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第八十七話 公衆浴場にて

 しばらく従魔専用スペースで未練ありまくりなソイル&ヒサメと、霊属性の魔法を使って自慢しまくっている様子なコロと、周囲の目が気になり始めて早くお風呂に行きたくなった私との静かな攻防が繰り広げられていたけど、雨に濡れた服が冷たくなってきて身震いした途端、即みんなからお風呂で温まるよう勧められて一応無事に浴場へ向かうことが出来た。

(『全く⋯ソイルとヒサメには困ったものです。

 エニカ様の身体が冷えてしまうまで駄々を捏ねるとは⋯エニカ様が風邪を引いてしまわれたら大変なんてものでは済まないというのにですね⋯』)

 コロさん、二人のことを仕方のない子達のように言ってるけど、自分がお風呂に入れるからって二人にそれぞれ自慢げに話しちゃってたよね?

 最終的にヒサメはコロへの恨み言を呟いてたし、ソイルは猫耳化しているコロを見たことのない目つきでガン見していたよ?

 今は人前だから一人言のように呟くコロに話しかけることは出来ないけど、お風呂の件は楽しみ(どんな意味かは深く考えないようにする)にしていた二人を煽り過ぎないようにと注意することを内心ひっそりと決意しながら、浴場を目指していた。

 公衆浴場の内装はちょっとしたスパのようになっていて、思ったよりも清潔でお洒落な感じだ。

(『エターナレンでは朝風呂の習慣の方が浸透しておりますので、今の時間帯は利用者が少ないのは幸いでしたね』)

 コロの言う通り、利用しているお客さんは(まば)らにいて、それぞれ寛いだり、周りの人達と談笑して過ごしていた。

 また公衆浴場の中を歩いていて、ちょっと驚いたことは設備の充実っぷりだ。

 タオルとなる布の販売は勿論、石鹸やちょっとした洋服を販売(ただしお値段は全部それなりにする)していたけど、一番驚いたのは施設内で洗濯が出来ることだ。

 洗濯用スペースが確保されていて、洗濯用の魔導具を設置してあったり、染み抜きや仕立て用の職員さんを見掛けた時には、元の世界より公衆浴場の設備が充実しているように思えた。

(『公衆浴場は各街には必ず設置しておりまして、社交の場の一つとなっております。

 また冒険者や行商人、旅行者といった町民以外の外部からの利用者も少なくないため、布や石鹸、服などの販売を行ったり、大量の湯や水を使用することから公共の洗濯場と併設されている場合があります。

 ファレスタでは周囲にある森や野山で珍しい魔物や薬草が見つかりやすいので、冒険者や買い付けに来た行商人などの利用も多いでしょうから、公衆浴場と洗濯場が併設している様式となっているのでしょう』)

 コロの説明を聞くに、つまりは洗濯場付きの公共スパ、もしくは銭湯みたいな役割を持つ場所であることが改めて理解できた。

 場所や時代が変われば、生活様式や文化って変わるんだなって実感するよ。異世界だけに限った話じゃないんだろうけど。

(『ささっ、エニカ様。お身体を冷やされておりますから、早々に浴場へ入りましょう!!』)

 妙に力の入ったコロの言葉に、ちょっと引きつつ右耳に触れて答えた。


――――――


 公衆浴場を利用する時のシステムについて、受付の職員さんから聞いた説明では、


・浴場に入る前に基本受付で事前に料金を支払う。

・石鹸や布、桶などの道具は浴場内に持参可能。紛失や盗難があれば自己責任。なお浴場内に備え付けの桶や石鹸はなし。

・受付は脱衣所とも繋がっていて、着替えや荷物は脱衣所で脱いだら預けることが出来る。

・着ている服の洗濯などは事前に受付での申告と必要なサービス分の料金を支払えば、入浴中に洗濯や乾燥、染み抜きや仕立てが可能。洗濯分やその料金は脱衣所側の受付で渡すことが出来る。

