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まったく、エルフの幼女は最高だぜ!

 森の中を歩くこと数十分。途中、ゴブリンやスライムといったモンスターが出てきて内心かなりビビったが、アリスがあっさり倒し、無事にエルフの村に着いた。


 森の中にある村ということもあって、自然と住居が一体化している。木造の西洋風家屋が立ち並び、村の真ん中には川が流れていた。水の流れる音と木々が風に揺れる音が、心を癒してくれる。


 こんな場所でバーベキューとかしたら、うまいだろうな。


 村の景色に見惚れていると、目の前を耳の長い中年男性が横切って行った。髪の色は青色で、キレイなキャンプ場にコスプレしたいい年のおっさんがいる構図だが、ここは異世界。あれは地毛で、彼らにとっては普段着なのだ。


 川面に足をちゃぷちゃぷと浸け、水遊びをしている少女もやはり耳が長く、髪は銀色だった。年の頃は10歳前後で、一部に需要がありそうだ。というか、オレもその一部だが。


「すげえ。マジでエルフだ……」


 美男美女。長い耳。中世ヨーロッパ風の衣装。まさしく、ザ・ファンタジー。


「ほんとにファンタジーなんだな……」


 オレの目の前には、RPGの画面を現実に引っ張ってきたような風景が広がっていた。


「アリス様! お戻りになられたのですね!」


 村をぼーっと眺めていると、さっきの水遊びしていた女の子がやってきて、アリスに抱きついた。


「レリア。ただいま! 今日はね、新しい仲間を連れてきたの!」


「あら? 初めまして。わたくし、レリアと申します!」


 正面から向かい合って、女の子は眩しいくらいの笑顔を見せる。水色のワンピースが白磁器のようにキレイな素肌を包んでおり、人形のように美しい。


 これが、エルフ!


「ああ、初めまして。えと、オレ……田中陶冶と言います」


「まあ、トウヤ様。いい響きのお名前ですね、よろしくお願い致します!」


 ぺこりと頭を下げるレリアに、オレはときめいた。可愛い、こんな妹欲しい! 家に持って帰りたい!


「家に持って帰ったらダメだよ陶冶くん。犯罪ですよ、それは」


 アリスがオレをジト目で見ていた。何でオレの考えてることが解るんだよ。


「あの、トウヤ様。わたくし、勇者様たちの身の回りのお世話を申し付けられておりますので、なんなりと命じてくださいね!」


「じゃあパンツ見せて、お嬢ちゃん。今日はどんなのはいてるの? おじさんに見せてごらん。むっふっふ~」


 と、そう言ったのはオレではなくアリスである。


「キャー! エッチ!」


 と、そう言ったのはやはりオレだった。


「ア、アリス様ったら! やめてください」


「さっき、なんなりと命じてくださいね! って言ったじゃなーい。いいでしょ、減るもんじゃないし」


「減ります! 乙女の大事なものが無くなっちゃいます!」


 アリスは酔っ払いオヤジみたいな顔して、レリアのワンピースの裾をぐいぐい引っ張っていた。もうちょっとで見えそうだ。そういや、女の子のスカートめくるのは好きだとか言ってたな、こいつ。


 オレの中で清楚かつ知的で可憐な美少女、田中アリスのイメージが粉々に砕け散った。誰なんだよ、このセクハラオヤジは。


「おいやめろアリス。止めたくは無いが、止めておく! ていうかさっき、『犯罪ですよそれは』とか言ってたのはどの口だ!」


 アリスの腕をつかんでやめさせると、レリアはほっと胸をなでおろし、オレの後に隠れる。


「もう、アリス様ったら……相変らずですね。わたくし、お家でお食事の準備をしておきますので、あとでいらしてください。それでは」


 逃げるように走っていくレリアの後姿を見届けると、オレはアリスの腕を離した。


「まったく……オレの中のキレイなお前を返せ! もう何を信じていいのかわからん……」


「まあまあ、そうカリカリしなさんな! 紋章師のところに行って、君の紋章を刻んでもらおうよ。きっとその間にレリアのご飯もできてるだろうしさ。そこでこの世界について、アリスさんが手取り足取り腰取り色々教えちゃうぞ」


「腰取り……色々。ああ、いやいや! 紋章を刻むってことは……痛いのか? やっぱ」


「んー、ちょっとだけ痛い? すぐ終わるから、気にしなくていいよ。ほらこっちこっち!」


「お、おい!」


 アリスに連れられ、紋章師の家で紋章を刻んでもらうことになった。


「ふーん、普通の家……なんだな。ていっても、さすが中世ヨーロッパな文化って感じだけど」


 看板を掲げているわけでもない普通の民家に入ると、ベッドやら木製のテーブルにイス、タンスが配置されていて、その家の主であろう若いエルフのお姉さんが、ぎょっとした顔付きでこちらを見ていた。


