オレの魔力が伝説級だった件について
「あれ。ここは……」
目を開けると、そこはどこか知らない天井で、オレはベッドで寝ていたようだった。
「誰の家だ、ここ」
鳥のさえずりと、木製の窓から差し込む太陽の光が、爽やかな朝を感じさせる。
部屋の中を見回すと、オレ以外の人間は誰もいない。とりあえず……この家の人を探すか。
ベッドから抜け出して立ち上がると、とたんに体のあちこちがミシミシと悲鳴を上げ、オレはその場で膝を付いてうずくまった。
「い……てえええええ!!」
全身筋肉痛だ。その上、風邪を引いたときみたいに頭にモヤがかかっているような、最悪の気分だった。
「なんだよ、これ……」
「魔法を使った反動による後遺症です、トウヤ様」
「レリア?」
「お加減はいかがでしょうか?」
レリアは床にうずくまっているオレに近寄ると、背中を優しくさすってくれた。
「魔法って、こんなにしんどいのかよ……」
オレはベッドに腰を下ろすと、未だ震える足を見てそう呟いた。
「いえ……トウヤ様は、加減を知らずに全魔力だけでなく、生命力まで使用してしまったのです」
つまりオレは、RPGでいうところの、MP全部だけじゃなく、HPまでMPに変換して使ったっていうことか。
「そ、そうなのか……それで山1つ吹っ飛ばしちゃったわけだ……」
「生命力を使ったところで、あそこまでの威力にはなりません。トウヤ様の魔力量が常人に比べて異常に高いのです。伝説の3賢者に匹敵か、あるいはそれ以上の」
なんか知らないけどオレ、伝説級の魔力を持っているらしい。ていうか、伝説の3賢者って何それかっこいい。
「トウヤ様の才能なんですよ、それは。とってもすごいです!」
才能、か。
現実世界で大した取り得のなかったオレが、急に降って湧いた魔力という才能に対して、実感がない。
これで学校の成績があがるわけでもないし、一流企業に就職できるわけでもないんだから。
でも……戦う力がある。この力があれば、何かできることだってあるはずだ。今までパッとしない人生を歩んできたオレにとって、これは転機になる。
「やってみるか」
この世界を救うかっこいい勇者になる。なってやる、絶対。
「トウヤ様。今後は魔法の訓練が必要ですね。適切な魔力の運用は、基本中の基本ですから」
「そうだな。魔法を使うたびに倒れてたんじゃ、かっこつかないもんな。そうだレリア。エルフ村の人たちはみんな無事なのか?」
「はい! トウヤ様のおかげで、全員無事です! みんな、トウヤ様に感謝していますよ。パンツの勇者様が現れたって! きっと、一週間前の戦いは、この世界の歴史の一ページに残る出来事になるでしょう。勇者様はパンツ一枚で果敢にも山賊へ立ち向かわれた、と!」
「パンツの勇者はやめてくれええええ! それは黒歴史だ……」
ん? 待て。今、レリアは一週間って言ったか?
「レリア。オレ、どれくらい寝ていたんだ?」
「一週間です。わたくしが付きっきりで看病しておりました! ほめてください!」
「ああ、ありがとうなレリア。にしても、一週間……って。それは、それはやばいよ……」
学校どうなってんだ? 家は? 深夜アニメ録画してねーし、欲しかったゲームの発売日過ぎてるし!
「それなら大丈夫だよ、陶冶くん。心配はノーサンキューです」
めちゃくちゃうろたえていると、今度はアリスが部屋に入ってきた。
「アリス……どういうことだ?」
「この世界の時間と、現実世界の時間の流れはまったく違うんだよ。あ、冗談はよし子さんって顔してるね君!? 信じてよー!」
アリスはオレの隣に腰掛けると、再び話し始める。ていうか、冗談はよし子さんって何十年前の人間だお前は。知ってるオレもオレだけど。
「んー、もう体は大丈夫……じゃなさそうだね。ま、あれだけデカイのぶっ放せば、反動もハンパないよねー。ふむふむ、よしよし。アリスさんの回復魔法、発動しちゃいますか!」
「お、おい?」
戸惑うオレに構わず、アリスはオレの額に掌を当て、瞳を閉じた。
「ヒーリング」
するとどうだ。一瞬部屋の中は青白い光に包まれて、オレの体からみるみる痛みが引いていった。
いや、痛みが消えただけじゃない。なんだか、こう……心が暖かくなったような……癒された気持ちになった。
アリスの魔法は、体だけじゃなく心にも作用するのか。
「これが私の回復魔法だよ、陶冶くん!」
「アリス様の回復魔法は、とっても暖かくて気持ちがいいって、村のみんなにも評判なんです!」
「これで体はだいぶ楽になったはずだよ、陶冶くん! アリスさんの回復魔法は肩こり、リウマチ、冷え性、頭痛、さらには便秘も解消しちゃう超スグレモノだからね!」
「温泉みたいな回復魔法だな。確かにかなり体が軽くなった気がする」
試しにベッドから立ち上がって、軽く屈伸してみる。すると、さっきまでの激痛がウソのように消え失せていた。すごいな、これが回復魔法か。
「で? この世界とオレ達の世界の時間の流れが違うってのは、どういうことだ」
「ふっふっふ~。ちょっとアリスさんと木漏れ日デートしましょうか、陶冶くん! さあさ、レッツゴー!」
「ちょ、引っ張るな!」