第14話 【初心者脱出ガイド】F級卒業!次は何する?E級だけが道じゃない、3つの中級者向け金策ルートを徹底解説!
【初心者脱出ガイド】F級卒業!次は何する?E級だけが道じゃない、3つの中級者向け金策ルートを徹底解説!
出典:週刊Seeker's Journal Web版 / 20XX年X月XX日
筆者:月島 蓮 / ダンジョン経済アナリスト
ダンジョンが出現して20年。雷帝ファンドの設立や、高校での部活動解禁といった追い風を受け、今、空前の新人冒険者ブームが到来している。多くの若者や、人生の再出発を誓った者たちが、夢と希望を胸にF級ダンジョン【ゴブリンの洞窟】の門を叩き、そして無事に「卒業」していく。レベルは5を超え、初期装備も一新。インベントリには、初めて自分の力で稼いだ数十万円が輝いていることだろう。
おめでとう。あなたは、もはやただの一般人ではない。確かな力を持つ、新人探索者だ。
だが、同時に、あなたは今、最初の、そして最も大きな壁の前に立っているはずだ。
「――さて、次は何をすればいいんだ?」
そう、多くの新人冒訪者が、ここで足を止める。はい、困りますよね。順当に行けば、次なる舞台はE級ダンジョンです。しかし、F級とは比較にならないモンスターの強さ、複雑化するダンジョンの構造。軽い気持ちで挑み、パーティが半壊、貴重な資金と時間を失ってしまうケースは後を絶たない。
だが、安心してほしい。この世界は、一本道ではない。
E級ダンジョンという「王道」だけが、君の進むべき道ではないのだ。
今回は、F級を卒業した君たちが、次なるステップへと進むための、三つの、全く異なる「金策・レベル上げルート」を、そのメリットとデメリットと共に、徹底的に解説していこう。
選択肢①:一攫千金の夢を追う「リフト周回」
まず最初に紹介するのは、最もハイリスク・ハイリターンな道、ネファレム・リフトへの挑戦だ。
「え、リフトってB級ダンジョンからドロップする試練の要石が必要なんじゃ…?」と思った君、その通り。だが、ここがポイントだ。君自身がB級ダンジョンをクリアする必要はない。公式マーケットに行けば、その要石は、1個およそ10万円で取引されている。
そう、君がF級ダンジョンで稼いだ虎の子の10万円、あるいは雷帝ファンドの資金の一部を「賭ける」ことで、君はB級、A級のトップランカーたちと同じテーブルに着くことができるのだ。
【メリット】
超高額ドロップの可能性: リフトの最大の魅力は、その報酬の爆発力にある。ボスであるリフト・ガーディアンを倒せば、低確率だが【伝説の宝石】がドロップすることがある。これは、現在マーケットで最低でも800万円以上の値が付く、まさに神話級のアイテムだ。たった一つのドロップで、君の冒険者人生は、一瞬でイージーモードへと変わるだろう。
夢魘の紋章という名の宝くじ: さらに、リフトでは【夢魘の紋章】という特殊なアイテムがドロップすることがある。これは、リフトをさらに高難易度化させる代わりに、特別な報酬を得られるようになるアイテムだ。この紋章は、付与される効果と報酬によって価値が大きく変動する。例えば、「報酬:レベルアップ」といった超大当たりを引けば、それだけで3000万円以上で取引されることもある。まさに、一攫千金の夢が、そこにはある。
【デメリット】
入場料が高い: 1回10万円というコストは、新人にとってはあまりにも重い。もし、ドロップが魔石だけだった場合、良くて数万円の稼ぎにしかならず、確実に赤字となる。5回、10回と挑戦して、何も得られないまま100万円を失う、ということもザラにある。
敵のランダム性: リフトに出現する敵は、完全にランダムだ。運が悪ければ、ランク1のリフトですら、凍結や出血といった、新人には対処困難な特殊能力を持つモンスターが出現することもある。対策なしに挑めば、なすすべもなくHPをゼロにされ、ポータルで逃げ帰る羽目になるだろう。
【総括】
リフト周回は、まさにギャンブルだ。有り金全てを失うリスクを背負ってでも、一発逆転の夢を追いたい。そんな、度胸と資金力に自信のある者だけが、進むべき道と言えるだろう。
<体験談:匿名希望・22歳・元F級探索者>
「俺は、雷帝ファンドの100万を全額要石につぎ込みました。最初の9回は、全部ハズレ。もうダメかと思った最後の10回目、ボスが光ったんです。ドロップしたのは、【絶望せし者の残響】。次の日、俺の口座には、950万円が振り込まれていました。あの瞬間の興奮は、一生忘れられません」
選択肢②:地道な努力が実を結ぶ「カード周回」
次に紹介するのは、リフトとは正反対。ギャンブル性を排し、地道な努力が、確実に実を結ぶ道、宿星のカード集めだ。
