第九十三話 森の中の川辺にて3
「ねえコロ。水属性の魔石のこととか川辺で他の属性の魔石が見つかるのは何でかは分かったけど、水属性の魔石を探す前にそのことを話してなかったのは何か理由があるの?」
ふと頭に思い浮かんだ疑問を何気なくコロに尋ねてみた。
川で採れる水属性の魔石の量は私達とコロの認識の違いもあったからともかくとして、川辺には他の属性の魔石が混じっていることとか、さっき水属性の魔石を教えてもらった時なんてコロは見た目での見分け方を知ってたみたいだから、初めに教えてもらっていたら依頼を達成するための効率は良かったんじゃないかなと思ったんだよね。
「そうだよコロ君。初めに教えてもらっていた方が水属性の魔石を探しやすかったと思うんだよね」
「ピギャァ?」
再びジト目でコロに尋ねるヒサメ。
ソイルも首を傾げているところを見れば、二人も私と似たような疑問を持ったみたいだ。
『そのことですが⋯実を申しますと水属性の魔石を探すことでエニカ様とヒサメの魔力操作の仕方の確認と訓練を兼ねることが出来ないかと思い、あえてお伝えをしておりませんでした。
なるべく自然な状態で確認をしたいと考えておりましたので、皆さんに事前にお伝えせずに申し訳ありませんでした⋯』
「魔力操作の仕方?」
「確認と訓練?」
「ピギャァ?」
本当に申し訳なさそうな声色で謝罪するコロに、私とヒサメ、ソイルの三人とも思わず声が出た。
『実は以前よりエニカ様とソイル、ヒサメの魔力操作の状況を正確に把握出来ないかと考えていたのですが⋯昨日に冒険者ギルドの掲示板でこの依頼を見掛けた時より、依頼にかこつけて確認や訓練が行えそうだと思い、本日エニカ様が依頼を選ばれている時にご助言をさせて頂きました』
確かに思い出してみれば、コロのアドバイスがあったからこの依頼を受けたんだったね。
「目的があったことは分かったけれど、どうして水属性の魔石を利用してまで、エニカ姉様やボク達の魔力操作の確認や訓練を行う必要があると思ったんだい?
ソイル君の確認や訓練がどうなるかも気になるし。流石にそれは理由を教えてもらいたいよ」
「ピギャピギャ!」
「それは私も知りたいな。コロ先生」
『勿論お答えいたしますエニカ様!!ヒサメとソイルもちゃんと話しますので焦らずお待ちなさい』
ヒサメとソイルの言葉に後押しとダメ押しのつもりでお願いしたら、コロは即快諾してくれた。
余談だけど私の時とソイルやヒサメ相手の時だと、コロは少し言葉遣いが変わるよね。
そう思いつつ、すぐ傍で聞こえるコロの話に耳を傾けた。
『元々私達が旅を始めた時は、森の中での移動であったためエニカ様の心身をお守りすることと、不安や負担を少しでも減らすことを優先しておりました。
しかし私の力不足ではあることは痛感しておりますが、その間にエニカ様に魔力を使用する機会を設けることや、練習の時間を確保することが非常に困難であったのが実情です。
魔力は今後旅を続けることを選択した上でも、冒険者として登録している上でも、使いこなせるようになられた方がエニカ様の大きな力となり、助けになると思っております。
そのため、生活の安定や身の安全がある程度保障された街中で過ごしている内に、冒険者としての依頼を通して魔力の使い方を習得されたり、練習をして魔力の使用に慣れるようにしてもらいたいと考えているのです。
今回の依頼である水属性の魔石集めは、石に微量の魔力を流して目的の魔石を見つけるといった一連の行動を繰り返すことで、魔力の扱いに慣れるには最適な練習になるかと思われます。
現にエニカ様は二、三個程、石に魔力を流していた時に、無意識のようでしたが流す魔力量を少しずつ調整されておりました。
水属性の魔石を探される時は、エニカ様の場合は石に流す魔力量が一定になるよう意識しながら一連の動作を繰り返し行い、意識せずとも一定の魔力量を石に流せるようになられたら魔力の扱いに慣れてこられている証となると思います』
「コロ⋯色々考えてくれて本当にありがとう」
『エニカ様からのお言葉がコロにとって一番の励みとなります』
今も私の耳に擬態してくれているコロを撫でれば嬉しそうに答えてくれた。
ただ単に依頼を受けるだけでなく、そんなところまて考えてくれてたなんてコロには本当に頭が上がらないよ。
「エニカ姉様の理由は分かったけど、ボクやソイル君のことも教えてほしいよ。コロ君。
何でボクの魔力操作を確認したがっていたのか気になっているんだよね」
「ピギャッ」
少し拗ねたようにヒサメがコロに話しかける。ソイルも見上げて訴えるように一声上げた。
ヒサメはコロから名指しされていたこと、ソイルは逆に名指しされなかったことをそれぞれ気にしている様子が見て取れた。
『そのように焦らずともきちんとご説明致しますよ。
まずヒサメから。貴女、魔力操作下手ですよ』
「コ、コロっ!?」
「大丈夫だよ、エニカ姉様⋯続けてくれないか」
コロのド直球な発現に思わず声が出たけど、ヒサメは私に少し微笑みかけるとすぐにコロに向き合った。
『ヒサメが探し出した水属性の魔石を見てすぐに分かりました。
魔力属性を確認するために魔力を石に流した時でしょうね。一部の石に魔力を込めすぎているのですよ。
エニカ様、お手数ですがヒサメが見つけた水属性の魔石の中から、今からお教えする石を二つ手にとって頂けませんでしょうか?』
「私はいいけど⋯ヒサメ、石を少し箱から出していい?」
「いいよ、エニカ姉様」
ヒサメから許可を貰ってからコロに教えて貰った石を取り出した。
手のひらサイズの丸みをおびた石を二つ、手に取ってみる。
『エニカ様、早速石に一つずつ魔力を流してみられて下さい』
「分かった⋯あれ?」
水属性の魔力を流してみて違和感に気付いた。
普通、水属性の魔石の場合は青い光を放つのだけど、私の手にある石はどちらも青い光の中に銀の光が紛れ込んでいた。
『ご覧なさいヒサメ。貴女の場合、水属性と風属性の二つの魔力属性が備わっていて体質上分離が難しいのですから、特に魔力の質が高まっている水属性は魔力を流す時に量を調整しなければ、風属性まで付与されてしまうのですよ。
今回の依頼は水属性の石と対象が明確に決まっており達成時の正確性が求められる類いの依頼ですので、例え他の属性が混じった希少性の高い石であったとしても紛れ込ませて置く訳にはいかないのです』
「あー⋯本当だね⋯すまない、気付いていなかったよ⋯」
「ピギャァ⋯」
二つの石の状態を見て決まりが悪そうに答えるヒサメと、不思議そうに眺めるソイル。
依頼に関わってくるとはいえ、見た目は綺麗だし希少な石ってことは何もしないのも勿体ないような気がするな⋯
「コロ、珍しい石に変化しているってことなら買い取りしてもらうことは出来ないのかな?」
『私も当初そのように考えていたのですが⋯この二つの石を投げてみて下さい』
「分かっ⋯えっ?」
投げる?この石を?いきなりどうして?
次回更新日は3/28の予定です。




