表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

速さ

作者: 白川寝坊

ほかのサイトに投稿したものを、せっかくだからとこちらでも投稿させていただきました。

短いです、5分で読めます。

その日は、一週間続いた長雨が終わり、からっと晴れた日だった。


「暑いな」


 少年が呟く。

 少年はプールサイドに立ち、幼馴染を眺めていた。

 幼馴染は、50mプールをまるで魚のように泳いでいる。

 少年は、幼馴染がプールの端から端まで到達する時間を計っていた。

 幼馴染が水しぶきを立てて壁に触れる。


「タイムは!?」


 快活そうな少女である。

 ショートカットの茶髪は水に濡れて、ツンツンと剣山のようにとがっている。

 意志の強そうな瞳は、自らの結果を知りたくてうずうずしている。

 ゴーグルをつかんだ手も、落ち着きなくそわそわしている。

「26秒56、カナの負け。あとコンマ56、おしかったね」

 勝ち誇った顔の少年の顔を、親の仇のように見つめる少女。

 よほど悔しいのだろう、歯ぎしりの音さえ聞こえてくる。


 その後、幼馴染は少年の指導の元、日没前まで泳ぎ倒した。


「悔しいなー、なんであとちょっとで勝てないんだろう」

 市民プールからの帰り道、幼馴染は毒吐く。

「カナは無駄な力が入りすぎなんだよ。水を押すんじゃなくて、水を流すことを意識すればいいんじゃないかな?」

 夕焼けに照らされた少年の顔は真摯に幼馴染を見つめている。

 幼馴染は目線を合わせることはできなかった。

 さっと目をそらしうつむく幼馴染。

 その頬は、夕焼けに照らされたせいか、妙に赤かった。

 幼馴染は、それを隠すように大きな声で少年に言う。

「分かった、分かったよ! 明日はそうするから、もう今日はこれでおしまい!」

「あ、おいちょっと!」

 逃げる幼馴染と、追いかける少年。

 少女の顔は、満面の笑みに彩られていたが、少年がそれに気が付くことはついぞなかった。


 足の速さでは少女に軍配が上がった。

 少年は頭の中で、明日からの練習メニューをよりハードなものに作り替えていた。

読んでいただきありがとうございます。

批評、コメントが有れば、お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