プロローグ
プロローグは三人称でのぬい視点です!いきなり新キャラ大量に登場させました!皆かなり濃ゆいです(笑)
第二章の章タイトルは『烏』。
第一章を読んでいない方はぜひ先に第一章を読んでください。
現在の時刻は、深夜二時。草木も眠る丑三つ時と呼ばれるその時間帯に、ぬいとごんの妖夫婦は、夜空を颯爽と翔けていた。それはなにも比喩表現ではない。本当に大気を蹴りあげ空を翔けているので、他にどう表しようもないのだ。
ぬいとごんは、妖怪の中でも狗神と九尾といって結構力がある方だ。これまでは“ご隠居”やら変態魔女のせいでそんな印象はあまり抱かれなかったが・・。普通の妖怪はそもそも空を翔けることはおろか人間に化けることも出来ないモノもいるので二人の妖怪としての実力の高さが伺えるというものだろう。
二人とも今は人間の姿ではなく、本来の獣の姿で寄り添うようにして目的地へと向かっていた。金と銀の美しい毛を互いに風にそよがせて、ぬい達夫婦は空を翔ける。
そして数分後、ぬいとごんは目的地である烏山の奥深く、彼らが『天狗池』と呼ぶ場所へと到着していた。ぬいとごんは地面に降り立つなり、人間の姿に戻る。
「おっとっと・・。」
着地の際少しよろけてしまったぬいの背中を、ごんがそっと支える。ぬいは、愛する夫の手の温もりを感じて嬉しくなり、「ありがと♡」と囁いた。そんな愛しのハニーの頬にごんはそっと唇を寄せてその感謝に応える。この光景を鏡夜が見て居たら「リア充爆発してください!」とか言っていたかもしれない。ラブラブな夫婦は、手をつなぎながら目的地に向けゆっくりと足を運んでいった。このラブラブワールドに、誰も入ってくることなど・・
「あら、ぬいとごんじゃない!相変わらずラブラブっぷり見せつけちゃって~。嫉妬しちゃうワ!」
二人だけの空間に入り込んでくる陽気な声。ぬいは、額に青筋を浮かべながらもその命知らずの闖入者に笑顔で対応した。
「・・あら、『火車』。久しぶりじゃない。撲殺と絞殺、どっちが好みかしら♡」
「ヤダ!ぬいちゃん冗談キッツイわネ!オカマはそう簡単には死なないのヨ?」
そう言ってこちらに投げキッスと一緒にウインクを送ってきたのは、死者の魂を地獄へと送り届ける妖怪である『火車』。『火車』とは種族名であり彼個人の名前もあるはずなのだが、その名前を知るものはいない。
本当の姿は、大きな猫のような見た目だが、人間に化けた彼は、紫色の髪をロングに伸ばした、身長190センチ、九頭身で中性的な顔立ちのモデルのような見た目なのだが・・先ほど本人もそう言ったように、自他ともに認めるオカマである。
ぬいは、先ほどは脅しのような発言をしたものの、『火車』とは本来そこそこ仲もよいので、すぐ表情を和らげて改めて『火車』に話しかけた。
「定期集会はまだ始まらないの?というか、お爺様はまだ来ていないの?」
「それがまだ来てないのヨ~。一体何してるのかしラ・・・。」
『火車』は頬に手を添えてはぁ~・・とため息をつく。そして、そんな『火車』に花束を差し出す白いタキシードの男が一人・・。
「やあ、素敵なお嬢さんたち☆ハンサムな男が来たからには、ため息なんてノン、ノン!だぜ☆」
「あは♡アンタって本当に存在自体がムカつく野郎よね、ハンサム。」
その男はもちろん、晴明の店に食材を届けている無駄にイケメンな豆腐小僧、ハンサムである。(本名は次郎吉)ぬいは、氷点下零度の視線でハンサムを見つめる。彼女にとって、愛しのダーリン以外の男はたとえイケメンだろうと道端に落ちているゴミとなんら変わらないのだ。そして、そんな妻の表情をうっとりと眺めているごんはもう駄目なレベルで妻にぞっこんである。
