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共通シナリオ:第一章 姫憎し

『…お腹すいたよ…もう死なせてよ……』


幼い頃に両親を亡くし、空腹で死にそうなで、ここで一生を終えるかと思ってた。


『このパン、食べていいよ』


目が霞みながらもなんとか生きてた私は、ある一人の女性騎士に出会った。


『剣、持ってみる?』


それまで一番なりたいのははすべての女の子の目標であろうお姫様だった。

けど騎士になる女性はとても珍しく興味がわいて、そして彼女は優しかった。

辛くてたまらなかった私は、あの人と話している間にいくらか楽になった。


私は平民でそしてお金はない。いくら働ける年になっても積み立て金のようなものがなければ入団はできない。

重かった剣を握れるまで成長したとはいえ、入る前に夢はたたれた。


毎日代わり映えのない貧しい生活をしている。

なにかかわったことがおきないかと常々考えていた。


そんなある日の朝、だれかがドアを叩く音がしたので、あたしがおそるおそる木製のドアを開けてみると、目の前に威圧感のある銀色の鎧を着た男が立っていた。


「久しぶり」

声を聞いてようやく誰かわかった。


騎士の鎧を着てるから一瞬、誰かわからなかったけど幼馴染みのシラルだ。


およそ二年振りに再開した彼を安いお茶でもうしわけなく思いながら持て成す。


「俺、騎士にならされた」

せっかく皆の憧れ、騎士の格好なのにため息をつくなんて勿体無い。


「さすがは貴族ね」

シラルは貴族のお坊っちゃんらしく行儀よくボロボロの椅子にこしかけた。


「俺は気楽な平民に産まれたかった」

シラルには、シェラート=ヴェンタという長い名前がある。

ちなみに彼は子爵家の次男、子爵がなんなのか平民の私にはよくわからない。

平民からすれば貴族は取り合えず偉くてお金持ちの印象しかないのである。


「私は貴族に生まれたかったなー」


小さな頃から綺麗なドレスを着た貴族のお嬢様になりたかった。

平民育ちでしつける人もいないからおしとやかにはできないししなくていいと思っている。

でもたまにはお嬢様のみたいにおしとやかに、わたくし、なんていってみたいけど、私は平民らしくつつましい生活をしていなくちゃ。

綺麗なドレスを着ることや馬車移動はきっと生きている間には出来ないことだから。


「よかったら一緒に城にいかないか?」


城に行く、つまりお姫様や王子様のいるあのキャッスルに行くと言うこと?

いきなりのことで驚いたけど、断る理由もない。

私は二つ返事で承諾した。


「新人諸君、間もなく陛下の――――」

「…おい騎士団に鎧を着た女がいるぞ」

「はあ?そんなわけ…あ本当だまあ可愛いからいいじゃないか」

「そうだな可愛いからいいか」


他の団員の雑談が聞こえた。

でも、敵意はないようなのでよかった。


騎士団に入ってもう一年になる。――実はシラルの城へ誘いは騎士団員にならないかという誘いだった。

てっきり私は下働きの雑用でもやるのかと思っていたのだが、あの女魔剣士マゼイルナ=キーケーンが活躍した話に便乗して、公募の少ない女は無料で騎士団員になれるという。もちろん採用テストもあった。


陛下の挨拶が終り、騎士団の仕事をして一週間が経過した頃、見慣れない衣服を纏い眼鏡をかけた知的な男性が重そうな荷物を持ちながら通路を歩いていた。


「すまん君達、通行出来ないんだがどけて貰えんか」

よろけながら歩くので心配になって、助けるべきかあぐねっていると、他の団員が助けていた。


「またなんか重そうなもん持ってんな」

「あ、悪い」


せっかくなので私も声をかけてみよう。


「あの、こんにちは魔法使いさん?」

「はァ…?

