第三話:サトリ音頭
森久保ォ!昨日は誕生日だったらしいなぁ!おめでとぉ!
「親戚のおじさんが・・そうなんですか。それはお悔やみ申し上げます。」
「ああ、別にそんな気にせんでもええで。親戚って言うてもほとんど会ったこともなかったさかい薄情なようやけれどあまり悲しい気持ちもせえへんしな。」
朝食のテーブルについた舞は、味噌汁をすすりながらあっさりとした様子でそう語ってくれた。髪も葬式に出るため黒く染めたらしい。親戚が死んだと舞の口から聞いた時は落ち込んでいないか少し心配したが、どうやら大丈夫そうで何よりである。
「実家に帰るんだろ?それなら何かお土産よろしくな~。」
「儂は551蓬莱の豚まんが食べたいのう~。」
呑気な主従コンビは舞のそんな様子を見るやすかさずお土産を要求している。普通葬式に行く人にお土産頼みますか?しかし、舞は俺よりもこの二人との付き合いが長い分流石と言うべきか苦笑しながらもお土産を買うことを了承してくれた。
まあ、そんな二人以上に困った人物がいるからかもしれないが・・。
「ま、舞ぃぃぃ!!どこに行っちゃうんだべ!?おらも一緒に連れていってほしいべ!」
そう、先ほどから空が舞の膝の上でずっと泣きじゃくっているのだ。これには舞も先ほどからかなり困った様子であった。
「うーん・・連れていってあげたい気持ちは山々なんやけれどな?空にはこの店を守る仕事があるやろ?そう簡単には連れていけんのは空だって分かっているやろ?」
そう、舞の言う通り空と花の双子の座敷童にはこの店に結界を張るという大切な役割がある。これは、仕事がら怨霊や悪鬼と戦うこともある晴明たちにとっては店を守るうえでも非常に大切な役割らしい。ちなみに、座敷童の双子がまだ店に居なかった時は“ご隠居”が結界を張っていたと本人から聞いたことがある。曰く、「あの双子が来てから儂の仕事が減って楽になったのじゃ!」とのことだ。
そして、この仕事の存在がなぜ空たちが店の外に気楽に出かけることが出来ないということにつながるのか。これは、座敷童の張る結界の性質に関係している。
座敷童の結界というのは、座敷童達がその家に住んでいる時間に比例して強くなっていくらしい。そして、本来家の中でのみ生活する座敷童が一旦住処から出てしまうと、その結界の強度がリセットされてしまうそうだ。だから、晴明たちが外に依頼に行くときも座敷童達は基本店で留守番することになっているのだ。そしてちなみにこの情報は花と仲の良いサトリが教えてくれたものだ。俺はなぜか花には嫌われているので、俺の背中にくっついて囁くようにこの情報をサトリから聞かされた時は、思わず顔が引きつったのを覚えている。こんな大事な情報知ったことが花にバレたらどうすんだ!という思いで。
まあそんな理由で舞について行くことは難しいことを知っているであろうはずの空は、それでもまだ涙目でごねていた。
「でも・・舞を一人にするなんて心配だべ・・。」
うーん、本人が気付いているか分からないけれど、舞以外の全員は空が舞に対して特別な好意を抱いているのは知っている。空君顔に出やすいんだよねー。ここに来てまだほんのわずかの俺でもすぐ気付いたくらいだし。しかし空君よ。人生の先輩としてアドバイスしてもらうとすると、舞さんのことが心配でついて行きたい気持ちは分かるけれど、そこで泣いちゃダメだと思うよ。実際、舞さんは空君のこと可愛い弟くらいにしか思っていないしねー。
ほら、今も空君を慰めるために頭撫でてあげているし。こら空君!そこで嬉しそうな顔しない!
