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明日に備えて

「ただいまー」


「お帰りお兄ちゃん」


「お帰り陶冶」


 帰宅してリビングのドアを開けると、ねーちゃんと妹がソファに座ったまま、顔も上げずにお帰りを言ってくる。それぞれ本やスマホに熱中していて、オレなんかにかまっているヒマはないらしい。


 中学生の妹は大音量でアニソンを聞いているようで、頭に付けたヘッドホンから、今期アニメのオープニング曲が漏れ出ている。


 高3のねーちゃんは、17歳の美人女子高生に憧れる世の青少年に見せたら、現実が嫌になるであろう気持ち悪いニヤけ顔でよだれを垂らし、絶賛腐りモードだった。


 2人とも、近所じゃ美人姉妹で有名なのに……。


「あら、お帰りなさい陶冶ちゃん」


「ただいま、母さん」


 オレの帰宅に気付いた母さんが、キッチンから顔を出してきた。


「遅かったじゃない。こんな時間まで何をしていたの?」


「別に……友達と……」


 ちょっと異世界行ってた。なんて言えないな。


「勉強してたんだよ、居残りして」


「まあ、友達!? よかった、ようやく友達ができたのね……ずっと心配していたのよ、陶冶ちゃん。ああ、母さん嬉しいわ! 今度家に連れてきなさい」


 高校でなかなか友達ができなかったのを心配していたのか、母さんはすごく喜んでいた。


 アリスを家に、ねえ。タンスの引き出しをほじくられるかもしれないな。


「ああ、考えとくよ。それよりさ、何か食うもんない? 腹減った」


「冷凍のピラフがあるから、ちょっと待っててね。……あら、その指輪?」


「あ」


 アリスにもらった指輪に気付く母さん。さて、どう言い訳するか。


「もらったんだよ、友達に。オレはいらないって言ったんだけどさ。なんかばっちいし」


「そう……そのお友達、大切にしなさい。これから陶冶ちゃんには辛いことが待ち受けているかもしれないけど、そのお友達と乗り越えていくのよ? 大丈夫、母さんの息子だもの」


 母さんは指輪を見て、どこか物憂げな顔をしてそう言った。


「え? あ、ああ」


「ふふ。25年前を思い出しちゃった。さ、陶冶ちゃんはテーブルに座って待っててね」


 嬉しそうに微笑むと、母さんはキッチンへ引っ込んで行った。


 25年前? 母さんは確か今年41歳だから……16歳の時の話か。高校時代の母さんに、何かあったのかな。


 ま、どうでもいいや。


 それよりも、明日だ。新しい仲間を探すってアリスは言っていた。その後、エルフ村の長老の話を聞くとも言ってたな。


 明日は忙しくなりそうだ。さっさと飯食って風呂入って、寝る前にゲームしよっと。

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