勇者ユーリ
「僕、結婚したいです」
魔王が倒されて世界に平和が戻ったのも束の間、勇者ユーリの発言により世界に新たな火種が生まれた。
魔王を倒したユーリは勇者としての力をすべて失い、さらに力をすべて出し切った反動で一般的な男より肉体能力が低下してしまった。
そのことに対する詫びも含めて彼自身の功績に報いようと、国王がユーリの望みをなんでも叶えようと伝えたのである。
国王の提案に対する勇者ユーリの答えが、冒頭の言葉だった。
まだ恋すらしたことのなかったユーリは、戦いが終わったら結婚生活というものをしてみたいと思ったのである。
それを聞いてどよめいたのが、勇者ユーリの仲間をはじめとした、ユーリのことを知る女たちだった。
なにしろ、大多数の者が勇者ユーリに対して恋ごころを抱いていたのだ。
せっかく魔王を倒したのに、このままでは新たな戦乱が勃発してしまう。
それを危惧した国王は、強権を発動して王国が所有している王都の別荘をユーリに貸し与え、その一室を使ってお見合いをセッティングすることにした。
立会人として、ユーリたち勇者パーティーと王国とをつなぐ一人のメイド、アンナが常に傍らに控えておくことになった。
お見合い初日の今日。
ユーリと行動することが一番多かった、戦士キリカ、魔女ドロテア、神官ロザリーの三人が別荘に招聘された。