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衛兵マルグリッド

 私はマルグリッド。

 この王都で衛兵を務めている。

 今日は、あこがれだった勇者さまの姿を間近で見た。


 ……はっきり言って、すごく可愛かった!


 偉大な勇者さまに対して使う言葉じゃないかもしれないけど、でもそれが第一印象。

 力を失ったって聞いてたけど、それでもメイドさんをかばう姿、かっこよかったな……。

 可愛いうえにかっこいいなんて、完璧よね!


 それに引き換え、私はただの衛兵だし、安月給だし、残業多いし、休みも少ないし……。

 ああ、愚痴が多くなっちゃった……。とはいえ王都は結界に守られてて、モンスターと戦うことはあまりないからまだマシなんだけど。


 勇者さまのお見合い相手は誰でも立候補できるって話だけど、私も参加してみようかな?

 今日取り押さえた、なんだかひどくわがままでガキっぽい女でも参加できるくらいだし、私だって権利はあるよね?


 ……でも、キリカさま、ドロテアさま、ロザリーさまのお三方ですら、勇者さまのお眼鏡にかなわなかったんだっけ……。

 ずっと一緒に旅していて絆もあったはずだし、それぞれ違いはあるけど、皆さんすごい美人でスタイルも良いのに。

 そんな素敵な人たちでも、勇者さまはうんと言わなかった……。


 男みたいに短髪で、とくに美人でもなくて、やせ型の私じゃ釣り合わないかな……。

 うん、きっとそう……。


 それに、もしお見合いの場で断られたら、どんな気持ちで衛兵を続ければいいか分からなくなっちゃう。

 勇者さまが私の顔を見るたびに気まずくなっちゃうかもしれない……。

 気を利かせた誰かが手を回して、私を他の部署に異動させちゃうかも……。


 ……それは嫌だ。

 そんなことになるくらいなら、このままずっと、衛兵として勇者さまをお守りしてあげたい……。


 うん、そうしよう。

 それが、分相応ぶんそうおうというやつだ。

 この気持ちは、心の奥底に封印しよう。

 明日からも、仕事頑張らないとね!

 勇者さま……陰からずっと、お慕いしています……。




 ……こうして一人の女の恋心は、誰にも知られることなく空に消えたのであった。

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