表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/27

サキュバスのメルティ

 お見合い、ですって?

 そんなまどろっこしいことしなくても、既成事実を作っちゃえばいいんでしょ?

 夢の中でアタシと結ばれて、アタシなしじゃ生きていけないようにしてあげるわ。

 ふふっ、魔王はあっさり負けちゃったけど、戦いに勝つ方法は戦闘の腕だけじゃないのよ。


 ……こんばんは、勇者ユーリ。

 ぐっすり寝てるわね。

 かつて遠目に見たことがあったけど、近くで見るとやっぱり可愛い……魔王を倒した勇者だなんて、信じられないわ。


 でもアタシが夢のなかでこの子を屈服させたら、魔王よりアタシのほうが優れてたってことよね。

 大丈夫、アタシは人間を滅ぼすなんて物騒なことは言わないから。安心して、ユーリ。

 人間とサキュバス、二人で新たな理想郷を作りましょ!!


 ……あら? どうしたのかしら? 夢の中に入れないわ。

 な、なにこれ? 蜘蛛の網みたいなのがこの子を守ってる? まさか勇者の力なの!? 魔王との戦いで力は失ったって聞いてたのに!

 やだ、べたべたして気持ち悪い……ああん、どんどん絡まっちゃう! アタシは拘束プレイに興味はないのよ。拘束するほうは好みだけど。ユーリにあんなことやこんなこと……って今は妄想している場合じゃなかったわ。


 はあはあ、外すのにずいぶんと手間取っちゃった。夢の中に入るどころじゃないわね。

 ……って、まずいわ、いつの間にか夜が明けそうじゃない!!

 ああもう、今日は退散するしかないわ!

 ユーリ……可愛い顔して恐ろしい子ね……! でも次に来るときはこうはいかないんだから!




 パタパタ……というコウモリが羽ばたくような音が遠のいていく。

 ようやく何かしらの気配を感じたのか、ユーリが目を覚まして布団の中で大きく伸びをする。ちょうどその時、ドアが小さくノックされた。


「……ん……はい、どうぞ」

「失礼します……お目覚めはいかがでしたか? ユーリさま」


 すでにメイド服を着ているアンナがドアを開き、ベッドのそばまでやってきた。ユーリは上半身を起こしながら彼女を迎える。


「おはよう、アンナさん。今日はぐっすり眠れたよ。アンナさんがこの前プレゼントしてくれたお守りのおかげかな」

「ドリームキャッチャーのことですね? 道具屋の前を通りかかった時、メアリーさんにおすすめされたんです。ユーリさまが時々悪夢を見てうなされることは私も知ってましたから、物は試しにと……。買って正解でしたね」

「効果は覿面てきめんみたいだよ。ありがとう、アンナさん」


 お互いに微笑みあう二人。少ししてアンナが、今の会話と関連することを伝えるために口を開いた。


「そうそう、そのメアリーさんですが、今日の最初のお見合い相手です」

「え、メアリーさんが?」


 ユーリは意外という声をあげた。メアリーが未亡人であることを知っていたからだ。


「……年の差が気になりますか?」

「い、いえ! そういうわけではないです!」


 ユーリが気にしていることとは違ったが、ユーリは慌てて否定した。とはいえ、そのことについてもやっぱり少しは気になっていたのだが。


「それは良かったです。では、私は朝食の準備に取り掛かりますね」

「うん。よろしくね、アンナさん」


 出ていくアンナを見送ると、ユーリはベッドから降りて着替えを始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