 洗濯の料金は基本は洗濯物を入れる桶の大きさで決まってきて、例えば下着数枚程度なら小さい桶、そこから量や衣服の大きさに応じて桶の大きさが変わる。

 ただし、巨人種や小人種などの人種に合わせて桶の大きさや料金設定はしているとのこと。

・身体を拭く用の布の貸し出し可能。また受付でも布は販売しており、それ以外にも石鹸や桶などの購入可能。


 などの話を受けた。

 職員さんからの説明を聞いて、今回はお風呂だけじゃなく、今まで後回しにせざるおえなかった洗濯が出来るチャンスだから、少しお高くなっても洗濯物を乾燥までお願いすること、洗濯にお金を回す分、それ以外を切り詰めようと思い、貸し出し用の布だけ頼むことにした。

 その旨を職員さんに伝え(貸し出し用の布を借りたいと言った時、コロが残念がってたのが不思議だった)、お金を浴場の使用料金銅貨三枚、貸し出し用の布代で銅貨五枚(使用料よりレンタルする布代の方が高かった⋯)の合計銅貨八枚を渡した。

 洗濯物に関しては、脱衣所側の受付で荷物を預ける時に量の確認や料金の支払いが出来るからと後にしてもらえた。

 お金を支払い、女湯にあたる浴場へと向かう。

 直接脱衣所や浴場が見えないようにするために、あえて直角にされた通路を通ればすぐに脱衣所に辿り着いた。

 そこまでは特に何事もなかったけれど、服を脱ぎ始めた時からだ。

(気のせい⋯じゃないよね。何か人の視線が気になるようや⋯)

 今まで外に出る時は街門で確認を求められた時以外、外していなかったマントのフードを脱いだ辺りから、人の視線や話し声が気になるようになった。


「あの子、近人体なのねぇ⋯あんなに人間種に近い子初めて見たわ」

「本当ね。耳以外はほとんど人間種じゃない。もしかしたら神使や迷い人の血を濃く引いてるのかも⋯」

「最近中央都の辺りで流行っている人間種薬でも使っているのかしら?」

「あれ、かなり高額って聞いたから良いとこの娘さんがお忍びで来てるとか?」

「それはそうとあの柔らかそうで可愛いお尻⋯心ゆくまで揉みたいわぁ」


 私の今の姿ってこの辺りじゃ目立ちやすいんだ⋯!

 しかも、今聞こえた会話の中にめちゃくちゃ身の危険を感じる発言も聞こえたんだけど!!

 女風呂だよねここ!?同性から狙われてるってこと!!?

 ど、どうしよう⋯お風呂と洗濯を諦めてもうこの施設自体から出た方がいいかな⋯でも下手すると不自然に見えるよね⋯あえてこのまま素知らぬフリして洗濯は諦めて早くお風呂だけでも済まそうか⋯

 内心、冷や汗をダラダラかきながら考えを巡らせていた時だった。

(『エニカ様。ご安心下さい。周囲が何と言おうとエニカ様は堂々としていれば問題ありません』)

 落ち着き払ったコロの声が聞こえてきた。

 穏やかな声色で話しかけるコロの言葉を聞いて、少しだけ心を落ち着かせることが出来た。

 そうだ。今の私には形を変えてまで側にいてくれる子がいる。一人だけで決めたり、必要以上に不安がらなくていいんだ。

 それに今までだって、コロの説明やフォローに助けられた場面は既に数え切れないぐらいある。

 ここはコロの言う通りにして堂々とすれば⋯

(『エニカ様のお身体を目にして話題に出した者全ての眉間をブチ抜きますので、エニカ様は何も心配することはございませんよ。

 勿論、変態的な発言をした者は見つけ次第、両手ごと切り離すつもりです』)

 あ、これは内心はらわた煮えくり返っているヤツだ。事件が起こる前に帰ろう。

 止めてね、の強い気持ちを込めて左耳に触れながら濡れた服を着直そうとした時だ。


「あら?エニカさんじゃないですか?」


 聞き覚えのある声が背後から聞こえた。

次回更新日は3/15の予定です。

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