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幕間5

「お見合いの期限は明日までです」


 分かっていたことではあるが、アンナが改めてユーリにそう告げた。


「もう、そんなにお見合いしてたんだ……」


 ユーリは呆然と答える。いや、答えたというよりは独り言のようなものであったが。

 二人はアンナお手製のクッキーをかじり、お茶を飲みながら、これまでのことを振り返っていた。

 アンナが用意してくれるクッキーとお茶はいつも美味しくて、テーブルを囲んでいるだけで嬉しい気分になるのに、今のユーリはそれを楽しむ気分になれなかった。


「どなたか、心に残るような方はいらっしゃらないのですか?」

「うん……」


 気遣わしげに言葉をかけるアンナに対し、沈んだ表情しか返せないユーリ。厄介ごとが起きたという意味でなら、心に残っている女性ばかりなのだが。

 もちろんアンナの質問の意図はそうではないため、ユーリは力なく返事をするしかなかった。別荘を貸し与えてくれた国王に対してはもちろん、立ち合い人であるアンナに対しても申し訳ない気持ちが湧いてくる。


「ここまでしてもらってるのに、まだ誰とも結ばれていない自分を不甲斐ふがいなく感じるよ」

「ユーリさま、あせって答えを出すようなことは、なさらないでくださいね」


 うつむいてしまったユーリに対し、アンナが少し語気を強めて言う。


「ユーリさまが魔王を倒してくれたこと、そしてそのためにすべての力を失ってしまったこと。それらのことに比べれば、この別荘のことや、私の労力など取るに足らないものです。もっといろいろと要求されても良いくらいです」

「さすがにこれ以上何かが欲しいってことはないんだけど……でも、あせって答えを出してはいけないってことは、アンナさんの言う通りだと思う。相手の女性にも失礼だし」

「分かっていただけて嬉しいです」


 ユーリの返事を聞いて、厳しかったアンナの表情が緩む。


「でも、僕が本当に結婚したいと思える相手は見つかるのかな……」

「……もうしばらくしたら、きっとユーリさまもお気づきになると思います。私はそれを待つだけです」


 謎めいたことを言うと、アンナは立ち上がった。


「それでは、明日に備えて今日はもう休みましょう」

「うん……また明日ね、アンナさん」

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