「宿星のカード」とは、特定のダンジョン、特定のモンスターから、ごく稀にドロップする、特殊なカードのことだ。このカードは、単体では何の意味もなさない。だが、同じ種類のカードを、指定された枚数集めることで、強力なユニーク装備や、高価なクラフトアイテムと交換することができる。
【メリット】
確実なゴール: カード周回の最大の魅力は、その「確実性」にある。例えば、「【賢者の石】(8枚セット)」というカードを8枚集めれば、君は必ず、高価なクラフトアイテム【賢者の石】を手に入れることができる。そこには、運の要素は介在しない。ただ、積み重ねた時間と努力だけが、君をゴールへと導く。
低リスク: 主な狩場は、F級やE級ダンジョンだ。要石のような、高価な入場料は必要ない。必要なのは、ポータルスクロール代と、君自身の時間だけ。低リスクで、着実に資産を増やすことができる。
知識が力になる: どのカードが、どのダンジョンで、どのモンスターから落ちやすいのか。その情報を、SeekerNetで徹底的に調べ上げ、効率的な周回ルートを構築する。その「知識」こそが、他の探索者との差を生む。戦闘能力だけでなく、情報収集能力もまた、冒険者にとって重要なスキルなのだ。
【デメリット】
時間と根気が必要: カードのドロップ率は、決して高くはない。一つのセットを完成させるためには、同じダンジョンを、何十、何百周と、飽きることなく周回し続ける、鋼の精神力が求められる。
爆発力に欠ける: 一瞬で億万長者になる、というような夢はない。あくまで、時給換算で、着実に稼いでいくスタイルだ。華やかな成功を夢見る者には、少し退屈に感じられるかもしれない。
【総括】
カード周回は、まさに「農耕」だ。毎日、コツコツと畑を耕し、種を蒔き、そして収穫の時を待つ。派手さはないが、その確実性は、何物にも代えがたい魅力を持つ。ギャンブルが嫌いで、地道な努力を続けられる、真面目な君にこそ、オススメしたい道だ。
選択肢③:時間効率の極致「エッセンス周回」
最後に紹介するのは、上記の二つの中間に位置する、エッセンス狙いの高速周回だ。
エッセンスとは、君も一度は遭遇したことがあるだろう、あの青白い水晶に封じられた、特殊なモンスターのことだ。彼らを解放し、倒すことで手に入るクラフトアイテム「エッセンス」は、低級のものでも1万円以上で取引される、貴重な資金源となる。
【メリット】
高い時間効率: エッセンス周回の基本は、「スピード」だ。ダンジョン内の、全ての雑魚モンスターは無視。ただひたすらに、移動速度を上げるフラスコを飲みながら、ダンジョン内を駆け巡り、エッセンスモンスターだけを探し、狩る。運が良ければ、10分で数万円を稼ぎ出すことも可能だ。日給10万円を稼ぐエッセンスハンターと呼ばれるプロも、数多く存在する。
装備依存度が低い: 必要なのは、高い移動速度と、エッセンスモンスターを単独で倒せる、最低限の火力だけ。高価な装備は、必ずしも必要ではない。
【デメリット】
運の要素が強い: エッセンスモンスターとの遭遇は、完全に運だ。何周しても、一体も出会えない日もあれば、一周で三体と遭遇する日もある。収入が、全く安定しない。
戦闘のリスク: エッセンスモンスターは、同ランクの雑魚モンスターとは比較にならないほど強力だ。油断すれば、あっさりと返り討ちに遭うだろう。特に、複数のエッセンスが宿った個体は、E級ダンジョンのボスに匹敵するほどの脅威となる。
【総括】
エッセンス周回は、短距離走だ。常に全力疾走し、その一瞬のチャンスを掴み取る。リフトほどのハイリスクではないが、カード周回ほどの安定感もない。だが、その時間効率の高さは、他の追随を許さない。自分の腕と、運に自信のある、スピーディな君にこそ、オススメしたい。
まとめ:自分だけの「正解」を見つけよう
ここまで、三つの、全く異なる金策・レベル上げルートを紹介してきた。
一攫千金のギャンブルか。
地道な努力の積み重ねか。
それとも、スピード重視の時間効率か。
その、どれが正解というわけではない。
重要なのは、君自身の性格と、そして君が冒険者として、何を成し遂げたいのか、ということだ。
冒険者とは、ただモンスターを倒すだけの存在ではない。自らの置かれた状況を分析し、リスクとリターンを計算し、そして身の丈にあった金策手段を選択して、実行する能力も求められるのだ。
皆さんも、ただ漠然とダンジョンに潜るのではなく、常に時間あたりの効率を考えて周回しましょうね。
この記事が、F級という揺り籠を卒業し、広大な世界へと羽ばたこうとしている、全ての若き冒険者たちの、道標となることを、心から願っている。
健闘を祈る。