あーはいはい紅一点にして騎士団の一輪の華と名高い女騎士殿とお会い出来て光栄ですー」


明らかに嫌そうな顔をされた。

何も悪いことはしていないのに少し悲しい。

だいたいそんな肩書き聞いたことがない。


◆シルフィンドラ姫の出立


「あーダルい」

「だらしないわねー騎士樣ったら侯爵家の名が泣いているわ」

気を抜いてだらける騎士に、華やかなドレスの少女が言った。


「そういうお前は公爵家の令嬢だろ。おしとやかにしなくていいのかよー?」

騎士はしかたなく起き上がり胡座をかきながら

やれやれ、といったポーズを取る。


「アナタの前でおしとやかにする必要がないわよ?」

「ふーん」

騎士は令嬢をじっと見つめ、ニヤニヤと笑う。


「何よ」

眉間にシワを寄せながら

「なんでもないですー公爵令嬢樣~」

令嬢が怒りそうなので、その前に騎士はこの場から逃げようとする。

「なによその態度!腹立つ!」

案の定令嬢は激動し、騎士を追いかけようとドレスの裾を持ち上げようとした。


「お二人方、精が出ますね」

しかし令嬢の背後から気品あるすずやかな声が。


「はっ申し訳ありません姫様」

今にも飛びかかりそうだった令嬢は背後に王女がいた為、ぴたりと動きを止めて姿勢を正した。


「姫様の御膳とは知らず…至らぬ真似を致しました」

騎士は王女に傅きながら非礼を詫びる。


「あらあら…」

王女は二人の変わり身の速さに、唖然とするしかなかった。


◆ある国の姫の野望


私は第一皇女(こうじょ)・アスライラ。

代々女人(にょにん)が継いできた女皇(じょこう)になるべくして育てられた嫡女である。

しかし一番始めに生まれた正夫(せいふ)の子であってもいつ足元を救われるかわからない。

少しの油断が命とりである。


いつどこに敵がいるとも限らない為、情勢を調べる事も自分でやるしかない。


「次期女皇は妹君のイセリー様よ」

「あらどうして?アスライラ様とは比較するのもおこがましい男妾の子でしょうに」

「だって…ンナンフェ女皇様がおっしゃっていたもの」

「その話ならわたしも知っているわ」


女中達の会話から聞き捨てならない情報を入手出来た。


私は一番目に生まれて、期待されて、この先正式な次期女皇に選ばれ、帝王となるべき学びを受ける義務がある。

国を背負うという重大な役目が私にはあるのだ。

先に生まれたものとして妹に譲るわけにはいかない。


私が女皇になるために、どうにか妹派を潰さなくてはならない。


◆皮肉にも目障りな姫


私が小さな頃に母は女中をしていた。

そこで遊び相手として連れてこられ、知り合ったマローという幼馴染みがいる。

伯爵家の次男坊で明るく人なつっこい少年だ。


「今日こそオレとデートしよっ」

「駄目だ」

「え~なんでだよ~」

「私には姫様を護る任務がある」

「そんな…」


気さくで優しいのが彼のいいところではあるが、もう子供ではないのだから自分の立場を考えてもらいたい。


「クレイファ~お友だちですか~?」

「あっお初にお目にかかります!シルフィンドラ姫様」

姫はきれいだし、マローが恋慕しないか心配だ。

マローのように突っ走るタイプの少年が、姫に叶わぬ恋など苦しい思いはしてほしくない。


「いいのよ~かしこまらなくて~」

「あの…友人です。幼馴染みというか腐れ縁といいますか」

一瞬姫が悲しそうな顔をしていたが、役目に反する詮索はしない。


マローを帰らせようとしたが、姫のご意向で三人で花を摘みに行くことになった。



――――のどかな雰囲気に飲まれながら、城裏に咲く花を眺めていた。


シルフィンドラは隣国から来た王女。祝言<しゅくげん>の儀を終えたのち、この国の未来の王の妃となる。


近日では女騎士が増えてきてはいるが、この国で女騎士をやっているのは私だけ。

なので彼女の護衛に抜擢されたのは必然だった。


たいして思い入れのある相手ではないが、王子の大切な結婚相手ならしかたない。護るのが義務ならば、そうする。


「クレイファ=モア」

「スキャルバード殿下!?」


私は驚いて立ち上がる。まさか王子に名を呼ばれるなんて――――


