないふりをした方がいいのでしょうか・・。

 まあ確かに、響の言うことは正論なので私も渋々折檻を始めます。しかし、響ほど上手く鞭を使うことが出来ず、あまり折檻を出来ている感じがしません。罪人が、眼を血走らせながら、「なんだその温い折檻はぁ!黒の女王様ならもっと俺を完膚なきまでに痛め付けてくださるぞぉ!」とか言ってきました。やだ何こいつ怖い。

 そして、本当に怖いのはここにいる罪人のほとんどが例外なく黒の女王、つまり響に心酔しているという事実です。

 響が鞭をふるう度に「ああ!!もっとやってください女王様ぁ!」とか叫んでいる罪人を見るに、これ折檻っていうよりむしろご褒美ですよね?

 ・・うーん、響の変化を愉しんでこれまで放置してきましたが、もしかしたら不味いことになってるかもしれませんね。

 私が地獄の現状に若干の危機を抱き始めたその時、獄卒の一人がえらく慌てた様子で私たちの元へと駆けてきました。その尋常じゃない様子を見て、響が折檻の手を止めその獄卒に声をかけます。


「そんなに息を切らせて一体どうしたというのですか?十秒以内で回答しなさい。」


「了解しました女王様ぁ!実はですね・・」


 それまで息を切らせていたのに見事な敬礼をしてみせた獄卒が、本当に十秒ぴったりで伝えた内容に、私たちは思わず眼を剥きました。

‐それは、地獄の門番である牛頭と馬頭倒され、罪人が天国へと逃げ出したというあり得ないものだったのです。


▼▼▼▼▼


 獄卒からその情報を聞いた私たちは、急いで地獄の門へと向かいました。もし先ほどの話が本当なら、本来地獄の裁判にかけてから地獄行きか天国行きかを決めなければいけないにも関わらず、その過程をすっ飛ばして天国へ行ったことになります。本来従うべき過程をすっ飛ばしたら勿論色んなところへ弊害が出てしまいます。最悪のケースは、殺人鬼のようは危ない輩が天国へ行ってしまったパターンです。その場合、本来邪なモノが全くいない天国に邪悪な魂が送りこまれ、天国のシステムが崩壊することもあり得ます。

 そうなれば、天国の支配者である天使から地獄sideに多大な批判が向けられることでしょう。そうなると非常に面倒くさいです。天国sideと地獄sideで戦争なんか始まったら、流石に私でもそれを愉しむことはありません。


「ちっ・・面倒な事案持ち込みやがって・・その罪人後でブッ殺す。」


 猛スピードで私の前を走る響からそんな呟きが聞こえてきます。

 あのー、響様?貴女素出てないですか?正直めちゃくちゃ怖いんですけれど私泣いていいですか?あと、そのスピード普通の人間じゃ出せないと思うんですけれど・・同僚の人間離れがヤバイ。

 そうこうしているうちに、地獄の門に到着しました。そこには、いつもの堂々とした姿は見る影もなくぐったりと地面に横たわる牛頭と馬頭の姿が・・

 そして、そんな牛頭と馬頭の頭を鷲掴みにして無理矢理起こした響は、二人に事情を問いただします。えげつねえ。

 そして、二人から得られた情報によると、逃げ出した罪人はかなり強く、たった一人で牛頭と馬頭を倒したことが分かりました。

 言っておきますが、牛頭と馬頭は決して弱くはありません。むしろ、その役割の重要さからも、戦闘力だけなら地獄で閻魔大王の次に強いと言われているのです。

 そんな牛頭と馬頭を一人で倒してしまった罪人とは、一体どんな奴なのでしょうか。正直かなり怖いです。このまま部屋に戻って引きこもりつつ何事もないことを祈りたいところですが、そうは問屋が許してくれるはずもありませんでした。


「しょうがない。問題を起こす前に私たちでその罪人を捕まえましょう。」


 はい、響様罪人を追いかける気満々です!しかも、私が同行するのは確定済みでした!

 まあ、確かに私たちがなんとかしないとヤバそうですからね・・でも、私は自分から動くタイプではないのです。どちらかと言えば、他人が翻弄されるのを面白おかしく眺めていたいタイプなのです。

 ですから、今回も見学というわけには・・イタタタタ!!響様、アイアンクローで頭握り潰さないでください!分かりました!行きます!行きますからそれ以上はやめてください中身出ちゃうからぁ!


 ‐というわけで、天国まで罪人を追いかけることとなった私たちですが、私はこの後起こる出来事を、全く想像出来なかったのでした。

次回の方がはっちゃけてます。

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