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第七十四話 冒険者ギルド到着

(『あの狼獣人、出会ったばかりだと言うのにエニカ様に気がある模様です。危険ですので極力近付かれませんようお気をつけ下さい!』)

「エニカ姉様に色目を使う狼獣人もだけど、狼獣人の後押しをしようとした挙げ句、気安くエニカ姉様の頭を撫で回した猪獣人も許せない⋯エニカ姉様はボクのエニカ姉様なのに⋯掻っ攫おうとするなら氷漬けじゃ済まさないよ⋯」

「ピギャァ!」

「みんな落ち着いて。初めて街に来た人だと思って声を掛けただけじゃない?別に私に気があるとかそんなんじゃ全く無いと思うよ」

 門番からの検査を無事に切り抜けて私達は今、木製の案内板を見ながら冒険者ギルドへ向かっていた。

 門を潜れば、すぐに街の広場と繋がっていた。

 主要施設の名前とエンブレムが記された案内板は、その広場の真ん中に立っていてすぐに見つけることが出来た。

 小声でみんなを宥めながら改めて周囲を見渡す。

 中世ヨーロッパを思わせる街並みに、広場だけでなく通路にも幾つか屋台が開かれていて、そこそこの賑わいを見せていた。

 見掛ける人々は勿論、ほとんど獣人や鳥人、トカゲや蛇っぽい人、小人や巨人が大半を占めている。

 時々身体から植物を生やしている人や昆虫の擬人化みたいな人達もいてちょっと驚くことはあったけど、街道でちょこちょこ見かけていたお陰か段々と見慣れてきた。

 だけど今はフードを被っているとはいえ、こんなにもバレないものだとは思わなかったよ。

 さっきの狼獣人の門番とのやり取りも事前にコロ達と打ち合わせたものだったけれど⋯育ての親が熱心な精霊信仰者って伝えるだけで、ああもあっさり納得されたのはこの見た目で人間とバレなかったことの次ぐらいに衝撃的だった。

 精霊信仰者とは、コロからの説明ではエターナレンの昼夜と四季を司る六人の精霊がいて、その精霊達を文字通り信仰する人達のことを指すと聞いている。

 以前少しだけ聞いたことのある十三人の神様への信仰と同じぐらい、この世界では人気がある信仰らしく、大抵十三人の神様達と一緒に信仰することも多いけれど、本当に信仰に厚い人達の中には「精霊様の定められた時間に寝起きし、精霊様から与えられた自然と四季の恵みと共に生きる」という信条を元に、見ようによっては修行僧のようなライフスタイルを送る人がいると言う。

 そういう人達の中には、人里から離れて自然の中で暮らすことを選択する人も少なくないらしいから、森から来たと言っても家族が精霊信仰者と言えば納得されると思います、と言ってたコロの推測は合ってたよ。

 ちなみに、精霊信仰はエターナレンの生活に根付いていて、年に四回は精霊祭と呼ばれるエターナレン全土に渡って盛大に行われるお祭りがあることもコロから聞いた。

 まだお祭りの時期ではないそうだけど、世界全体レベルで行われるお祭りなんて、地球だったらオリンピックが当てはまりそうかな?って思うぐらいだから、そんな凄い規模のお祭りなら一度はみんなと見てみたいと思ってる。

 異世界に転移しちゃった以上は、興味のあることや面白そうなことは出来そうならみんなとしたいって最近は開き直るようになっちゃったしね。

 そのためにも、絶対人間だとバレないように細心の注意を払いながら、生活を整えるようにしないとだね。

 その第一歩として、まずは冒険者ギルドで冒険者登録をして身分証明になるものをゲットするところからだ。


――――――


 街の中を暫く歩いて、とある屋敷の前に辿り着いた。

 そこには冒険者ギルドを表す剣のエンブレムを刺繍した旗が掲げられていた。

(『エニカ様。こちらが冒険者ギルドとなります。中に入られましたら、すぐに受付があると思いますので真っ直ぐに向かわれて下さい』)

 返答の代わりに右耳に触れる。

「ソイル、ヒサメ。ここが冒険者ギルドだって。入ろうか」

 門で検査を受ける前と同様、二人が頷く姿を確認してから屋敷へと足を踏み入れた。

 中は品の良い内装になっていて、中央に三つほど受付カウンターが並び、カウンターの横に設置された掲示板には依頼書のような書類(羊皮紙かな?)が無数に張り付けられている。

 受付に向かう間に幾つか椅子や机が置いてあるけど、そこには様々な武器や防具を身に着けた戦士のような人達が人種問わず座って情報交換したり、武器の手入れをしたり、座って居眠りしたりとそれぞれ好きなように過ごしているようだった。

 ちょうどいい時間帯に来たのか、どの受付カウンターも並んでいる人が少なく、一番人が少ないところ並ぶことにしたけど、思ったよりすぐに順番は来た。

 並んだ先の受付カウンターの職員さんは、パッと見は点々と髪に飾られた小さな紫の花がよく似合うとても綺麗な人間の女性だと思ったけれど、髪をよく見れば無数の細かい葉っぱで出来ていた。

 植物人(って言い方が合ってるかは分からないけど)の職員さんがニコッと笑いかけてくれた。

「ようこそ冒険者ギルドへ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「あの、冒険者として登録をしたいのですが出来ますか?」

「はい、可能です。初めてご登録をされる方には登録前に冒険者と冒険者ギルドについてご説明をさせて頂くのですが、ご説明は必要でしょうか?」

「よろしくお願いします」

「かしこまりました」

 冒険者ギルドの職員さんから詳しい話を聞くことになった。

 あんまり難しい説明じゃなければいいな⋯

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