「プリンセス・シルフィンドラを外に連れ出すなんて、危機感がなってないんじゃないか?」

「王子、わたくしが無理に彼女を連れ出したのですわ」


シルフィンドラは抗議するが、そんな言い訳が通用することではなかったし、私は王女のことなどなにも考えていなかったのだ。


私をかばうことが演技なのか、素で優しいのかはわからないが―――


「もうしわけありません。シルフィンドラ様、こちらへ……」


―――私情を挟んではいけない。いい加減覚悟をきめなくてはならないんだ。心の中で私は呟く。


王女、私はあなたが嫌いです。



―――姫はセキュリティ厳重な部屋で就寝し、私はようやく警護を離れられる。


私はただの平民あがりの臣下、幸せそうな王子様を遠くから見ているだけでいい。なんて思えたらどれだけ素敵だろう。


「元気ないな、どうした?」

「あ、シラル!」


久々に幼馴染の姿をみる。


「というか久しぶり」

「ああ、うん」


私は元々複数いる王子の警護の一人で、外交者や要人警護の係配属。

彼とはお互いに忙しくて中々会えない。


「それで、さっきから難しい顔してるが、なにか悩みでもあるのか?」

「……別に」


私はシラルから顔をそらす。


「わかった。姫とうまくいってないんだろ」

「そうだけど、なんで?」


「お前が悩むのは人間関係くらいだろうと思った。それに今までは悩みとかそんなそぶりなかったから、新しく来た人間が原因だろうって」

「そっか」


相変わらず鋭いなあ。



「貴様らよくきけ、吸血鬼(ヴァンパイア)が出た!!」


「吸血鬼……」

「今時吸血鬼?」

「よって城の警備を強化せよ!!」


―――昨晩、吸血鬼に血を吸われたというメイドが瀕死の状態で医務室へ運ばれたらしい。


「最近ヴァンパイアが出てるんだってよ!」


さっそく噂を聞き付けたマローが慌てながら私にいった。


今は姫が近くにいない。なぜなら朝早くなので姫はまだ寝ているし警護も別の人間のシフトだからだ。


「その話なら知っているから」

「……昨日はそっけなかったから嫌われたかと思ったあ!」


騎士の体面をつくろう必要のある姫が近くにいないときは普通にくだけた話方をしている。


「で、なんで吸血鬼がでたの?」

「さあ冬眠でもしてたんじゃない」


「そっかとにかくクレイファは気を付けてね!!」

「えああ、うん」


そういえばなぜ何年も姿を表さなかった吸血鬼がいきなり現れたのか謎だなあ。


「なにを話してるんだ?」

「ああ、シラル」

「クレイファになんの用だよシェラート」

「別に、往来で機密的な吸血鬼について話してたから注意しにきたんだ」


この二人が話しているのを今まで見たことがなかったけど、仲はよさそうに見えない。


「吸血鬼についてなら公表したほうがいいよね。事前に知っていれば身を守れるんだから」


たしかにマローの意見はただしい。今後は城外で被害が増える可能性もあるのだから。


「……今回吸血鬼の被害にあったのは若い女。つまり吸血鬼は深夜に歩く男というわけだ」


シラルは吸血鬼に会ったこともないだろうし、確証もないのになぜか特徴を断言した。


「なんで?」

「女の吸血鬼なら被害にあうのは男と本にかいてあった」


なるほど、そういうこと。


「でもさ吸血鬼が一人だけとも限らないよねー」


マローは腕を組みながら言った。


「吸血鬼は基本的に単独行動だと本にはあるんだ」


シラルは吸血鬼についての本を信用している。


「日の光の他に苦手なものは?」

「ニンニク、十字架、聖水、木の杭、銀の弾丸らしい」


「でもそれライターの脚色説もあるよねー」


マローが吸血鬼の映画についての話に乗ってきた。


「だが弱点であってほしい」

「まあそうだよね。でなきゃニンニク料理食べてきた意味ないし……」


マローは朝食にパパロンテーノを食べたようだが、そもそも吸血鬼の出る夜に食べなきゃ意味ないんじゃない?

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