PART 2
一週間前のことです。ある窓枠の下に,奇怪な小人のようなものが,チョークで書かれていたのです。この紙のように,それらは大量にいて,踊っていました。夜のうちに書かれたのです。私はすぐに洗い流し,妻にそのことを言いました。すると,驚いたことに彼女はひどく真剣な様子で私にこう頼んだのです。この先何か届いたら,それをみせてほしい,と。一週間は何も来ませんでした。しかし昨日の朝,庭の日時計の上にこれが置かれていたのです。私はそれをエルシーに見せました。それを見て彼女は気絶しました。それから妻はずっと,夢の中にいるような,目は半開きでいつも恐怖に打ち震えているのです。そんなことがあって私はあなたに例の手紙を送ったのです,ホームズさん。警察に言っても笑われるだけでしょう。しかしあなたならどうすればいいのかを教えてくれると思ったのです。私は金持ちというわけではありません。それでも最愛の女性を恐がらせる危険なことがあるならば,私は彼女を守るために最後の1ペニーまで払う覚悟です。
「あなたは―――」
とうとうホームズは口を挟んだ。
「あなたは奥さんに直接声をかけて,彼女の秘密を二人で共有するのが最良の方法だとは思わないのですか?」
カビット氏は首を振った。
「妻とは,彼女の過去について何も言わないという約束で婚約しました。もしエルシーが話したいのならば,そうするでしょう。」
「なるほど。わかりました,全力を尽くしましょう。これらの踊る人形は明らかに意味があります。もしこれがランダムなものだったら,我々が解決することは不可能です。しかし,逆にこれが法則性を持つのなら,きっとことの真相に辿り着けるでしょう。ただ,これだけの手掛かりでは,さすがに何も判りません。ここは一度ノーフォークに戻り,厳重警戒を続けてはいかがでしょう?そして,新たな「踊る人形」が見つかったら,その正確な写しを持ってきてください。」
カビット氏が去った後,シャーロック・ホームズは考え込んでいた。何日かの間,何も連絡は来なかった。彼が,駅から馬車で真っ直ぐやって来るまでは。カビット氏は疲れ果てた目,しわの入った額で,とても憂鬱そうに見えた。
「あなたに調査してもらおうと,新しい踊る人形の絵を持ってきました。そしてさらに重大なことに,私は犯人とおぼしき男を見たのです。」
「なんと―――これを書いた男をですか?」
「ええ,書いているところを見たのです。しかし,順番に話しましょう。私があなたのところから帰ってきて,翌朝見たものが,新たな踊る人形の集団だったのです。コピーを持ってきました。これです。」
カビット氏は紙をテーブルに広げた。これがそのコピーである。
(暗号文)
「コピーをとってから,その人形は消しました。しかし,二日後,また新しいものが書かれていたのです。これです。」
(暗号文)
「三日後には,紙に書かれたメッセージが日時計の上に置かれていました。私は犯人を待ち伏せすることにしました。それで拳銃を出して書斎にいました。午前二時頃,窓のそばに座っていたときです。あたりは月光以外なにも見えないなか,背後に足音が聞こえました。振り返ると,ガウンを着た妻が立っていました。彼女は,ベッドのところへ来るよう私に頼みました。」
「妻が話していると,急に彼女の顔が月光よりも蒼白になりました。そして私の肩をぎゅっと握り締めたのです。物置の陰で何かが動きました。私は闇の中,倉庫の角をまがってゆっくりと忍び寄る影を見たのです。すぐに拳銃を発砲しました。妻は激しく私を抱き締めました。引き剥がそうとしましたが,彼女は必死ですがり付いてきました。ようやく離れて,物置のところに着いたときには,人影はありませんでした。」