「げ。勇者様……」


 突然の来客に驚いた……というよりも、アリスの顔を見て反応した様子だ。


「お邪魔しまーす!」


 アリスは元気よく飛び出すと、いきなり紋章師の家のタンスを非常になれた手付きで片っ端から開けていった。何やってんだ、こいつは。


「うーん、薬草とか、小さなメダルとかないなー」


「何やってんだ、お前は!」


「何って、RPGのお約束じゃん」


「確かにこの世界はファンタジーだが、ゲームじゃねえ!」


 散らかり放題の部屋を見て、お姉さんは本当に邪魔だから出て行け、と言わんばかりの顔をしていた。いや、そうだろうな。ていうか、いつもこんなことしてるのか、こいつは。


「あの、勇者様。何も用事が無ければお引取り願いたいのですが……できれば二度と来ないでいただき――いえ、なんでもないです」


 お姉さんはおそるおそる手もみしながら、上目遣いにアリスを見て懇願してきた。


 こいつ、村の皆さんに嫌われてるんじゃないか?


「えっと、すみません。オレ、紋章刻んでもらいたいんですけど……」


「あら。あなたも異世界の勇者様? そうですか……我らエルフ一族は先代勇者様との盟約により、異世界の勇者にいかなる協力も惜しみません。お代はけっこうです。さあ、どうぞこちらへ」


 とりあえず部屋を片付けるようアリスに伝えると、オレは紋章師のお姉さんから説明を受ける事になった。


「紋章についてどこまでご存知でしょうか? よろしければ、ご説明いたしますよ?」


「あー陶冶くん、紋章童貞なんで、一から詳しく説明してあげてくださーい!」


 アリスが部屋の片づけをしながら叫んだ。なんだよ、紋章童貞って。


「ふふ。初めての方ですね、わかりました」


 お姉さんの話によると、刻む紋章の種類によって攻撃系や回復系と選べるらしい。


 紋章は体のどこにでも刻めるから、覚えたい魔法があれば追加していくことも可能のようだ。


 とりあえずオレは、攻撃系火炎魔法の紋章を腰に刻んでもらうことにした。腰ならば、あまり目立たないだろう。


「それでは下着一枚になって、ベッドでうつ伏せになってください」


「え? 下着一枚?」


「はい。衣服があっては魔力回路の解放に邪魔です。本来ならば……その、下着も……ですが、私の技量ならば布切れ一枚くらい大丈夫です。けど、自信がおありなら私は構いませんよ? ふふ」


 エルフのお姉さんは妖艶な顔をして笑った。


「いえ、最後の砦だけは死守させてください」


 自信がないわけじゃない。ただ、オレの股間に備えたビッグマグナムを見て、お姉さんが腰を抜かしてしまってはいけないという、心遣いである。オレ、紳士ですもの。変態紳士じゃないよ念の為。


「えっと、それじゃ……その、あっち向いててもらえます?」


 なんだか恥ずかしい気もしたが、これで魔法が使えるようになるなら……オレの気持ちは恥ずかしさより期待感が勝っていたので、すぐに脱いでベッドイン完了する。


「ふふ。大きな背中ですね。少し痛みを感じるかもしれませんが、全て私に任せてください」


「は、はい! 初めてなので、優しくお願いします!」


 何だこのやりとり、エロいな。


「はじめますよ」


 背中にお姉さんの指が触れる。ちりっとした火傷のような痛みが一瞬走ると、それで終りだった。


「はい、刻み終わりましたよ」


「え? もう終り? これでオレも……魔法が使えるの?」


「ええ。これであなたも魔法が使えます」


 さっそく試したくなった。手に入れた力を、魔法ってやつを。


 どんな力なんだろう、ワクワクする。


 ずっと……子供の頃から憧れてた。それが今、現実にオレの物になってるんだ。


「で、お姉さん。どうすれば魔法を使えるんだ?」


 興奮してお姉さんに詰め寄った時――たくさんの悲鳴がオレの耳を貫いた。


『誰か! 誰か助けて!! 山賊よ! 山賊が村に!! この際、勇者様でもいいから助けて!』


『勇者様、お助けください! せめてこんな時くらい役にたって!』


『皆怯むな! この程度、勇者様の無茶振りに比べたらまだマシだ!』


 ……マジで嫌われてるな、アリスのヤツ。村人さんたちの悲鳴がかなり冷ややかだ。


「行くぞアリス! 今こそ勇者の出番だろう? ここで異世界人のイメージ回復だ!」


「あ! 陶冶くん! 待って、まだ」


 オレはアリスの声を背中に飛び出した。


 するとどうだ。これまたRPGとかで出てくるような、やられ役丸出しの山賊が、団体さんで村を襲撃しているではないか。


 山賊の数は6人。内1人が、恐怖で動けなくなったエルフの美少女におおいかぶさろうとしている。


 なんてうらやま――けしからん! 


「まて! オレも仲間に――じゃない。お前らの相手はオレだ!!」


 魔法の力を得た今、オレは勇者だ。どんなヤツが相手だろうと、戦える!


 やってやる、やってやるぞ!


 オレは、この世界で勇者になる。憧れていた存在に……オレはなるんだ。

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