しかし彼女は本当に優しい子だよなー。俺より年下なのにしっかりしているし。あの響と親友になれたのも彼女の性格の良さが大きいんじゃないかと思う。
そんなことを考えていたら、俺の膝の上に座っていたサトリが、じとっとこちらを眺めてきた。
『「・・響也、お前こんな美少女を膝の上に乗せておきながら他の女のことを考えるとはなかなかの根性だな。」サトリはジト目で響也を睨み付けながらそう言った。』
あ、これジト目だったのか。てか、自分で美少女って言っちゃうのか・・。
『「おい、私を痛い子だなとか思ってないだろうな?」』
いや、そこまでは思っていないよ?実際可愛いのは事実だしね。
『「そ、そうか・・。」サトリはぽっと頬を赤く染めた。』
うーん、サトリは俺が話さなくても勝手に心を読んでくるから楽でいいな。まあ、その分あまり変な事は考えられないんだけれどね。
『「・・しかし、このままあの田舎っぺを放っておくとまた泣かれかねないな。そうなるとまた舞の株が上がってしまう・・。その前に私が手を打つとしよう。響也、後で私の頭を撫でてくれよな。」サトリは期待を込めた目で響也を見上げるとそう言った。』
うん!?なんかいつの間にか話の流れが変な方向に行ってしまったぞ?俺が勝手に約束を取り付けられ、それと同時に斜め正面に座る花から放たれる殺気にビビっている間に、サトリは俺の膝から降りるとテテテテと舞と空の元に近づいて行った。
『「おい、舞。私がお前の未来を悟ってやろう。それで未来が安全と分かればその田舎っぺもそれ以上駄々はこねんだろう。」』
「お、おらは別に駄々をこねてなんかいないべ!」
『「黙れ小僧!」サトリはもの〇け姫に出る山犬風にそう言った。』
「お、サトリの“未来視”が見れるのか。これは楽しみだな。あれはなかなかに面白いし。」
“未来視”?晴明が言ったその言葉に俺は首をかしげる。そんな俺に、左隣に座る“ご隠居”がそっと耳打ちをしてくれた。
「“未来視”とはサトリの使う能力のことじゃ。その名の通り未来を視ることが出来るらしいのじゃ。儂も晴明も前に一度だけサトリがこの術を使うのを見たことがあるが・・色んな意味で凄かったのじゃ。」
何ですかそれもの凄く強い能力じゃないですか!?サトリの思わぬ能力の凄さに目を丸くすると、本人から注釈が入った。
『「とはいえ、おおざっぱな未来しか見えないけれどな。細かい未来が見えるわけではなく、予言みたいな形で悟りたい奴の未来が与えられるだけだ。それに、心を読むより手間がかかるから普段はめったにしないぞ。」』
いや、それでも十分凄いと思うんですけれど・・。
俺が、サトリの能力の凄さに若干呆れ始めたその時、サトリがポケットからスマホを取り出し、それをテーブルの上に置いた。そして、そのスマホから突如音楽が流れ始める。
こ、この音楽は一体・・!?
―『サトリ音頭』―
作詞・作曲:サトリ
パパンがパン(拍手)×4
悟り悟って悟られて♪(アソレ!) キノコタケノコ他人の子♪(アヨイショ!)
エリンギマイタケブナシメジ♪
悟ろかな?悟らせろ☆お前の心にズームイン♪
アソレソレソレソレ!(ソレソレソレソレ!)×2
悟ってみせましょ・・君の未来!
俺が呆気に取られている間に曲は終わり・・そして、曲の間ずっと盆踊りっぽい動きをしていたサトリの動きもその曲が終わると同時に止まった。サトリは無表情ながら心なしか満足そうな顔で胸を張っている。そんなサトリに、晴明と“ご隠居”からはスタンディングオベーションが贈られた・・。
・・・なんだったんだ今のは!?これは流石にツッコんでいいんだよね!?それとも俺もスタンディングオベーションしなくちゃいけない感じ!?響!こんな時お前はどうしてたんだ!?教えてくれ!!
鏡夜「私の方が聞きたいわボケ。」
サトリ音頭の歌詞は三十秒で作りました。
次回、「サトリが視た未来」です。