「あら、ハンサムちゃんじゃな~い。相変わらず見事なハンサムっぷりね!惚れちゃうゾ!」
「HA・HA・HA☆全ての女子を受け入れる器があってこそのハンサム・・。惚れられる覚悟なら、一億年と二千年前から出来てるぜ☆」
「キャー!カッコいい!抱いてぇぇ!!」
「わあ☆何この茶番。付き合いきれな~い。・・というわけで、ぬい離脱しまーっす♡」
とんだ茶番劇を繰り広げる二人から、ぬいは笑顔のまま自然に距離を取ろうとする。しかし、その試みは、別の知人により潰されることとなった。
「久しぶりだねぬい。」「いや、最近会ってたっけ?」「まあどっちでもいいか。ハローぬいとごん。」
「・・久しぶりね~、白黒。」(うわ、まためんどくさい奴に会っちゃったわ。)
ぬい達に話しかけてきたのは、がしゃどくろと呼ばれる妖怪の白黒。がしゃどくろというと普通禍々しい巨大な髑髏のイメージだが、彼女はそんなイメージとは全く違う外見をしている。
その名前の通り、白と黒のゴスロリ衣装を身に纏った彼女は、その陶磁器のような白い肌と幼い外見も相まって大変可愛らしい。ただ、少し変わった点として、右半身が白、左半身が黒というように衣装の色がはっきりと分かれているのだ。しかも、ツインテールの左右も衣装と同じ配色、瞳の色も右が白で左が黒のオッドアイ、左手には白い包帯を巻いていて右手には黒い手袋をはめているなど、どこまでも『白黒』にこだわった外見をしている。
しかし、その言動はいまいちどっちつかずなことが多く、こちらに関しては『白黒はっきりしない』。昔から認識のあるぬいから見てもミステリアスな部分が多い・・というか面倒臭い妖怪トップ3に君臨する。
もちろん、残りの二人は『火車』とハンサムである。
「あら!白黒ちゃんも来てたのネ!今日もキュートキューティーキューティクルね白黒ちゃん!」
「君の白と黒のコントラストはまるでゼブラ・・すなわちシマウマみたいでハンサムポイント10点あげちゃうぞ☆」
「うれしいな。」「いや、うれしくないな。」「・・どうでもいいか。とりあえずハロー。」
白黒への対応をしている間にいつの間にか『火車』とハンサムもぬい達の元に戻ってきてしまった。既にぬいのストレス値は半端ではない!ぬいの笑顔がどす黒いオーラを放ち始めたまさにその時。
―ビュオオ!
という音と共に、既に何十体もの妖怪が集まった池のほとりに一陣の風が吹き抜け、一瞬でその場の空気が変わった。あの三大公害妖怪(ぬい認定)達ですら、真剣な表情に変わる。しかし、ぬいだけは待ちわびたその人物の登場に瞳を輝かせた。
「お爺様!お待ちしてました!」
そのぬいの声に、池の中心にある岩へと降り立った彼は、ふっと口元を綻ばせてこう答えた。
「・・ああ、ぬい。待たせて悪かったな。」
木々にも似た緑色の髪は無造作に伸ばされ、山伏衣装をはおった立ち姿は、背筋がピンと伸び全く年を感じさせない。そして彼の背から生えた漆黒の翼は、先ほどぬい達が翔けた夜の空よりも美しく、妖艶な輝きを放っていた。
彼の名は“雷神坊”。この烏山に住む天狗達の中でも、最も大きい。所謂『大天狗』と呼ばれる妖怪であり、ここら一帯の妖怪達を治める長であり、そして・・ごんとぬいの育ての親でもあった。
そして、一言も台詞がないごんさんであった・・。
次回、響也視点で第二章開始です!今回から語り手は主に響也が担当します!