亡国の姫君
ラヴィーはげふっとゲップをして、ふんぞり返ってそう言った。
元々ランドールで四天王の1人と戦うつもりだったしな。シャリンさんの言うとおり助力は期待しないでいたけど、向こうからの共闘の申し出を断る理由が無い。敵の情報も無いし、現地のことを熟知している人間は必要だ。
オレがその気になれば……制約の指輪を外して全力で魔法を叩き込めば、四天王を城ごと吹き飛ばすことも可能だろうけど……それはただの破壊行為にしかならない。目的は四天王を倒すことじゃなくて、ランドールを取り戻すこと。
あまり深く考えなかったけど、戦後のことも考えなければいけないのかも……戦った後に何も残らなければ、意味が無い。ゲームと違って、魔王を倒してそれでめでたしめでたし、ってわけにはいかないだろうし。
「皆、オレはラヴィーの申し出を受けようと思うだけど……どうだろう?」
「アリスさんは、ラヴィーちゃんと一緒にいられるなら、なんでもいいよ!」
アリスはラヴィーのローブをまたまたぺらっとめくってそう言った。
ラヴィーはまたまた気付いていない。
「私は陶冶さんにどこまでも付いてきます。そう、どこまでも……うふふ」
きらりは健気な少女なのか、危ないストーカーなのかどっちともとれるセリフをうつむきながら呟いた。
「わたくしも、異存ありません!」
「主が決めたことだ、ワシはただそれに従うまで」
レリアとアーシャもまた、首を縦に振ってくれた。
「というわけだ。ラヴィー、オレ達異世界人もお前達のランドール奪還作戦に参加するよ」
「本当か!? よっしゃ、じゃあさっそく解放軍のアジトに案内するぜ!」
ラヴィーは立ち上がると、ガッツポーズを取る。
「案内するのはいいけど、聖王の娘の件はどうするんだ?」
「ああ、そっちはガロに任せるよ。聖王さまによく似た若い女が、15年くらい前にこの近くの村で女の赤ん坊を産んだって情報を得たんだけどさ。俺とガロはその村に行く途中だったんだ。でもまあ、姫が見つからなくっても、お前達勇者がいる」
「私達なら、聖王の代りになるということでしょうか?」
きらりがそう質問すると、ラヴィーは少し申し訳なさそうに答えた。
「すまねえ。そういうつもりじゃねーんだ。本当は俺、姫様を探すのは反対だったんだよ。だってよ、何も知らずに普通に育った15、6歳の女の子にいきなり戦場に立って、旗頭になれだなんて辛いことさせたくないしよ。勝利のためには仕方が無いのはわかってんだけどさ。お姫様なんてただ憧れてるうちが華なんだよ。平民からいきなり王族になっちまうんだ、生半可な覚悟で前には出れねーさ」
「それも、そうだな」
確かにラヴィーの気持ちは解る。いきなりあなたはお姫様ですといわれてすぐに納得できるものではないし、何よりすぐに戦争が始まって、それに関わらなければならないんだ。
華々しい生活ではなく、殺伐とした戦いがすぐに待ち受けている状況で……普通に育った女の子がそれを背負えるだろうか?
「こんな危険な状況で姫様をお迎えしたくないんだよ、俺は。ランドールを取り戻して、平和になってからお迎えにあがるのがいいと思ってんだ。これから仕える主になる相手だからな。でも、状況がそうは許してくれなかった……けど、お前達なら……」
「ごめんなさいラヴィーさん。そんなつもりで言ったわけじゃないんです。私なんかの力でよければ、いくらでも貸しますのでそんな悲しそうな顔、しないでください」
「おう! ありがとな、きらり!」
きらりの謝罪の言葉で、ラヴィーは元気満タンの笑顔になる。
「ラヴィーの考えはよくわかった。オレも、聖王の娘……お姫様に不安な思いはさせたくない。オレに代わりが務まるなら、むしろ光栄さ。お前だってそう思うだろ、アリス?」
さっきから黙りこくっているアリスの意見が聞きたくて、ふってみた。
「うん。そうだね……私は……覚悟はできてる」
「ん? 何でお前の覚悟が関係あるんだよ」
「あ、あはは~。そうだね、アリスさんがもしお姫様だったら、そういう覚悟はしてるかな~って思ってさ!」
アリスは取り繕うように両手をぶんぶん振り回してそう言った。
「まあとにかく。話は決まったな。案内してくれ、ラヴィー。オレ達がランドールを救ってみせるさ。そして、平和になった国にお姫様を迎え入れよう」
「おう!」
聖王の娘か。聖王は金髪の美人だって話だったから……やっぱ金髪の美少女なのかな……しかも、お姫様なんだよな……国を救ったごほうびにキスとかされたりして……ああ、どんな子なんだろう、お姫様。
「てめえ、アリス! さっきから何回俺のパンツを風にさらせば気が済むんだこの野郎!!」
「むっふっふっふ~! ラヴィーちゃんのスカートは、めくりがいがあってよろしい!」
目の前でアリスがラヴィーのローブをめくりまくって酔っ払い親父みたいな顔をしていた。
……同じ金髪美少女なのに、アリスはお姫様のイメージとは程遠いな。
そういや、アリスの母親ってどこの国の人なんだろう。イギリス、アメリカ、フランス?
もしかして、アリスが聖王の娘だったりして。
「きらりちゃんは、今日は大人の黒だね!」
「や、やめてください! 陶冶さんにめくられるならまだしも!」
目の前でアリスはきらりのスカートをめくって楽しそうに笑った。
まあ、アリスがお姫様なわけないか。




