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出来損ないの魔剣使い  作者: 無頼音等
第一章 魔剣の覚醒
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第4話 スパルタの成果を示す時

第3話を手直ししていたら、大分印象が変わってしまったので、そのことをここでお知らせします。

あと200くらいでPVが1000逝きそう。

 『魔霊の森』でアンと共同生活(?)を続けて一週間。

 俺はアンから戦い方を始め、この世界に関する知識を色々と叩き込まれていた。

 ……それも有り得ないくらいのスパルタ加減で。

 朝から晩までモンスターと戦わされ、夜は明るくなるまで基礎知識を学ぶ。そんな生活をこれまで延々と続けていたのだ。当然、眠る時間なんて殆どない。

 もしもアンが呪われた装備じゃなかったら、間違いなく捨ててたね。


 『問題! この森のように瘴気が自然に発生している、負の力場のことをなんと言うでしょうか!?』

 「……ダンジョン」

 『正解! じゃあ次の問題行くわよ。……ダンジョン内で迷った時、外に出る方法は大きく分けて二つあります。その方法とは何か!?』

 「……魔法でワープするか、ボスモンスターを倒す」

 『正解! ……そういうわけで、今日は昼までぐっすり眠って良いわよ。起きたらボスモンスターを倒しに行くからね!』

 「ああ、はいはい。……やっと眠れる」


 今日も空が明るくなるまで、基礎知識の復習が続いた。

 恐らく、今の俺ならこの世界で何の問題も無く生活することができるだろう。

 それくらいこの世界について詳しくなった自覚があるし、この辺りのモンスター相手なら負けない自信がある。……誰がここまでやれと言った。

 そんな怒りを抱きつつも、俺の意識は強烈な睡魔に呑み込まれ、あっさりと闇の中に沈んでいった。






*****



 一週間前。

 互いの情報を共有化した後、アンの放った第一声は「信じられない」の一言だった。

 確かに俺の不遇は信じられないほど理不尽なものだったが、どうやらそういう意味じゃないらしい。

 アン曰く、


 『勇者として召喚されたにも拘らず、潜在魔力がDってどういうこと!? 有り得ないんだけど!』

 

 ということらしかった。

 ……いや、俺もそこは疑問に思ってたけど、はっきり言うなよ。傷付くから。

 何故この世界ではそこまで潜在魔力が重要視されるのだろうか。それを知るにはまず、魔力とは何かを考える必要があるだろう。


 この世界の大気には魔素と呼ばれる未知の元素が混じっており、人々はその魔素を体内に取り込むことで魔力を生成する事ができるらしい。

 そして人々が生み出す魔力とは、この世界において非常に重要な役割を持っているのだ。

 それが魔法。世界の理を操り、万物を生み出すことができる奇跡の力である。

 この魔法によって文明は成り立ち、人々は豊かな生活を築くことができた。

 故に魔法は人々の力であり、世界の財産と考えられている。


 ただし、魔力を生成する力――魔素を取り込める量には個人差があった。

 それが潜在魔力と呼ばれる「才能」だ。

 潜在魔力は最高値のSを始め、A、B、C、Dとランク分けされている。勿論、Dが最低値である。

 このことから潜在魔力が高い者ほど優れ、低いものは劣っているという考え方が発展したらしい。

 ……つまり、潜在魔力がDの勇者なんて、碌なもんじゃないってことだ。


 『はっきり言ってイレギュラーよね。それも悪い意味で』

 「お前、少しはフォロー入れろよ。泣くぞ?」

 『じゃあ一つ教えてあげましょうか。勇者には潜在魔力の他に、ある特殊な力が備わってるのよ。もしかすると、シュウはそっちの方に特化してるのかも』

 「マジか! ……って、もしかして今朝言ってた勇者の力ってやつか?」


 アンの推測を聞いて、俺のテンションが一瞬だけ跳ね上がる。

 しかし、すぐに今朝の話を思い出して、俺の気分は一気に沈んだ。

 俺の体は異常な回復力を持っている。恐らく、それが俺に宿る勇者の力なんだろう。

 それはそれで十分使える能力だとは思うが、瞬時に回復できるわけじゃないし、死んでしまえばお終いだ。

 はっきり言って、そこまで期待できるチートじゃない。

 だが、アンは落ち込む俺と違って、全く別のことを考えていたようだ。


 『シュウの回復力は凄かったけど、あれが勇者の力とは思えないのよね。確かにシュウの肉体に勇者の力が宿ってる可能性は高いけど、なんていうか、あの回復力はただの副次効果? みたいな気がするのよ』

 「……それって、別の能力が俺の体に宿ってるってことか?」

 『そうね。聖剣時代に知り合った勇者達の能力を考えてみると、そうとしか思えないわ』


 昔を思い出しているのか、アンは懐かしそうにそう言った。

 ちなみに、前にアンのマスターだった人は、勇者の力を魔力に宿しており、五秒間だけ時を止めることができたそうだ。

 その話を聞いた時、何故か俺の脳裏に背後霊を宿した二人の男が、「オラオラ」「無駄無駄」と叫びながら殴りあう映像が流れた。……これも忘れてしまった記憶なのか? よく分からん。


 『とにかく、隕石を落とすような大魔法に頼れない以上、シュウは純粋な剣士スタイルで戦っていくしかないわね。良し! 明日からビシバシ鍛えるわよ!』

 「はぁ!?」

 『これはマスターの安全を考えてのことよ。我慢しなさい!』


 まあ、そんな感じでアンのスパルタ教育が始まった。





*****



 「……ん? もう昼か?」


 俺が欠伸をしながら起き上がると、傍に突き立っていたアンが張り切った声で言った。


 『さあ! 私達の強さを知らしめる為、早速ボスを倒しに行くわよ!』

 「……いや、もう少し寝かせろよ」

 『何言ってんのよ。どうせもう全回復してるでしょ?』

 「……」


 ずばりと言い当てられ、俺はアンから目を逸らす。

 無駄に高い回復力を持つ自分の体が恨めしかった。


 「……はぁ」


 一度だけ、アンを思い切り上に投げ飛ばして『魔霊の森』を空から確認してもらったことがある。

 しかしその結果、透明な何かに阻まれて、アンは弾かれるように落ちてきた。

 そう。この『魔霊の森』には侵入者を閉じ込める為の結界が張られていたのだ。

 普通の手段で森の外へ出ようとしても、見えない壁に邪魔されて脱出できないのである。

 きっとあのクソ聖女の仕業に違いない。あのアマ。次会ったら絶対ぶん殴ってやる。


 「せめてワープが使えればなぁ」

 『せめて私の力が封印されてなきゃ、こんな結界も消滅させられるんだけど』

 「……まあ、無い物ねだりしてもしょうがないか。よし、さっさと終わらせちまおう」

 『ま、結局そういう結論になるわよね』


 正規の出口が使えない以上、俺達がこのダンジョンから出る方法は一つしかない。

 それはこのダンジョンを支配するボスモンスターを倒すことだ。

 だから互いに理想論を口にしつつも、俺達は迷わず目的地へと歩き出していた。

 幸い、ボスモンスターの居場所はこの一週間で割り出してある。


 『シュウ……分かる? 他の雑魚とは違う、この濃密な魔力を』

 「ああ。魔法を習得したおかげか、はっきりと感じ取れる」

 『潜在魔力はBってところね。中々の強敵だけど、私達の敵じゃないわ!』

 「だからその自信はどっから湧いてくるんだ」


 アンの強気な発言に苦笑し、俺は魔力を辿り続ける。

 邪魔なモンスターは即座に斬り捨て、ひたすら真っ直ぐ目的地へと向かう。

 そして俺達が目の当たりにしたのは、ぽっかりと黒い穴が空いた洞窟だった。

 夜の森とは比べ物にならないほど暗く、一寸先は何も見えない、完全な暗黒。

 この中に入るのは正直ちょっと、いや、かなり遠慮したい。

 俺は無意識の内に弱音を吐いていた。


 「……なあ、帰っていいか? これ絶対ヤバイ奴がいるよ。雰囲気最悪じゃん」

 『ちょっとぉ! 何これくらいでびびってんのよ! 捨てられたとはいえ勇者なんでしょ! しっかりしなさい!』

 「捨てられた言うな! あの女を思い出してムカつくだろうが!」

 『じゃあその女を見返す為にも、さっさとダンジョン攻略しちゃいましょう』

 「……くっ! 分かったよ!」


 嫌な予感はするが、こんな森の中で一生を過ごすなんて絶対に御免だ。

 俺は敢えてアンの挑発に乗り、怒りで恐怖の感情をねじ伏せる。

 そして半ば勢いに任せて、洞窟の中に足を一歩踏み入れた。


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